O型 のあなた。
 
リュミエールさまのお誕生日が近づいている。
女王試験が始まってもう、随分経つが、正直言って守護聖様のお誕生日を自分が祝う、なんて考えてもいなかった。
 
もうひとりの女王候補…
彼女は、私が考えもしないような事を次々と考えつく。。。
「あんた、もうすぐ、リュミエールさまのお誕生日って知ってるの?」
それは、わたしにとって驚きの事実だった。
守護聖さまにも、お誕生日ってあるんだぁ。。。
考えて見れば元は自分と同じ人間ですもの。
でも、私にとって特別な存在である守護聖さま達が、自分と同じだってことが、イマイチピンと来ないのだ。
わたしは、彼女にどうするつもりか聞いてみた。
答えは…
 
「ヒ・ミ・ツ」
 
だった。 

 
悩んでも仕方が無い。
とりあえず私は、ショッピングセンターに足を運んだ。
色々見ていれば、なにかヒットな物が見つかるかもしれない。
ショッピングセンターには人もまばらで、贈り物を見て回るには申し分無い状況だった。
けれど、わたしはそんなにリュミエール様の事をよく知っている訳ではない。
贈り物、といったって何がいいのか正直言って思いつかない。
半日うろついて、へとへとになった私の視界に、ふと、小奇麗な映画館が飛び込んで来た。
よし。
思えば女王試験が始まってからというもの、いままで満足に遊ぶ事もなかった。
たまにはいいでしょう。
私は、休憩がてら映画を鑑賞する事にした。
 
運のいい事に、私の大好きな俳優が主役を張っている映画が上映されていた。
それは、空想と冒険の世界を描くファンタジー映画だった。
主役の俳優は、繊細な面立ちと、顔にそぐわぬ鍛えられた体躯の持ち主であった。
私の頭の中で、何となく俳優とリュミエールさまとがオーバーラップしてしまう。
 
 
久し振りに大好きな映画を堪能した私は、上機嫌で帰路につこうとした。
 
…あれ?
 
思えば当初の目的を、未だ果たせないまま。
うーん。。。
ふと、手にしている映画のパンフレットに、何気なく視線を落とす。
 
主演俳優の写真入りコメント。
栗色の長髪のその俳優は、ジーンズのポケットに手を入れて、斜に構えてカメラ目線。。。
筋骨逞しい体に、羽織った革ジャンは小さそうだった。
 
…ん?
 
革ジャン?
 
いいかも。
 
私の心の中で、今しがた見てきた主役俳優のファンタジックな演技と、リュミエール様の面影がシンクロした。
私は、慌てて踵をかえしショッピングセンターに飛びこんだ。
 
いつも、私の為に水のサクリアを使って下さるリュミエールさま。
私だって、お礼がしたいもの。
大好きな、リュミエールさまに。 
   
そうして、今私の手にはラッピングしたこげ茶色の革ジャンがある。
 
「リュミエールさま」
後姿のリュミエール様に、そっと声をかける。
リュミエール様はゆっくりとこちらに振り返った。
 
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