ストーリー&セル画ギャラリー1「スコットランド編」

1話「あの娘は緑の風の中」
イギリスはスコットランドのある地方に、森と緑に囲まれた小さな美しい町がある。
その町はずれに、サンディベル=クリスティーというとびっきりお茶目な娘が住んでいた。
別荘に入り込んで管理人を怒らせたり、遊び友達の親に怒鳴り込まれたりするのはしょっ中…でもみんな、そんなサンディベルが大好き。
ある日、丘の上から羊の群れを眺めていたサンディベルは、子羊の一頭が道路の方に迷いだして行くのを見た。
しかもそこにちょうど車が差しかかる!
間一髪で羊を助けるサンディベルだが、その車に乗っていた少女は、「たかが子羊一頭のために…命を捨てるおつもり?」と言い捨てて一言もわびずに去って行った。

ぬれてしまった洋服を木の枝にほして乾かしているサンディベル。そこに銃声が!撃ったのはさっきの少女だった。
”キティ=シアラー”彼女こそサンディベルのライバルとなるシアラー家の娘だった。
傷ついた鳥を渡そうとしないサンディベルに、キティは猟犬をけしかけるが、オリバーに逆襲され、獲物を取りそこなってしまう。
怒ったキティは学校に怒鳴り込むが、「私の生徒ならだれもがみんな同じようにするでしょう」と言うサンディベルの父、レスリー=クリスティーの言葉にうまくかわされてしまうのだった。
一方、毎回サンディベルに痛い目に合わされているチャールズ・ジョージ・デービッドの悪童3人組は、いつもの仕返しをしようと子供たちのボールを取り上げ、空いている別荘のお城にけり込んでしまう。
ボールを取りにお城に入ったサンディベルは、そこで美しい伯爵夫人の肖像画に見とれた。
「私のママも…こんなにきれいな人だったのかしら…」小さい頃死んだという母の面影をサンディベルは知らなかったのだ。
そこへ入ってくるキティと管理人トマス。サンディベルは絵を盗みに入ったと誤解されてしまう。
「パパ…私は何も悪いことしてないの…わかってくれるわね!」
「馬鹿者!」クリスティーに叩かれたサンディベルは、父も自分を疑っているのだと思い家をとび出してしまう。

だが、それは違っていた。クリスティーはサンディベルがだまって別荘のお城に入ったのが悲しかったのだ。
「どんな時でも…あいさつと礼儀だけは欠かしてはいけない。お城に入るなら、なぜ管理人に話してから入らなかったのだ…盗みに入ったと思われても仕方がないじゃないか。私は…私は…それが…残念だ!」
「ごめんなさい!パパ」クリスティーの真意を理解したサンディベルは、クリスティーに抱きついてあやまるのだった。
翌日、サンディベルはあのお城に人が来たことを知り、道を急いでいた。きのうの事を謝ろうと思ったのだ。
そこで彼女が会ったのは肖像画のモデル、伯爵夫人その人だった…。

2話「ママの花園」
「あの…私、町はずれに住むサンディベル=クリスティーです…ごめんなさい!」素直なサンディベルを伯爵夫人は気に入ってくれる。
夫人に不思議な親近感を覚えるサンディベル…初めて会った人ではないみたいに何でも言える。

その時、庭でオリバーの吠える声が!庭では見知らぬ男が草むしりをしている。聞けば、シアラー家に頼まれてやって来たのだと言う。もちろん要らぬ親切である。
帰るのを渋る庭師に、サンディベルは自分達で草むしりをやるわ!と子供達を集めに駆け出して行く。集めてきた子供たちと草むしりに励むサンディベルは、庭の中で白水仙がたくさん咲いている所を見つける。
「おまえのママは水仙の生まれ替わりのような人だったんだよ…」繰り返し聞かされていた父の言葉…サンディベルはそこに母の面影を見た様な気がした。
そこへやって来るシアラー夫人とキティ。表向きは庭師を断った理由を聞くためといっているが、本音は伯爵夫人の息子マークとキティの婚約の催促だった。マーク本人の意見を尊重して…と返答を避ける夫人に、キティとシアラー夫人は苛立つのだった。
手掛けている事業が危ないウェリントン家、そこへ手を伸ばして来たのがシアラー家だった。婚約によって貴族と縁続きになる…シアラー家の狙いは「名誉」。「貧乏貴族のくせに…気位ばかり高くて」そう心の中で言い捨てて帰ってゆく2人。
お城からの帰り際に、サンディベルは伯爵夫人から水仙を一株分けてもらう。だが彼女が持って帰ったその水仙を見たクリスティーは何故か不機嫌になる。「お城にはもう近付かん方がいい…あそこに住む人達は身分が違う」きつく言われるサンディベル。クリスティーの思いは複雑だった。「サンディベルは利口な子だから口には出さない…だが心の中ではやはり母が恋しい…だがしかし、よりによって私の手の届かぬ伯爵夫人に母の面影を求めるなんて…」
水仙を返しに行こう…お城への道を戻るサンディベル。しかし彼女はやはり諦めきれなかった…そして、誰にも知られぬところで水仙を育てていこうと決心する。
美しい小川のほとりにサンディベルは白水仙を植え、そこをこう名付けたのだった…「ママの花園」と。

3話「白水仙の待つ丘」
1日1回はママの花園に行くことを白水仙に約束したサンディベル。白水仙だけでは寂しいので、もっと花を集めなくちゃ…とあちこち走り回るのだった。そのかいもあって箱車にいっぱいの花が集まった。ところがそれを運ぶ途中、子供達に見つかってしまう。「困ったわ…早く持ってかないと花がしおれちゃう…」花園の事は秘密なので子供達に見せる訳にはゆかないのだ。
ちょうどその時、坂道で石につまづいた箱車は暴走を始め、子供達をあとに残して走り去ってしまう。サンディベルを乗せたまま川につっ込む箱車。おかげでびしょぬれになったが子供達をまく事には成功!次に石を運んで花園は完成した。「明日また来るわね…」というサンディベルに、白水仙はかすかに首を振って答えたような気がした。
翌日は日曜日!お昼を持って行けば1日中花園にいられると喜ぶ彼女だが、思わぬ障害が出来てしまう。マギーの母が出かけるのでマギーを1日預けに来たのだ。
子供達と遊びながらも、何とかスキを見つけて花園へ行こうとするのだがうまくゆかない。かくれんぼをしてそのスキに…と思ったのだが、腕白3人組に見つかってこれも駄目。おまけに手作りのクッキーが食べたい子供達に無理やりお城へ連れて行かされる。
いつもと変わりなく皆をもてなしてくれる伯爵夫人…だがその日の夕方、夫人は理由も告げずにロンドンへ戻ってゆく…しかも肖像画を携えて…。
夜になって雨が降り出すがマギーのママはまだ帰って来ない。それなら、とマギーを先に寝かして花園に行こうと思うのだがなかなか寝てくれない。夜おそく、やっとマギーのママが帰って来た。行くなら今しかない!…と2階から家を抜け出し、雷雨の中、花園へ急ぐサンディベル。
「約束を果たさなきゃ!」必死に急ぐサンディベルの前に、白水仙は夜目にも鮮やかだった。サンディベルは雨の冷たさも忘れ、白水仙に見とれるのだった。

4話「花園のプリンス」
シアラー家の前の川でイカダ遊びをする子供達。それを見たキティはイカダを没収してしまう。「お嬢さんも一緒に遊ばない?」子供達の知らせでイカダを取り返しに来たサンディベルはキティに言う。
「あなただってまだ子供でしょ?」そう言うサンディベルに、キティは「上流階級ではね、私くらいの年になるともう婚約者がいても不思議じゃないのよ…」と見下すように答える。おまけにチャールズとの仲まで変に勘ぐられるというキティの逆襲に会い、とうとうイカダを取り返しそこねてしまった。
町で親友のルースとローラに出会うサンディベル。その上スコットさんまでが花園へ出かけようとするサンディベルをデートと誤解する始末…。(全く嫌になっちゃう!男の子ってそんなに素敵なものかしら?)
花園への道を急ぐサンディベル…だがチャールズ達3人組に後をつけられていた。花園へ毎日行く彼女を、お城へ通っているのではないかと疑ったキティが買収したのだった。
その日は何とか追跡を振り切ったサンディベル…だが翌日3人はさらに知能的なプレイを仕掛ける。サンディベルにこっそり糸を結びつけるデービッド、秘かに後をつけるチャールズ、そして木の上から双眼鏡で監視するジョージ…この3人の連係プレイについに花園は見つかってしまった。
サンディベルが必死に隠していたのがちっぽけな花園だと知った3人は拍子抜けすると同時に、怒って花園を壊し始めた。白水仙に手を掛けようとする3人。「この花だけはやめて…お願い!」必死に白水仙をかばうサンディベル。
「やめたまえ!」その時、見知らぬ青年が現れピンチを救う。”花園のプリンス”とだけ名乗って、その青年は消えた。サンディベルはその青年に、生まれて始めての胸のときめきを覚えるのだった…。

5話「逃げ出したプリンス」
翌日、サンディベルはきのうの事が忘れられず、朝からぼーっとしてばかりいた。(上級生の中にもそれらしい人はいなかったし…だいたい失礼よ!名前も言わないんだから)
そう思いつつも”花園のプリンス”のことが忘れられないサンディベルは花園に行けばまた彼に会えるかもしれないと思い、道を急ぐ。
途中でウェリントン家の車を見かけたサンディベル。「伯爵夫人が帰ってらした!」そう思ってお城に寄るのだが、車から降りたのは夫人ではなく15・6才の少年だった。
(あれがマークかしら?)そう思うサンディベルだが、とうとう彼の顔を見ることは出来なかった。
せっかく、夫人にママの花園を見せようと思っていたサンディベルはがっかりする…ところが花園で再び彼女は”花園のプリンス”に会う。
画家になることが望みだという彼だが、その貧しい身なりにサンディベルは同情する。「伯爵家のあのマークという人は、きっと何自由無く好きな絵を描いているんでしょうね」…そう口に出してしまったサンディベルに、彼は一瞬とまどった様な表情を見せるのだった。
今度会うときは、君をキャンバスに描いてあげると約束して分かれた花園のプリンス…無理しないといいけどと心配するサンディベル。
そして翌朝、案の定事件が起こる。15・6才の少年が伯爵家の城から絵の道具を盗んだのだ!(まさかあの人が!?)不安にかられたサンディベルは花園へ急ぐ。そこに待っていたのは盗まれた絵の道具を持った”花園のプリンス”だった。「わたし!こんなもので描いてもらったって嬉しくない!」思わず彼を叩いてしまうサンディベル。
お城へ道具を返しに行こうと無理やり彼の手を引いていくのだが、途中でキティを見かけた彼は何故か逃げ出してしまう。
しかたなく一人でお城へ行くサンディベル…だがそこにいたのは意外にも”花園のプリンス”だった。彼とマークが同一人物だと知って当惑するサンディベル。「マークはあなたをからかったのよ!マークって冗談が好きなんですもの」追い討ちをかけるようなキティの言葉。
いたたまれなくなったサンディベルは逃げるようにお城を後にするのだった…。

6話「ときめきのデートは水の中」
”花園のプリンス”と伯爵家のマークが同じ人物である事を知ってショックを受けたサンディベル…そんな彼女にマークは言った。「身分を隠していたのは、君と”花園のプリンス”として付き合いたかったからなんだ」
マークの言葉にサンディベルの疑問はとけ、2人はまた楽しく語り合うのだった。
そんな2人をキティは嫉妬した。翌日、チャールズ達を使ってサンディベルを呼び出したキティは、丘の上からウェリントン・シアラー両家の別荘とサンディベルの家を比べ、あざけるように言うのだった。「ものには釣り合いというものがあるのよ。私とマークは婚約してるんですからね。これからはマークに近づかないで!そうしないと傷つくのはあなたの方よ!」マークはキティと婚約しているの!?ショックを受け部屋に閉じこもってしまうサンディベル…その時、部屋の窓を叩く音がした。それはマークだった。
「ぼくは誰とも婚約していない。キティがそう思っているだけさ」そう言ってサンディベルを安心させるマーク。2人はスケッチに行く事にした。
小川に張り出している木の上でポーズを取るサンディベル。「どうして画家になりたいと思ったの?」「ぼくは美しいものを美しいと素直に感じる心を、いつまでも持ち続けていたいんだ」サンディベルの問いに答えるマーク。嬉しくなったサンディベルは、つい調子にのりすぎて川に落ちてしまう。流れの先には滝が…!
必死に後を追ったマークは、何とか滝の寸前でサンディベルを助ける事が出来た。「きれいだよ…」そう言うマークに、突然サンディベルは笑い出す。
「ずぶ濡れのプリンスなんて…」「きみこそずぶ濡れのプリンセスだよ」2人は緑の風の中でいつまでも笑い合うのだった。

7話「スケッチ旅行の罠」
いつもの様に別荘の城を抜け出してサンディベルとスケッチをするマーク。
そんな彼の前に現れた人物…それはイギリス画壇のホープ、クライブ=レンドリックだった。
彼に言われるままにシアラー家の昼食に誘われ、そこで彼に絵の事を誉められたマークは有頂天になり、明日スケッチ旅行に行くというキティの誘いに乗ってしまった。
心配になり、こっそり車に忍び込んでついて行くサンディベル…。
行く先の海岸では、何故か絵筆を執ろうとしないクライブを見て、サンディベルはいかがわしく思う。案の定、全てはキティの計略だった。
学費欲しさにシアラー氏好みの絵ばかり描かされ、絵の才能をズタズタにされてしまったクライブ…その上マークを誘い出す道具に使われたのだった。
酔った勢いでキティに本音を言うクライブの話を、サンディベルはその夜、テントの陰で聞いてしまう。
翌朝、美しい夜明けの海岸…しかし、サンディベルはマークに、スコットランドの花園から見た夜明けの方がもっと美しいと言う。あなたの求める美しいものは、すぐ近くにあるのだと…。
なおも芝居を続けるキティとクライブの前で、サンディベルはマークに事実を告げた。「本当の画家なら、かたときも絵筆を離さない筈だわ」サンディベルの言葉に心を打たれたクライブは、芝居をやめ、言った。「本当の美とはな…地を這いずり腹をすかせ…必死の思いで探し求めるものさ。お坊ちゃんのおまえなんぞに見つかりはしない、絶対にな!」
マークは彼の言葉にショックを受け、海岸を独り歩いて行く。そんな彼を見ながらしかし、クライブはこうも言うのだった。「大丈夫…彼には絵を描く資格がある。あの目の輝き…私がとうに忘れていたものが…彼にはそれがある」
シアラーの御用絵描きに成り下がっていたクライブは、自分を深く恥じ、再起を誓って去って行った。

8話「誕生パーティーの夜」
ウェリントン家の事業はあいかわらず芳しくなかった。マークがスケッチに通っていたお城の裏山までがとうとう人手にわたってしまう。
もう絵の事は忘れなさいと、執事ウォルターに言われるマークだが、まだその決心はつかない。
一方サンディベルは、シアラー家から逃げ出した白馬をつかまえた事から、偶然マークの誕生日が間近い事を知る。その馬はキティがプレゼントに用意したものだった。
両親も苦労しているし、今年は誕生パーティーはやらないつもりだとサンディベルに言うマーク。
そんな時、シアラー氏が代わりにパーティーをやって差し上げよう…と恩着せがましく提案してきた。「パーティーをやらなければ、ウェリントン家が危ないといううわさがさらに広まってしまいますぞ」と言うシアラー。だがその本心は娘のキティの機嫌をとるためだった。
見かねたサンディベルは、ささやかでもいい、子供達でパーティーをやろう!と言い出す。「その代わり、とっても楽しいパーティーにするわ!」とはりきるサンディベル。
メンツを潰されたシアラー氏は、同じ日にシアラー家で盛大なパーティーをやる事をたくらんだ。サンディベル達のパーティーにぶつける為だ。金の力で楽しい誕生パーティーを踏みにじろうとするシアラー氏のやり方に、サンディベルは怒りを覚える。
マークを町に連れ出し、似顔絵描きをさせるサンディベル…一心に絵を描くマークに町の人々はいつしか親しみを覚えるようになっていった。
いよいよパーティーの夜がやって来た。シアラー家には近在の名士が続々詰めかけてくる。パーティーが最高潮に達したところでマークを連れてこようというのがシアラー氏の計画だったのだ。

その時、ウェリントン家の城に一斉に燈がともる。ウェリントン家の大広間では、マークが、町の人みんなに祝福されていた。

「おめでとうマーク!」「おめでとう!」シアラー家に来ていた客も、この光景を見て次々とウェリントン家に向かって行く…。町の人の真心が、金の力に勝ったのだ。

9話「別れは突然に」
明日は日曜日!みんなで湖までピクニックに行こうと考えたサンディベル。パパの許しも出たのでみんなを誘いに行く。友達のルースとローラ、子供達、スコットさんとおばさん、そしてもちろんマークも一緒!
お城へ行った彼女は、伯爵夫人の肖像画が帰って来ているのに気づく。一度は手放すつもりでロンドンへ持って行ったけれど、結局売らずに持って帰ってきたのだと聞いて喜ぶサンディベル。(でも、いったいだれが持って帰ったのかしら)「わたくしよ」ふり向くと、そこにはなつかしい伯爵夫人の姿が!
「母上はね、ぼくより君に会いたくて来たんだよ」と笑うマーク。うれしい事に、夫人も明日のピクニックに一緒に行ってくれるという。
サンディベルはママの花園へ夫人を案内し、白水仙を見せた。「本当は白水仙の花が咲いている時に見てもらいたかったんですけど…」でも今はもう夏の終わりでそれは望むべくもない。
来年の春、白水仙が咲いた時、また必ず見にくるわ…と夫人はサンディベルと約束してお城に戻るが帰って来た夫人を待っていたのは、急用なので至急ロンドンへ戻るように…との知らせだった。「明日のピクニックに行けなくなって、ごめんなさいね」そう言い残し、夫人はロンドンへ向かった。
入れちがいにシアラー夫人がキティを連れてやって来る。破産寸前のウェリントン家から、今日こそキティとマークとの婚約をとりつけるつもりだったのだ。伯爵夫人がもう帰ってしまった事を知って泣くキティを、どうせロンドンのパパの所へ泣きついて来るのだから…とシアラー夫人は慰める。
翌日、みんなはピクニックに出発する。楽しそうに歌うみんな。伯爵夫人がいないのが少しさびしいが…。きらめく湖のほとりを走るマークとサンディベル。「君にあげるよ」そう言ってマークは白水仙の紋の入ったペンダントをサンディベルに贈った。
オリバーが吠える!草むらに誰かいる!?それはチャールズ達だった。一度は意地をはってピクニックの誘いを断ったものの、うらやましくなってこっそり付いて来ていたのだった。そんな彼らも加え、ピクニックはさらに盛り上がる。夕方、楽しく歌いながら家路につくみんな。
…しかし、悲報が待っていた。伯爵夫人が交通事故で亡くなったという知らせが…。「あんなに…お元気だったのに…」夫人の肖像画の前で泣くサンディベル。
…春になればまた、白水仙は花をつけるだろう…でも、その花を夫人に見せる事は出来ないのだ…。

10話「雨の夜の出来事」
スコットランドはもう秋…だがマークはロンドンに行ったまま戻って来ない。気づかうサンディベルをよそに時は流れて行く…。「マークの両親の死は、自殺だったのさ」そんな無責任なうわさも流れ始めた頃、サンディベルはマークが戻って来たのを知る。
喜んでお城へ急ぐサンディベル…だがお城の中から出て来たのはキティだった。マークと婚約したというキティ…ウェリントン家を守る為、マークはキティとの婚約を受け入れたのだった。
その場は平静を装うサンディベルだが、走っているうちに涙が止まらなくなってくる…。花園につっ伏して泣き崩れる彼女だった。そんな彼女を、陰から優しく見守るクリスティー。「耐えるんだよサンディベル…人間は苦しみを乗り越えて成長してゆくんだよ…強くなるんだサンディベル!強く!…。」
マークの婚約を知って驚く子供達だが、「あたしには関係のない事よ。マークが決める事ですもの、ウフフ!」サンディベルは彼らの前でこう言ってのけた。子供達の前で涙を見せるわけにはゆかないのだから。
その夜、もうシアラー家の物となったお城では、婚約披露パーティーが開かれていた。「婚約など…受け入れるのではなかった…」一人、部屋で悩むマーク。外は嵐になる。
ベッドで泣きながら眠ってしまったサンディベルは、一瞬、光る稲妻の中にマークの影を見たような気がした。「婚約パーティーをしているマークが、ここへ来るわけがない…」そう思うサンディベルは、窓辺に1冊のスケッチブックが置いてあるのに気付く。

〜サンディベル…ぼくはやはり愛のない結婚なんて耐えられない。ぼくは、自分の心に正直に生きる事にした。必ず立派な絵描きになって君を迎えに来る。必ず君を!〜
中にはさんであった手紙には、そう書かれてあった。マークは全てを捨て、今、旅に出たのだった。
後を追おうとするサンディベル。そしてそれを止めようとしたクリスティーは、突然胸を押さえ倒れてしまうのだった…。

11話「秋風に揺れる花」
突然倒れてしまったパパ…サンディベルは徹夜で付き添い看病する。幸い命に別状はなかったが、しばらくの入院が必要という。
パパの着替えを取りに行こうと病室を出たサンディベルだが、その時、隣の病室から怒鳴る声が聞こえてきた。「帰れ!見舞いなぞいらん!」それは入院しているエドワードという患者の声だった。
「静かにしてください!ここは病院ですよ!」そう言って彼をたしなめるサンディベル。
家に帰った彼女を待っていたのはキティだった。マークの家出の手引きをしたのはサンディベルだと思い込んだキティは彼女に迫る。「マークはどこ?白状なさい!」
怒ったスコット夫人が、サンディベルは一晩中父親の看病をしていたのだと言うと、キティはあやまりもせず行ってしまう。着替えをトランクに詰めている途中で、サンディベルは思わずパパのガウンにすがって泣いてしまう。「パパ…。こんな時マークがいてくれたら…。」
その頃マークは、通りすがりのトラックに乗って町を離れてゆくところだった。
見舞いの花を摘みに行ったママの花園で、パパの病気の回復とマークの無事をサンディベルは祈った。
病院に行く途中の彼女を見かけたチャールズ達はいつもの通りいたずらを仕掛けるが、いつもなら向かってくる筈の彼女が泣き出したのにびっくり。「悪かったよ…サンディベル…」ただならぬ様子にチャールズはこう言ってわびるのだった。顔を合わせるとケンカばかりしているが、本当はチャールズはサンディベルの事が好きだったのだ。
小川に顔を映してサンディベルは思う…「自分の顔じゃないみたい…暗く…沈んで」
こんな事じゃパパを心配させてしまうと思った彼女は、もうめそめそするのはやめようと決心し、病院へ向かうのだった。
「また…やってるわ!」相変わらず見舞客を追い返しているエドワード。豪華な花束をつき返したエドワードは、サンディベルの摘んできた花を見ると、何故か「その花なら貰ってもいいな」と言う。
「これは、あなたに持って来たんじゃありません!」ぶっきらぼうなエドワードの態度にムッとするサンディベル。だがそのやりとりを聞いていたクリスティーは、「半分持って行ってあげなさい」と言った。
サンディベルの持ってきた花を見て、「どんなにきれいな花でも、心がこもってなければ美しくないのさ…だからその花は美しいんだよ」エドワードは言い、友達になってくれるかい?と笑うのだった。

サンディベルはエドワードとなら心の通じ合える友達になれるかもしれないと、ふと思うのだった。

12話「激流に叫ぶ声」
今日はパパの退院の日!はずむ気持ちで病院に急ぐサンディベル。
一方傷心のキティは、「マークをあきらめた訳じゃないわ…マークに会ったらロンドンで待っていると伝えてちょうだい!」と言い残し、ロンドンに帰ってゆく。
翌日、サンディベルはまだ入院しているエドワードを見舞いに行った。しかし、病室に彼はいない。谷川の方へ行ったかもしれないという看護婦の言葉に、サンディベルは一抹の不安を感じる…。
案の定、エドワードは足を滑らせ、谷川の激流の中に落ちてしまっていたのだった。無意識に助けを呼ぶエドワード。「人を頼った事のない私が…誰も助けには来てくれないのに…」
だがその声はサンディベルに届いていた。間一髪サンディベルに助けられるエドワード。濡れた服の代わりに白衣を来たサンディベルを見たエドワードは、ためらう事なく言った。「美しい…」
その言葉に、かつて同じ事を言ったマークを思い出すサンディベル…マークの思い出を語るサンディベルにエドワードは、「人は出会いと別れを繰り返して成長して行く」のだと言う。人間の”美しさ”について語るエドワード。「美しい人間…それは自分ばかりでなく、他人にも喜びを与える仕事を一生懸命やっている人間だと思うよ…君のパパみたいに。」
エドワードの言葉に、サンディベルは、自分も大人になったらそんな仕事がしてみたいと思うのだった。
その日、サンディベルは生まれて始めて、自分の将来の夢について考えてみた。

13話「生命ひとつ雪の夜空に」
今日はクリスマスイブ。サンディベルの家でも、子供達を集め飾り付けに忙しい。そんな所へクリスティーに、親友ロンウッドからのクリスマスカードが届く。
それを見て子供達は喜ぶが、同封されていた手紙を見たクリスティーは一瞬、顔をくもらせるのだった。
その頃マークはロンドンにいた。街角で似顔絵を描き、食いつないでいるマーク。一人の客の絵が仕上がる。「何だこれは!ちっとも似てないじゃないか!」「ぼくは…見たままを描いただけです…」正直に描きすぎたマークは客の怒りを買ってしまう。
そこへマークとは知らず止めに入ったキティ。「あなたはこういう所は不似合よ。どこか他へいらっしゃい!」彼女はこの絵描きが変わり果てたマークとは気付かず、金貨を投げ与えるのだった。
一瞬その金貨にマークは手を出そうとする。「我ながら…情けない」マークは気を取り直し、雪の街に消えていった。
イブの夜は更け、楽しいパーティーも終わってみんなも帰り、再びクリスティーと2人きりになったサンディベル。彼女は、暖炉の前でうたた寝をしているクリスティーが、うっかりポケットから落としたさっきの手紙を拾って読んでしまう。
「時にクリスティー、サンディベルは元気かい?随分大きくなっただろうね…君には感心しているよ。自分の娘でもない子を立派に育てているんだから…」
(まさか、あたしがパパの子じゃない!?)サンディベルの衝撃は大きかった。
その気配に目をさましたクリスティーは、サンディベルが手紙を持っているのを見て青ざめ、それを取り上げると暖炉で燃やしてしまう。「冗談だよ…ロンウッドは冗談がうまくてね…。おまえはパパの子だ。」「パパおかしいわ…声が震えてる。やっぱり本当なのね!」「違う…おまえは」「いやーっ!うそはやめて!」
サンディベルは家を飛び出してしまう。…吹雪の中、彼女の足はママの花園へ向かっていた。「私は…誰の子なの?教えて…ママ!」雪に埋もれた花園で泣き崩れるサンディベル…。
「サンディベル、風邪をひくよ…」ふり返ると、そこにはクリスティーの姿が。クリスティーは彼女を促し、家路をたどる。だがその途中で彼は再び胸を押さえ、倒れてしまうのだった。「パパ!…パパ!」サンディベルの叫びが吹雪にこだまする。
スコット夫妻の手で家へ運ばれたクリスティー。だがその命の灯は既に消えかかっていた。苦しい息の下、白水仙の形をしたイヤリングをサンディベルに見せるクリスティー。
「それはおまえのママのイヤリングの片方…赤ん坊のおまえがしっかり握っていたんだよ。手紙に書いてあった通り、おまえは私の本当の子ではない…私もお前のママを知らないんだよ…」
自分が死んだら、ロンドンのロンウッドの所へ…「彼がおまえの面倒を見てくれる事になっている」とクリスティーは告げた。
「パパ、聞こえるでしょ。教会でミサが始まったわ…元気を出して!」近くの教会からだろうか、風に乗って賛美歌の音が聞こえてくる。
「サンディベル…私は、おまえという人間に巡り会えてとても…幸せだったよ…」サンディベルの髪をなでていたクリスティーの手が止まり…そして静かに滑り落ちた…。

眠るようなクリスティーの安らかな顔…賛美歌に送られ、彼は天国へ旅立って行った。

クリスマスの夜明け、悲しみをつのらせるかの様に、外では雪が降り続いていた…。

14話「さようなら森と湖の故郷」
クリスティーがこの世を去ってから数ヶ月…スコットランドにも再び春はめぐって来た。ロンドンに行けという父の遺言…だがサンディベルにはその決心がつきかねていたのだった。そして、養子にならないかというスコット夫妻の言葉に、サンディベルの心は揺れる。
「わたし…ロンドンなんか行きたくない…いつまでもここに居たい…」パパと2人の写真を見つめながらサンディベルはつぶやく。その時、階下からイスを揺らす懐かしい音が聞こえて来た…暖炉の前でくつろぐクリスティーの姿を彼女は見た。(パパが帰って来た!?)だがサンディベルが見た父の姿は幻だった。それはエドワードだったのだ。
スコットランドを離れたくないと言うサンディベルを、エドワードはもっと広い世界へ出て、自分に最もふさわしい道を見つけるべきではないかと諭す。「安易な道を進むより、困難な道にうち勝って進む人間のほうがぼくは好きだ」エドワードは言う。
ママの花園へ行ったサンディベルとエドワードは、そこに寒さに耐えて芽吹いた白水仙の姿を見る。「白水仙が芽を!…あたしにとっても厳しい冬だった。でも水仙は負けずに新しい芽を…パパ!あたしも水仙に負けずに新しい芽を出してみせる!そして…自分の道を見つけるわ!」サンディベルはロンドン行きを決意するのだった。
スコットランドでの最後の日を子供達と共に過ごすサンディベル。だれもが、心にぽっかりと穴の開いたような気持ちを感じていた。
出発の日…今はシアラー家のものとなってしまったマークの別荘の前でサンディベルは誓う。(マーク…あなたの別荘をしっかりとこの目に焼きつけておくわ。きっと何時か、この別荘にマークと一緒に帰ってくる。それまで…さようなら。)
花園に別れを告げに行った彼女は、白水仙に覆いがかけられているのを見つける。(いったい誰が?)その時、オリバーが近くの木の陰にいる人影に向かって吠えた。それはチャールズだった。「花園はおれが守っていてやるから心配いらないぜ…さよなら!」彼は照れ臭そうにそう言うと走り去っていった。
…別れの時は来た。汽笛が鳴って列車はホームを滑り出してゆく。マギーが…ポールが…ジミーが…ルースが…皆がかけ出しながら手をふる。
「…サンディベル!何時かきっと帰って来てね!」「約束する、必ず帰って来るわ!必ず!…」
去ってゆく列車に遠吠えするオリバー…その叫びは、皆の尽きる事のない悲しみを象徴しているかの様だった。
町はずれの丘の上で待っていたチャールズ達も、列車に手をふった。「さようならサンディベル!元気でな!」サンディベルにほのかな想いを寄せていたチャールズにとっては、この別れは人一倍辛いものだった。
遠くなってゆく故郷…懐かしい人達…さようならみんな…さようなら森と湖…サンディベルはその時、見送る人間より見送られる人間の方が辛い事を知った…。


「ロンドン編」に続く