もしもの国のルヴァ様

作者:みーたん

今日は日の曜日。

もちろん執務に追われる事も無い。今日はのんびり出来ると思ったルヴァは、公園でぶらぶらしようと出かける事にした。

「あー、天気がいいですねえー。」

地の守護聖は温かい日を浴びながら、てくてくと公園までの道のりを楽しんでいた。

すると、不思議なものが目に入って来たのだ。何だか聖地には不似合いな物体である。

「?。近くにいってみましょうかねえー。」

ルヴァは好奇心で一杯な目を輝かせながら、さくさくとその物体に近づいていった。


そこに「でん!」と置いてあったのは、電話ボックスであった。しかしながら、聖地にこのような物が普通は有るはずも無く、

ルヴァは興味しんしんで電話ボックスを調べ始めた。

「んん〜?ここは開くのですねー。ああ、これはこうして…こう?」

もはや当初の目的は忘れているようだ。

しばらく探索を終えると、そこは流石「知恵」の守護聖である。何時の間にか取扱説明書のようなものを取り出して、操作しはじめていた。

取扱説明書にはこうあった。

「これは「もしもボックス」といいます。受話器を上げて、あなたが行きたい世界をリクエストして下さい。」

…ニヤリ。

ルヴァはちょっとだけ笑うと、早速受話器を上げてこう言った。

「守護聖たちを今と反対の人間にして下さい〜。」

地の守護聖は嬉しそうにリクエストしていた。その笑顔に一点の曇りは無い。

そして、「はい、受けつけました。」

そんな声が受話器から聞こえてきた。


ルヴァはわくわくしながら、早速守護聖たちの様子を見に行く事にした。

電話ボックスから出ようとした時、いいタイミングで聞き覚えのある声がしてきたのだ。

「あー、どんな風になったのでしょうかねえー?」

声の主には気づかれないように、そっと草陰に隠れて様子を見る事にした。

そこにいたのは…!

「おい、ゼフェル!いつまでもチンタラやってんじゃねーよっ。全くロボットなんかいつも作りやがってよお。
 うってーしーんだよ、おめーはよお。」

「ああ、マルセル!僕のメカチュピになにするのさあ〜(T_T)。」

「いいぞ!いいぞ!やっちまえよ。マルセル!!」

見かけはそのままなのだが、どうも中身がすりかわったとしか思えない年少組の姿がそこに有ったのだ。

ルヴァは思った。

「ゼフェル、あなたいい子になったのですねえー。私は嬉しいですよー。ホロリ。」

満足げに微笑んだルヴァは、そそくさとその場を立ち去っていった。

それにしても、マルセルとランディの事はいいのか?


「あー、次は中堅組ですね〜。こっちは何となく想像がつきますねえ〜。」

ルヴァはほくほくしながら、中堅組のもとへ向かった。

「おいっ!何をするんだっ!?オスカー。」

「いいじゃないのさっ★せっかくキレイに生まれついたんだから、化粧ぐらいさせなって!」

そこには、ハデハデな衣装に身を包んだオスカーと、びしっとスーツを着こなしたオリヴィエが牽制しあっていた。

ちょっと見には本人達とはとても気がつかないであろう2人…。

「オスカー、意外とお化粧が似合うんですねー。いやー、発見でした。それにオリヴィエ。別人のようですよー。」

どうやらルヴァは想像してはいたものの、驚いたようである。

「それにしても、ナンパをしないオスカーはオスカーじゃないですねえー。オリヴィエもすっぴんは…。」

そう言いかけた時に、もう1人この場にいるはずの人物・リュミエールが後ろから声をかけてきたのだ。

ルヴァは心臓が飛び出るかと思ったのだが、ここは平静を装って水の守護聖に話し掛けてみた。

「あー、リュミエール。ごきげんよう。」

水の守護聖はいつも通りの温和な笑みをルヴァに返した。

「ルヴァ様、ごきげんよう。今日はいいお天気ですね。」

…ルヴァはちょっと不思議に思った。これといってリュミエールにいつもと違っている部分がないのだ。

「おかしいですねー。」

そう思いながら視線を下に移動した時、彼は全てを理解した。

そう、殆ど変わり栄えのしないリュミエールは、この世界では女性になっていたのだ。

あるはずのない・胸。そして深くスリットの入ったスカートが目に入ってくる。

「あ、あー。私はこれで失礼しますー!!」

ルヴァは不覚にも赤面してしまった自分の顔を隠すように、そそくさとその場を立ち去っていった。

恐るべし!リュミエール。

「顔が同じなだけに救いがないですねー。」

地の守護聖は脱力してぽつりと独り言を言っていた。


「あとは例の2人ですねー。私にも想像がつきません。年少組と同じパターンでしょうか?」

ルヴァはウキウキしながら、年長組のもとへ向かった。

すると、どこからとも無く騒がしい音が聞こえてきた。

前から向かってくるのは、クラヴィスである。しかもその姿は…。

「クラヴィス!?どうしたんですかー?」

ルヴァはあんぐり開いた口がふさがらなかった。

何とクラヴィスは、CDプレーヤーを背負って、リオのカーニバルの衣装に身を包みながら踊り狂っていたのである。

その彼の動きには非常にキレが有り、いつも執務室に閉じこもって何ともいえないけだるさを纏わり付かせている

クラヴィスとは同一人物には見えなかった。 

しかも彼は笑顔をふりまきながら、歯まで輝かせている。

「あー…こんな爽やか(?)なクラヴィスは初めて見ましたよー。いい事ですかねえー。」

「フッ…、おまえも一緒にどうだ?」

ルヴァは慌てて首を横にふった。その時であった。聞きなれたあの怒声が響き渡ったのは…!

「クラヴィス!そなた、何をしておるのだっ!?全くそなたの職務怠慢ぶりにはいつも呆れる!!」

来たなーと思いながら、ルヴァは振り向いた。そこにいたのはいつもと変わり無い、光の守護聖の姿であった。

さっきのリュミエールのパターンも有りかと、注意深く全身を見渡してみるのだが、どうやらそうでもないらしい。

ルヴァは「ちっ。」と心の中で舌打ちをした。

「ルヴァ、そなた何を見ておるのだ?さっさと執務に戻らぬかっ!」

「あー、分かりましたよー。」

ジュリアスの変化の無さに、失意をおぼえながら帰りかけたルヴァの目に飛び込んで来たのは…!

「…それにしても今日は熱いな。」

(かぽっ。)

何と、ジュリアスは見事な金髪をつるっと脱ぎ捨てて、頭を輝かせながらその場を去っていったのだ。

「あー、流石光の守護聖ですねー。」

ルヴァはとんちんかんな事を考えながら、ジュリアスの後姿を見送った。


今日1日は何と楽しい日だったかと、ルヴァは大満足していた。

そして「もしもボックス」へ入り、元の世界へ戻すようにリクエストしたのであった。

受話器からは、「はい、もとの世界へ戻ります。」という声だけが聞こえてきた。

「これで元にもどったのですかねー。」

ルヴァはちょっとだけ心配で有ったが、何とかなるでしょうかねーと自分の私邸へと向かっていった。

「また是非遊んでみたいですねえー。」

ルヴァはウフフと笑みをこぼした。


ルヴァの姿が見えなくなった頃、もしもボックスは既に無くなっていた。

何でも青いタヌキのような動物が、あの大きい物体を軽々と持ち上げてポケットにしまっていったとか。

…聖地に住む妖精の仕業であったのか?

後日、「もしもボックス」を再び試そうとしたルヴァが残念がったのは言うまでもない。

< お わ り >


あとがき:うう〜ん。文章って難しいですねえ(T_T)。

      もう弁解するのも疲れてきましたです。この作品は、日頃お世話になっていますayarinさんのHP開設1周年記念に捧げます。

      どうぞ、ご笑納下さいませ<(_ _)>

 
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