ビスクドールのページ 7

ホームへ

Mignonnetteミニョネット
(1875―1930年頃)

アンティークのビスクドールというと抱き人形サイズのものが主流ですが、
手の平サイズとも言える小さいサイズのものも存在します。
これらはミニョネット
(フランス語で小さくてかわいらしいの意)
と総称されております。


私が海外に人形を買いに行くようになったのは1988年ですが
8号サイズの人形を買ってしまうと
身動きが取れなくなる事は
このジュモウでわかり切っていました。

大きいサイズの人形を購入しても、器用な方はボディを分解して
ヘッドだけを大事に持ち(紙オムツでくるむと案外イイ感じ!)
ボディはスーツケースへ入れ、帰国してから組み立て直すそうですが
これは、不器用な私にはちょっと出来ません。
(これって空港の税関でスーツケースを開けたら、
係員さんがビックリしてしまいそうですね)

開けて1989年
この年の旅行はフランス-イギリスを船で渡るという、その行程、約10-12時間のものでした。
余分な時間を使っちゃったな〜と、今になっては思いますが
ユーロトンネルのある今は逆にしない事と思いますので、
それはそれで貴重な体験であったと思います。


パリ
週末を待ってクリニャンクールへ行きましたが
ここではコレ!という人形に巡り合えず、数件の人形屋をフラフラと見ていると
クリスティアーヌの店のガラスケースの中に沢山のミニョネットが納まっておりました。

「これは小さくて持ち運びに便利!大きい人形と比べてお値段もお手頃!そして何よりカワイイ!」という
理由でいくつか買い求めてまいりましたが
その後、可愛がっていただける方との出会いもあり
現在、家には5体あるのみです

メーカー不明
(Germany・1890年代以降)

うちにあるミニョネットで一番小さいサイズです。
身長は、わずかに9.5cm!
それなのに!スリーピング・アイになっています。

後頭部に彫りこみが、うっすら見え、
特徴的な顔と、その技術力でドイツのものである事はわかりますが、
メーカーの特定はできませんでした。

ドイツの技術力は世界一イイイィ!!
はっ!

顔アップ ボンネットを取って あまり見る機会のない横から 読めそうで読めない〜
全身9.5cm 手編みのボンネット 手のモデルはア・タ・シ

ぴっちりと着せ付けてあるので服を脱がせる事はできません。

スリーピングアイです 目を閉じています 目を開いています
(茶目ですがおわかりいただけますか?)


ヘッドの大きさが一円玉ほどです むっちりとした足に彩色された靴・靴下 両肩・両足の付け根のみが可動します

1876年にガラス目・かつらをつけた間接のある
(この場合、頭と両肩・両足の付け根の事。肘と膝は動かない)
オールビスクの人形が発売されたとありますが、
色付けの濃さや顔立ちからいって1890年代以降の人形ではないかと思います。


SIMON&HALBIG・コミュニアント
(Germany・1910−1920年頃)

こちらのカップルは同じくクリニャンクールの店
ローラ・バンコウの向かいの店(店名・不明)で購入しました。

長い間、結婚式のカップルだろうと勝手に思いこんでおりましたが
2年前に神谷先生の「人形通信」で「宗教と人形」が取り上げられ、
「聖体拝領」の衣装である事がわかりました。

キリスト教では子供が生まれるとすぐに洗礼を受け、
その後、小学校2年生位のときに「聖体拝領」の式を受けるそうで
これをコミュニアントというそうです。

顔アップ あまり見る機会のない横から ヘッドマークは共通
878

ヘッドマークからドイツのメーカー・シモン・ハルビックのものである事がわかりました。

ヘッド・メイク・目の色(茶)とも共通です。
着ている服とウィッグだけで男女の違いがわかるのはお見事!

ミニョネットは、小さいながらも衣装の手が込んだものが多く
オリジナル衣装のまま、現存している数も多いです。

スリーピングアイです 目を閉じています

ボディはコンポジションです。
ミニョネットも初期のオールビスクから、時代とともに単価の低いコンポジションが数多く作られていくようになりました。

コンポジションというのはビスクと比較すると、ややもったりとした印象と造形の甘さがありますが
その分、暖かみがありますし、気楽にさわれるという利点があります。

オリジナルボックス入り・前面はガラス 箱の裏面 全身16cm 全身16cm

箱の裏面にSFBJとありますが、これは
SFBJ(ソシエテ・フランセーズ・デ・ファブリカシオン・デ・ベベ・エ・ジュエ)
フランス人形玩具製造協会
といいます。

SFBJはドイツの人形メーカーに押されて経営が困難になったフランスのメーカー数社が
1899年に設立した協会です。

SFBJ(フランス)の箱にシモン・ハルビック(ドイツ人形)という組みあわせですが
フランスは、ミニョネットの製造にあまり熱心でなく、
ドイツに発注して人形本体を作らせ
フランスで衣装を着せ包装してフランス製として売ったという話を聞いた事がありますので
案外、その口かもしれません。

そんな事からも、この人形が製造されたのは1910年〜1920年代ではないかと思います。

この人形もお揃いの箱に入ったまま、バラバラにされることもなく100年近くの時を経てきました。
いつの日か、私の手を離れる時が来たとしても、
私に与えられた使命として二体一緒に次の方へと委ねたいと思います。

ロザリオ 左腕にリボン


J.D.KESTNER

(Germany・1890年代以降)


上でご紹介させていただいた3体の他にも、数体のミニョネットを買い求めた私ですが
その中の1体をあろうことか!お金は払ったものの、そのお店に置き忘れてしまいました。

迷路の様なクリニャンクールの中を「時間がない!あっちだ!こっちだ!」と、その店を捜して彷徨っていた時に
このケストナーを人形屋でない骨董品屋(家具屋さんだったかな?子供用の椅子に座らせてありました)で、みつけました。

こういうのも出会いだなぁと思います。

顔アップ 帽子とウィッグをつけて あまり見る機会のない横から ヘッドマーク
118

ミニョネットでは10〜15cm位が多く見られますが、これは珍しい21cm。
18cmを越えるとわざわざグラン・ミニョネット(大きくて小さくてかわいらしい!?)と言うそうです(笑)
また、イアリングの穴が開いているミニョネットも非常に珍しいと思います。

全身21cm 服を着せて

セーラーカラーのドレスはオリジナルにしては時代がないので
いつかの時代の所有者が作ったものかもしれません。
髪が落ちつかないので、かぶせた麦わら帽子はジェニーのものです(笑)

数回に分けて描かれた眉、透明感溢れる水色の目、半分開いたような甘い口元が
不安げな憂いのある表情を垣間見せてくれます。

ヘッドマークは118。
これだけではメーカーの確定はできませんが
私の勘でこの位の時代のケストナーにさせてください(笑)


そして次の日に
メゾン・ド・プッペで
このエデン・ベベを購入しました

ミニョネットをタオルでグルグル巻きにしてスーツケースへ入れ、
エデン・ベベを抱えて、向かった先は<結局、大きいサイズも買ってるじゃん〜

ロンドン

RECKNAGEL
(Germany・1886−1930年代)

パリでミニョネットを11体、購入していましたので
「もう、いいでしょう」と水戸のあの方なら思ったかもしれませんが、
もうダメ
色の白さと、この一風変わった形のガラスのドームに、やられました。

アンティークマーケットの中にある
チェルシーライオンで、この状態で見た時には
「あ!この形、タイムカプセルみたい!」と思っちゃいました。
ロマンチストと呼んで下さい(笑)

顔アップ
茶色の目が落ち着いた印象を与えます
あまり見る機会のない横から ヘッドマーク
31-32
10
ボディにも31/10

ヘッドマークから1886年創業のドイツのメーカー・レクナゲルのものである事がわかりました。
この人形自体の製作年は微妙ですが、色の白さからかなり初期ではないかと思います。
このメーカーのミニョネットは他にも数体、見たことがありますが
大体において出来がよく、逆に抱き人形サイズを余り見掛けません。

調べてみましたが、もともと「人形製作の会社」でなく「焼き物の会社」でした。
ですので、抱き人形サイズであっても「ヘッドだけ」を作っていたようです。

ヘッドは、斜めでもなくベルトンタイプ(丸坊主)でもない、頭頂部が平たくカットされた
コンケーブヘッドと呼ばれるタイプです。

白い肌に赤い頬が絶妙です 全身10.5cm オールビスクなので重いです
アンティークビーズが使われています 良家のボクちゃん風? ヒールもあります

この年はロンドンの方がパリよりやや物価が高かったと思います。
骨董品もその例外ではありませんでした。

このレクナゲルも、結構なお値段がつけられていましたが
「値引きはしない、ケースは別料金」というのを
「値引きは仕方がないかな・・・けど・・・
オラオラオラオラ!ケース込みの値段にしろや!」と
あぁ・・・。
あの頃、私は若かった(笑)
ん?今?今なら値引きさせてケースもつけさせます<ヒドイ

勢揃い

抱き人形サイズのビスクドールも、もちろん素敵ですが
小宇宙(コスモ♪)なんて言葉を思わず想い浮かべてしまう
ミニョネットもまた、私にとっては愛すべき存在なのです。

1989年・9月・パリ・ロンドンにて購入
2002年9月20日 作成

次ページへ