紹介してもらった営業マン(UMさん)と会ったのは翌年1998年1月第2週のことでした。UMさんはFS市にある外資系「F」社(仮名)のディーラーの副所長を勤めている方で、中古車のオークションでの調達を一手に任されているとの事でした。 「NSXは正直なところまだ扱ったことがありません。しかし、オークション会場では国産車の中では別格扱いですよ。ちゃんと特別に広いスペースが確保されていて、じっくり見ることができる環境になっています。縁のない車だと思っていましたが、こういう機会を与えてもらえるととてもうれしいですね。」 そう言って、早速コンピューターで相場を確認してくれました。 「おっしゃる通り、平成3〜4年式だと450〜500万ぐらいが相場になってるようです。ですが、YGの紹介でもありますし、ほぼオークションの落札値に順じた価格で卸させていただくともう少しお安くできると思います。」 おお〜!!頼もしいお言葉!!早速、細かい価格交渉にかかります。僕の希望としてはコミコミで500万円を予算として、平成3〜5年、クーペ、赤、MTで「外見美品よりも機関良好なもの」でした。最初は順調に打ち合わせていましたが… 「ところで、保険なんですが今と同じ条件でよろしいでしょうか?」 「それが…、同じ条件だとヤバそうなんです…」 そう、僕は割増生活者だったのです。なにしろシルビアのときにはクラッシュしまくりで、少なくとも3回は全損まではいかないものの半損ぐらいのクラッシュをしており、その度に車両保険を使っていました。ですので、収支はプラスになってはいるのですが、シルビアのときですら車両保険を含めた任意保険の総額が年30万円を超えていたんです。 「どうでしょうか?」 「………。」 今現在の契約状況をみてもらったのですが、ひょ表情が険しい〜。しばらく無言で考えたあと、諦めたように出た言葉は 「わかりました。現在の条件から落とさずに、なんとか年50万で収めましょう。ただし、方法に付いては私に任せてください。」 ご!50万んっっ!? しかし、まあ、シルビアが30万でNSXが50万なら充分安いのかもしれない…。良くわからないけど、そう思うことにしよう。保険に関しては一任しました。 しかし、任意保険が50万。諸費用が50万(車検含む)としても計100万〜??ってことは予算500万だと、買えるのは400万の車になってしまいます。 「オークションと併せて業販のほうもあたってみましょう。毎週金曜日に大きなオークションがあるのですが、最初のねらい目は1月末の金曜日でしょうね。NSXほど価格の高い車だと、在庫車を換金するために安く出してくる可能性があります。」 へ〜え〜、そうなんだぁ。その他いろいろと中古車購入のノウハウについて教えてもらい、UMさんにお願いしてその日は帰りました。
今では無事故のNSX(MT)を、オークションとは言え400万前後などとはとても望めたものではなくなってしまいましたが、当時はまだ希望の持てる金額でした。でも、確かに無理はあったようです。狙い目といっていた1月末の金曜日に電話を入れてみました。 「あるにはありましたが、競り上げられた価格が420万になってしまいました。会場に行っていた担当者から連絡が入り、「買ってしまっていいですか?」との事でしたが、予算オーバーでしたので諦めました。」 「そうでしたか…」 420万だったらよかったかも…。でも、指定した金額の範囲で動いてくれているので責めるわけには行きません。結局、予算を車本体420万に引き上げ、オーバーしそうなときには携帯に連絡してもらって買うかどうかを判断させてもらうことにしました。しかし、その後、条件に合う車はなかなか出てこなくなります。相場が上がり始めたんです。(420万は、結局一番安い落札価格でした。)
そして、さらに、衝撃の報道がなされました。 「HONDAがF1に復帰する!!」 というのです。 そして、見つからないまま3月も後半に入っていました。 「やっぱり僕とは縁がない車なのかな?」 そう思って落ち込んでいたところに連絡が入りました。 「業販で程度のいい車が見つかりました。450万で引き取ってこれます。どうしますか?」 「えええ??ほんとにぃ?」 でも、450万だと完全に予算オーバーでした。 細かく質問しましたが、機関の程度はとにかくいいそうです。平成3年式、クーペ、MT、フォーミュラレッド。外装はそこそことの事ですが、走行はたったの14,000Km!ただし、メーターが変わっています。でも、メーター交換したのは売りに出したその業者で、ほぼ新車時に交換した証明になるものもあるそうです。とはいえ、メーター交換しているので走行不明車であることは確かです。でも、僕としては下取りになど出す考えはなく、とことん乗り潰すつもりなので機関さえ良好ならそんなこと問題ではありません。 あとはUMさんの判断を信じるかどうかでしたが…。
信じていました。 これまでのお付き合いで何度となく電話で連絡を取り合い、その都度納得の行く対応をしてもらっていました。前出の直談判の時も、いい車があると担当者から連絡を受けたUMさんはオークション会場まですぐに駆け付けたうえ、21時回ってまで直談判に行ってくれていました。 「UMさんのプロとしての判断を信じる。」 これは、僕としては大前提でした。
「買ってくださいっ!!」 |