稲葉 篤紀(いなば あつのり) 1972年8月3日生まれ・左投げ左打ち

 愛知・中京高から法政大を経て94年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。大学時代は4年春に打率.319でベストナインに選ばれている。入団1年目は二軍スタートだったが、43試合で打率.363と打ちまくり、6月下旬に一軍昇格するとデビュー戦で初打席本塁打と華々しいスタートを切った。これ以後、ライトの定位置を確保して打席数は少ないながらも3割台の打率を残した。翌96年は規定打席に到達して打率.310と順調なプロ生活に見えた。

 しかし97年に打率.267と低迷すると、98年からの3年間は左ヒジ痛など故障もあり、いずれも規定打席には大きく不足。00年まで4年間、3割台からは遠ざかった。見事な復活を遂げたのは01年。164安打、25本塁打、90打点、打率.311など各部門で自己最高の成績を残し、チームの日本一に貢献。初のベストナインに選ばれた。しかし好調は続かず、翌年から3シーズンは打率2割7分前後で推移。04年オフには大リーグ移籍を目指しFA宣言するが、交渉は不調に終わり国内球団の日本ハムファイターズに移籍した。

 結果的にはこの移籍が復調・飛躍のきっかけとなった。移籍1年目の05年は調整遅れもあって打率.271に終わったが、06年は打率.307で5年ぶりに3割返り咲き。本塁打も自己最多の26本をマークした。日本シリーズでも打率.353と活躍して日本一に貢献、シリーズMVPに選ばれた。
 07年はさらに数字を伸ばしてリーグ最多の176安打を放ち、打率.334で首位打者に輝いた。ベストナイン、ゴールデングラブも2年連続のダブル受賞と、球界を代表する外野手となった。

 08年も3年連続3割に4度目の20本塁打と安定した成績。北京五輪では全試合に5番で先発出場し、カナダ戦では決勝本塁打を放った。シーズンでも1500試合・1500安打・200本塁打と区切りの記録を次々と達成した。09年は開幕前の第2回WBCに選ばれ、8試合で22打数7安打の打率.318と活躍し、チームの連覇に貢献。シーズンでも4年連続3割に3年連続80打点の活躍で2年ぶりとなるリーグ優勝の原動力となった。

 10年は連続3割はストップしたが、152安打を放ち打率.287、16本塁打、79打点はまずまずの成績。2000本まであと158本で迎えた11年は4月に打率.356と好スタートを切ったが、5・6月の打率が.196と前半から不振に陥った。7月に打率.377と巻き返して4度目の月間MVPに輝くが、その後は尻すぼみと好不調の差が激しいシーズンとなった。最終的に12本塁打、打率.262は共に移籍後ワースト。2000本安打まで34本を2012年に持ち越す事となった。
 そして迎えた12年、開幕から24試合目までに33安打を放ち打率.384と絶好調で2000本に王手を掛けた。4月28日の楽天戦で第1打席にヒットを放ち、2000本安打を達成。打率.374・4本塁打・24打点の好成績で3・4月の月間MVPも受賞した。5月以降は月間3割をマークする月がなく、最終的に打率.290と3割は逃したが、6度目の打撃ベストテン入りを果たした。通算2000本安打に加え、2000試合・400二塁打・250本塁打・1000打点と記録ラッシュの1年だった。また、一塁手としてゴールデングラブに輝いた。

 13年は開幕から不振が続き、4月23日まで50打数4安打の打率.080で自ら再調整を申し出て登録抹消となった。5月に一軍復帰すると7月までの3ケ月間では145打数40安打の打率.276と復調を見せた。しかし8月以降は66打数9安打の.136と再び下降し、年間トータルでは.203と19年目でワーストの成績に終わった。
 2014年は開幕一軍スタートだったが2試合に出ただけで万全でない右膝の手術に踏み切り、およそ3カ月の戦列離脱。7月12日に開幕2戦目以来の出場、そして27日にシーズン初安打を記録。結局44試合で18安打の打率.234に終わり、この年で現役を退いた。最後の実戦となったクライマックスシリーズで6打数3安打2打点と勝負強さを発揮してファンを沸かせた。

 95年6月21日の広島戦で初打席本塁打。01年5月31日の巨人戦で満塁サヨナラ本塁打。03年7月1日の横浜戦でサイクルヒット達成。12年4月28日の楽天戦でヒメネス投手からライト前ヒットを放ち、史上39人目の通算2000本安打達成。

 首位打者1回(07)、最多安打1回(07)。ベストナイン5度(01、06〜09)、ゴールデングラブ5度(06〜09、12)受賞。月間MVP5回(06年7月、07年9月、09年5月、11年7月、12年4月)。オールスター出場8度(97、01、07〜12)。WBC出場2度(09、13)、五輪出場1度(08)。日本シリーズで97年に優秀選手賞、06年にMVP受賞。

年度別打撃成績(赤字はその年のリーグ最多記録)
    試合 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 塁打 打点 盗塁 犠打 犠飛 四死球 三振 打率(順位)
95 ヤクルト 67 215 22 66 10 0 8 100 40 3 2 1 30 33 .307
96 ヤクルト 125 436 63 135 26 3 11 200 53 9 7 7 46 66 .310(11位)
97 ヤクルト 130 439 71 117 24 4 21 212 65 9 10 1 44 67 .267(25位)
98 ヤクルト 88 258 29 72 17 2 5 108 23 4 2 1 19 42 .279
99 ヤクルト 68 132 15 35 11 1 2 54 22 3 1 1 8 26 .265
00 ヤクルト 87 274 36 77 13 0 11 123 30 0 4 2 10 42 .281
01 ヤクルト 138 527 94 164 32 5 25 281 90 5 13 2 59 89 .311(7位)
02 ヤクルト 116 448 59 119 19 3 10 174 39 3 8 4 28 77 .266(21位)
03 ヤクルト 69 260 46 71 8 3 11 118 30 4 3 1 25 48 .273
04 ヤクルト 135 437 61 116 20 3 18 196 45 6 5 2 29 85 .265(36位)
05 日本ハム 127 414 55 112 28 4 15 193 54 3 1 1 25 82 .271(22位)
06 日本ハム 128 473 66 145 20 2 26 247 75 5 6 2 37 74 .307(7位)
07 日本ハム 137 527 61 176 39 0 17 266 87 3 0 4 48 69 .334(1位)
08 日本ハム 127 448 71 135 25 5 20 230 82 2 0 5 60 85 .301(8位)
09 日本ハム 135 500 78 150 37 4 17 246 85 5 2 6 79 96 .300(10位)
10 日本ハム 137 530 68 152 36 4 16 244 79 3 1 5 55 86 .287(19位)
11 日本ハム 137 473 49 124 22 3 12 188 54 4 7 3 35 71 .262(20位)
12 日本ハム 127 449 46 130 23 3 10 189 61 0 8 3 37 70 .290(7位)
13 日本ハム 91 261 25 53 16 0 3 78 24 0 1 1 22 48 .203
14 日本ハム 44 77 6 18 3 0 3 30 12 0 0 0 12 13 .234
                                 
20年 2213 7578 1021 2167 429 49 261 3477 1050 74 81 52 708 1269 .286