B型 のあなた。
 
リュミエール様のお誕生日が近づいてきた時に、私はこれを思いついてひとり、心浮き足だっていた。
普段は結構ずぼらでうっかりものの私だけれど、こと愛する人のお誕生日に関しては違う。
心がうきうきしてくる。何をあげようか?何が喜ぶか?
こんな、刺激に満ちた気分のなかで決めたもの。
うふふ。リュミエールさまに革ジャン。
一体、誰がこんなプレゼントを思い付くでしょう。
そう。
恐らくリュミエール様にこれをプレゼントする人は他には絶対居ない筈。
今までだってあの方がこれをもらった事…いいえ。着たことすら無い筈よ。
そんな贈り物を思い付いた自分に、思わず笑いがこみ上げてくる。リュミエール様は、最初驚くかも知れない。
でも、優しいあの方は、必ず着て下さる。しかも、すっごくカッコイイ筈。着心地はわたしの保証付だし♪
 
この贈り物を思い付いた時から、わたしはあれこれ計画を練っていた。どうせ渡すなら、何か効果的な演出をしたい。
さて。。。
一体どんな演出をしようかな。リュミエールさまがハッとするような…
  
 
「けっ!おめー、なにやってんだよ。」
遠く、上の方から声がする。。。
「?」
慌てて目を開けると、ゼフェル様の紅い瞳と目が合った。
 
。。。私ってば、寝てたみたい。。。
 
「オレじゃねえんだから、こんなトコで寝てんじゃねえよ。ま、ここは確かに寝るにゃあ最高の場所だよなぁ。」
そう。聖殿の中庭のテラス。
爽やかな風が吹きぬけ、日差しは柔らかく包み込む、まるで常春な場所。しかも、置いてあるロッキングチェア-の背もたれは大きくて、
後ろから見れば誰かが座っている事すら判らない。
ゼフェル様は、向かいのロッキングチェア-にどさりと体を沈めた。
「…もうすぐ3時のお茶の時間だぜ。ここで昼寝するなら午前中にするこったな。お茶の時間まで眠りこけてっとルヴァに見つかるぜ。」
ゼフェル様は、からかう様にそう言った。
私としては、ルヴァ様よりもリュミエール様に見つかりたくないな。
そう思いながら、ゼフェルさまと少しお喋りを楽しむ事にした。
ゼフェル様とは、なんとなく気が合うような気がする。一緒に居て楽なのだ。
血液型が同じな所為?
 
3時が近くなったようだ。こちらにやって来る、ルヴァさまとマルセルさまの姿が見える。
いま、私はゼフェルさまと育成の量と頻度の相関関係について、夢中で話していた。
日頃から、どんな育成が無駄なく楽に効果を発揮するのか、気になっていたのだ。
ゼフェルさまが、それについてこんなに詳しいとは思わなかった。
ふふ、日頃の疑問が解消しそう。。。
 
あきれ顔で、私達の話す内容を聞いていたランディーさまが、ふとゼフェルさまの皮手袋を手に取った。
「ゼフェル…これって便利なのかい?」
「ん?ああ、まあな。大きな工具を扱う時のすべり止めって奴だな。」
ゼフェルさまは、そう言うと、自分の手から皮手袋を片方外してわたしの手にはめた。
「細けー作業すっ時は、やっぱ素手がいちばんだけどよ。」
思わぬ皮手袋の、見た目と違う柔らかい手触りに、わたしは強く確信を得ていた。
 
…これなら、リュミエールさまもOKねっ!!
 

そうして、今私の手にはラッピングしたこげ茶色の革ジャンがある。
       
「リュミエールさま」
後姿のリュミエール様に、そっと声をかける。
リュミエール様はゆっくりとこちらに振り返った。
       
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