マリオンの部屋にいる4人
リンド「マリオンのやつ、うまいこと女と遊んだんだ」
ジャック「おい、よせよリンド」
マリオン「いいんだ、ジャック。サラの話をしてくれるだけで、ぼくには楽しいもの」

リンド「クロード、おまえはどうなんだ?まだマリオンをリーダーとして認めるか?」
クロード「ぼく・・・。そんな他にパトロンのいる女なんて・・・」
マリオン「クロード、ぼくはサラと遊んだとは露ほども思っていない。恋をして自分がよくなったと感じている
それでもクロード、これは罪だろうか?
クロード「応えるよ!リンド!ぼくは彼を認めない!認めない!認めるもんか!」

町の娘達「まっ昼間っからあんな女と」「あの人伯爵さまに囲われているんだって」

ジャック「堂々たるもんだな」
リンド「フン、今にあの女のパトロンがきてヒドイ目にあうのさ・・・多分、明日」
ジャック「明日?」
リンド「カレンダーにマークがあった」

クロードもジャックもリンドも、そしてレダニアもマリオンに気づきながら
その横を通り過ぎて行く
サラ「マリオン・・・こうなることが私には判っていながら・・・」



クリューニー伯爵を待ち伏せするリンドとついてきたクロード
クロード「ぼく、もういやだよ・・・みじめだよ。こんなことまでしてマリオンを・・・」
逃げるようにその場を去るクロード
クロード「ちっ!臆病者」

列車から降りて来るクリューニー伯爵(声・柴田 秀勝)
クロード「実はぼくの友人が危険な道に・・・その相手というのがあなたの・・・」

馬車でサラの別荘へ向かう伯爵とクロード
伯爵「君の好意に報いるためにもぜひサラに会って欲しいのだよ」


サラの別荘
伯爵「さて急いで話を進めよう
サラきみはこの子の友人になにかしたかね?」

サラ「裸で・・・雨の中にいたので肺炎をおこすところでしたわ
興奮していたので落ち着かせて・・・」
クロード「それだけのもんかっ!マリオンを誘惑したくせにっ!」
伯爵「なるほど君の愛情を分けてあげたのかい、サラ」
サラ「ええ、彼には必要でした」
伯爵「それはよかった、きみらしいよ」
サラ「ありがとう、伯爵」

伯爵「ご足労をかけたね、それじゃきみの友人を大切に」

二人の会話に衝撃を受けるクロード

サラ「マリオン、あれきりの別れというのは寂しいわね・・・ジュテーム、マリオン」


乗馬服で馬小屋へ向かうマリオン
マリオン(ねえサラ、ぼくが馬に乗ってあらわれたら
なんと言うだろうね、きみは)
サラ(まるでナイトみたいよ・・・マリオン)

馬小屋
そこには薬の瓶がころがり、片手にはナイフを持っているクロードが待ち伏せしていた。
クロード「さわがないでマリオン、ぼく死にたい」

「生きてても汚いばかりなのに・・・、ぼくは悪魔にとりつかれたんだ
・・・ぼく・・・ぼく、レダニアに恋するふりもしてみたよ・・・
だけど!だけど!ぼくの好きなのは」

マリオンにキスするクロード

「うそはつけない、だけど自分に従うのはもっと難しい!
ぼくには逃げ道はない!袋小路なんだ
その先は真っ暗なんだ!
こわいよマリオンぼくを助けて!
こんなのいやだ!自分で自分がいやなんだぁ!」

マリオンの服を破くクロード
マリオンの胸にそっと頬をよせる

マリオン「よせっ!クロードやめるんだっ!」
手にした鞭でクロードを叩いてしまうマリオン

悲痛な叫び声を上げながら、馬小屋から走り去るクロード



クロードは入水自殺をしてしまった
泣き叫ぶマリオン
「ばかな死んでいいってことがあるもんか
きみは悪いことなどしてやしないのに
きみはただ好きになっただけなのに
なぜ・・・
なぜ、ぼくはクロードを抱きしめてやらなかったんだ
クロードはどうしていいかわからなかっただけなのに
サラに抱かれる前のぼくと同じだ
サラはぼくを抱きとめた
それなのにぼくはクロードを死なせた」

「サラ・・・もう一度ボクを抱きしめて!」
サラの別荘へ向かうマリオン

レダニア「待って!マリオン」
リンド「あいつはもうダメだ」
ここぞとばかりにレダニアに近づくリンドを殴るジャック
ジャック「レダニア、あなたに結婚を申し込みます
クロードからお前の企みを聞いたぞ
お前のような卑怯者にレダニアを譲るわけにはいかない」


サラの別荘
「サラ、早く開けて!ぼくを抱いて」
「どなたですかな」
そこに現れたのはクリューニー伯爵

この人か・・・サラの・・・わかっていた
サラがいつかいってしまうことは
・・・夏の間だけの恋・・・


そこへ走り来るレダニア
「私・・・何もかも忘れてここにきました。
マリオンを返してもらうために
彼でなくては止められないからです
ジャックとリンドの決闘を!」


ジャック「キザでうそつきで張子の虎!
勉強でもスポーツでも一番になりたかった、ただ箔をつけるために
きさまにとってはレダニアもただのアクセサリーなんだ!」

ジャックとリンドの決闘の場所へ走るマリオン
いけない!ジャック!
やめろ!リンド!

サラ「偉かったわレダニア・・・
ここへ来るのはつらかったでしょうに・・・
マリオンは熱にうなされながらあなたの名を呼んだわ・・・
私は伯爵と一緒に明日、ここを離れます」

もどりたい
夏のはじめのあの頃へ・・・
ぼくらはあのころまだ少年だった
もどりたい
夏の日差しが水たまりを鏡のように光らせていたあのころに
花が笑ったあのころへ
セミが歌ったあのころへ
わき目もふらずにはしればよかった
あのころへ・・・
だれもかれもが少年だった
夏のはじめのあのころへ

冒頭の決闘の場面に話しがつながる

19・・・20・・・!
二人の間に入り撃たれるマリオン


そして秋
リンドは遠くパリの学校へ行っていた
重症を負ったマリオンは母親のもとへもどったきり
秋が過ぎても帰ってはきませんでした
ただひとり学校へ帰ってきたジャックは
レダニアの返事を待ちつづけているそうです。

檳榔樹のかげ
少年たちの夏が眠る

道なきこの地 地平なきこの空の下に
消える理由がぼくには数々ある
昨日は知らずにいた

今日よりは忘れることはあるまい
美しい理由
 視線の美しい鍵
鍵のそのまた鍵なる鍵
この風景の中で自然はボクのもの

恍惚 安東 次男訳

FIN

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