八千代市立保育園父母会

連絡会ニュースNo.7

1999年 3月 10日(水)発行

 

八千代市立保育園父母会連絡会広報部

 (3月議会傍聴特集号)

「民営化方針で何が心配なのか、知っておきたい」(武田哲三議員[かがやき])

「民営化反対の立場、父母の皆さんの声を聞きたい」([日本共産党]市議会議員団)

〜2月24日八千代市議会議員(団)と父母会連絡会で懇談会〜

 2月24日土曜日午後、3月市議会で保育園民営化関連質問を3月3日に予定していた議員からの申し入れを受け、懇談会を持ちました。武田議員との懇談会には[かがやき]会派控室に父母や保母が10名ほど集まりました。武田議員自身も自分の子どもを保育園や学童保育所に預けた経験を話しながら、私たち父母が「市の公立保育園民営化方針でどんなことを具体的に心配しているのか」を知りたいということで、熱心に耳を傾けてくれました。(1時間半以上に及んだ懇談会の内容が殆ど無視された事実は以下の傍聴記をお読み下さい。)

 引き続いて3時15分より第2特別会議室にて、小林恵美子・植田進・山本陽亮各市議3人の日本共産党議員団と父母や保母20名ほどで懇談会を持ちました。共産党は、選挙時の公約通り「公立保育園民営化反対」の立場で、一致する要求を掲げている父母会連絡会の具体的な声を聞きたいということでした。私たちの意見を丁寧に受け入れてくれました。そして「署名集約数(=市民の声)が大きな力になって議会を動かす」ことが確認されました。

市議会における市側答弁のポイント:

@民営化方針変わらず。これからの保育のあり方について、公立及び民間の園長、

  市民、関係者を含めた検討会を設置し、平成11年度中に結論を出す

A保育水準は現行維持。質の低下はさせないようにする

B近隣市や幼稚園と運営費・市税負担を比較したデータを公表

 〜3月3日保育園の行革方針(主に民営化)について、小林議員と武田議員が質問〜

 小林議員「(民営化反対を主張した後で)民間園に対しての市からの運営費補助は最高額と最低額はいくらか。その差はどこから来るか。日曜保育や一時保育など公立保育園でも新たな保育要求にこたえられないのか」

 市長「女性の社会進出や働き方の多様化に伴い、日曜、年末、一時保育や低年齢児保育等の多様な保育ニーズにどうこたえていくのか、これからの八千代市の保育のあり方について公立、民間の園長、市民、関係者を含めた検討会を設置し、平成11年度中には結論を出したいと考えている。事業の実施については、児童の柔軟な保育や受け入れ、保育時間等にも弾力的な運用が可能な民間保育を考えており、基本的には先に打ち出した、公立保育園の一部民営化の中で対応していきたいと考えている」

 保健福祉部長「平成9年度決算で90名定員の民間保育園をみると、(運営費が)一番高い園の場合、国の最低基準に基づく措置費が8516万4216円、市からの運営費補助金が6677万6342円、合計1億5194万558円。低い園が措置費5855万8200円、補助金3538万8233円の合計9394万6433円。その差は保育内容の違いから来ている。3歳未満児・産休あけ・障害児保育の実施や人件費の違いなどだ」

 小林議員「高い保育水準に合わせて運営費を出し、新たな事業を展開するとなると、上乗せが必要となり、現在でも1億5000万円で、2億円以上の費用が必要となる。2億円を新たに支出することが、本当に市民にとって意味のあることなのか。また、どうしてこんなに民営化を急いでいるのか。市長の手紙では『平成22年度までに4、5園』と書いているのに、12月議会では『12〜13年度にモデル園委託』という方針を打ち出した。なぜわずか2カ月で変わったのか。市民との話し合いを求め、白紙撤回を要望する」

 武田議員「保育園民営化は全国から関心が寄せられている。長期的視点に立って民営化を打ち出さざるを得ない理由を教えてほしい。公立保育園の子供1人に年額230万円の運営費(広報10月15日号)、とあったが高いのにびっくり。そこで@運営費を近隣市と比較すると、どうなるか A保育の質については、市はどのような対応を考えているか B幼稚園の預かり保育も増えている。幼稚園と公立保育園の子供で年間いくら負担が違ってくるのか」

 市長「厳しい財政状況のもと、高齢化社会に対応する新たなサービスにせまられている。多様な保育ニーズと、財政健全化を図るための一環として、12項目の基本方針のひとつとして打ち出した。平成9年度決算で27億円の費用がかかり、うち保護者からの保育料は3億6000万円、市の単独負担が約18億円。これは国基準を上回る職員配置によるものが大きい。児童1人あたりにすると公立園では年額230万円、私立園は年額130万円と、約100万円の差があり、90名定員の園でみた場合、1園あたり9000万円の経費の差が出ている。基本的には平成22年度までに4〜5園を民営化、モデル的には13年までに1ヶ所を民営化してまいりたい」

 保健福祉部長「公立保育園の運営費を1人あたり月額で近隣市と比較すると(9年度決算ベース)、千葉市14万373円、習志野市15万9867円、佐倉市13万4784円、八千代市19万2986円。私立は、千葉市9万92円、佐倉市9万6587円、八千代市10万6859円。保育の質については、現行の保育水準を維持し、保育の低下をきたさないようにしていく。新たな保育ニーズにも対応していくことを考えているが、基本的には公立保育園の民営化の中で対応していきたい。また、公立保育園と私立幼稚園に対する市税の持ち出し額については、公立保育園児が年額167万円4456円、私立幼稚園児が6万3600円(9年度決算)となっている」

 武田議員「市民の血税を無駄なく効率的に使いながら市民サービスを目指す、大沢市長の勇気ある英断に敬意を表したい。しかし、市民の中には、錯綜する情報に漠然とした不満があるのも事実です。もっと広範囲の人に、なぜ民営化が必要なのか、保育園の運営はどうなっているのかを説明する努力が必要だ。人間は子供を育てることで親としての愛情や忍耐、やさしさを学び、子供も愛情を感じながら成長していくと言われている。子育てへのかかわりの大切さを十分に訴えてほしい」「八千代市のコストが一番高い理由は」

 保健福祉部長「最も大きいのは国の最低基準を超え独自の配置によるものだ。過去の人口急増期に公立中心の積極的な建設を行うことで、職員を大量採用してきたことも一因である。可能なものは見直し、職員の有効活用や柔軟な保育、臨時職の活用を推進して対応を図る。一方で、民営化を実施し、効率的な財源配分の中で保育サービスを増やす工夫をしてまいりたい。将来的には公私半々となり、お互いに刺激し合い、時代の変化に対応していきたいと考えている」《質疑・回答の要旨》

 

市民の声どこまで届く?(市議会傍聴記)

「ちょっと待った その数字!」

 ああ、やっぱり出たか。「千葉市14万…八千代市19万…」と、八千代の公立保育園運営費が、近隣市と比べていかに高いか、保健福祉部長の数字の読み上げが始まりました。「高い」とは、子供にとっては「手厚いこと」。でも、市長も部長も、数字を語るのみで、市の保育の長所には何も触れてくれません。「国の最低基準を上回る配置のため(金がかかる)」と言うだけ。情けない。

 保育にお金がかかるといったって、子供も保母さんも保育園で「ぜいたく」な暮らしをしてる訳じゃない。今の人員は、子供が安全に心豊かに過ごすために、経験と実態から生まれた現場の最低基準です。経験を積み、雇用不安の少ない職員(看護婦・栄養士さんを含めて)が、子供をじっくり大切に見てくれるからこそ、父母は評価・信頼して来たのです。そして何より、その「財産」を築いてきたのは市自身でしょう。比較データを示すなら、充実した保育内容を堂々と説明したうえで、その長所部分を切り捨てる覚悟があるかどうかを、論議するのが筋ではないですか。

 ため息混じりに聞いていると、さらに耳を疑う数字が。「公立保育園に通う子は1人年額167万円、私立幼稚園は6万円…」。ちょっと待った! 乱暴過ぎる。保育園は、日中家庭での保育に欠ける子の発達を公的責任で保障する場、つまり「家庭と同じように生活する場」。幼稚園は「幼児が学ぶ場」。実態も法律も全然違うでしょ。普段は縦割りの管轄ばかり気にするお役所が、こういう時は何も説明しないのですね。保育園の数字には、保母さんらの人件費が丸ごと含まれているし、経費のかかる低年齢児は幼稚園にはいません。だいたい、質問する方も、安上がりだから幼稚園に保育機能を肩代わりさせよう、なんて考えがセコい。でも、議員に保育園の何たるか、を教えず間違った理解を黙認する市の方がもっと罪は重い。

 何も知らない人が、一連の数字を見れば「なんで、八千代は保育園にこんなに金がかかるんだ」と思うでしょう。「ちょっと削った方がいいんじゃない」というムードが広がれば、それが当局の「思う壺」。例え、矛盾だらけのデータであっても、ひとたび議会の場で公になれば、強力な武器となって世論を引っ張ります。この質疑・答弁は、まさに戦略的に数字を使うのが狙いだったのでしょう。議会の場で何の客観的な議論もせず、都合良く公表したことに、憤りを覚えました。と同時に、多くの市民が「運営費が高い」→「でも、子供のために削ってはいけない支出」と考え直してくれるよう、私たちが理解を求めていく努力をしなければいけないのだと痛感しました。

 「公立保育園は血税の無駄づかいか!?」

 信じられない発言攻撃はまだ続きました。「市民の血税を無駄なく効率的に使い市民サービスを目指す、大沢市長の勇気ある英断に敬意を表したい」(武田議員)。そこまで言うか。せっかく父母に会って下さったのに、一体何をくみ取られたのですか。そのこん跡はただ1ヶ所、「一部市民の間には錯綜する情報に漠然とした不満があるようだ」と述べた部分だけ。「子育てへのかかわりの大切さを十分に訴えてほしい」とも発言がありました。訳すと「情報が届かないから父母たちは不満を感じている」「親は本来自分で子育てするべきだ」という意味合いでしょうか。

 子育て論はさておき、父母会連絡会が民営化に反対する一番の理由は、「情報不足」ではありません。八千代の現行保育を評価しており、子供のために今の保育水準を守り、公立園を存続してほしい、という声をお聞きになったはずです。与党会派だから「行革案賛成」の立場は譲れないでしょう。でも、市民の声を議会に届けるという議員の本分を忘れていやしませんか。この問題を巡ってさまざまな意見があるのなら、それを具体的に紹介したうえで、ご自分の信念を語れば説得力も増したのではないですか。議員の株も上がります。父母の意見も聞いた、という手続きだけのために懇談を持ったのなら、残念なことです。

 「血税を無駄につかってほしくない」。それは当たり前。では、市民は何に税金を使ってほしいと願っているのでしょうか。逆に議員や市長に問いたい。犬も歩けば「行革」「行革」の連呼にぶつかる現在、「行革」がゴールだと錯覚していませんか。どんな八千代市にしたいのか、先に未来のビジョンがあり、「行革」はあくまでそれを実現するための手段です。一般的な市民は、不況の今だからこそ景気動向に左右されないしっかりした社会福祉を自治体に求めているのではありませんか。

 でも、議会では本質的な質疑や答弁はほとんどなく、「行革は進める」という繰り返しでした。保育園や学校給食、ごみ収集など、市民生活に狙いを定めたような「行革方針」ですが、これが強行されたとしても浮いた費用は、見えないところに散らばってしまうのだろうな、と感じました。

  「八千代には学級崩壊は存在しない?」

 結局、高齢者人口は増大するから財源は必要だけれど、その費用は人数が少ない子供たちの分野から削るという発想しか出ないのだろうか。悲しい気分になった矢先、学校教育の問題が取り上げられ、教育長が「八千代市には、テレビや新聞で報道されているような学級崩壊はございません…本市の状況からは考えられません」と断言しました。またも気になる発言。公共事業の執行状況じゃあるまいし、「異状なし」と報告が上がれば、それでOKなのでしょうか。保育園と同じで、子供たちの問題を表面でしかとらえていません。(市内の中学生が自ら命を絶つ、という痛ましい事件が起きたのはその日の夕方です)

 問題行動の発生件数が多くないから、特別な対策はいらない。保育環境を安価なものに切り替えても、事故や問題が起きないから、政策的には正しかった。発想の根っこは同じです。なぜ、未来を背負う子供たちが、今いろいろな場面で手厚い保護を求めているというのに、「大人の論理」を持ち込むのか。バブル経済に血道をあげ、財政運営に失敗したつけを子供に回すのは、やめてほしい。これから重い社会保障費を担い、八千代の高齢化社会を切り盛りしていかなければならない子供たちに、「心」より「効率」「採算」が大事だと教えないでほしい。「血税」を子供たちに注ぐことに、一般市民は反対するでしょうか。議員や市長に、皆さん自身の将来に投資するということですよ、と言いたくなりました。

 この日の議会は、形式的なやりとりばかりが目立ちました。「議会制民主主義」と言いますが、議員を選ぶという権利しかない私たちにとって、議会の中まで市民の声がどこまで届くか、心もとない気がしました。やはり、いろいろな形での働きかけが必要です。そのひとつとして議会傍聴も是非おすすめします。時折信じられない発言が聞けたり、今何が話題か、が分かったりしてまあまあ刺激的です。傍聴席が埋まって、議場の方々も張り切ってくれれば、一石二鳥になるかもしれません。                              (父母会H記)

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