GOOD BYE 20st CENTURY
presented by ayarin
黄金色に輝く丘。
収穫の時期を遥か昔に終えて、その黄金期を誇るかのようにたなびく枯れ葉の波。
そんな光景を眺めながら、地の守護聖ルヴァは帰路を取るためきびすを返した。
 
「…あなたは。」
 
ルヴァの視線を捕らえたのは、懐かしい同朋の姿。
前緑の守護聖カティスが、微笑みながらルヴァの元に近寄った。
 
「貴方の事だ、そう急ぎはしないだろう?
 良かったら私に少し時間を割いてくれないか?」
 
「あー、貴方のお願いなら仕方ありませんね。」
 
そう応えると、ルヴァは嬉しそうにクスリと笑った。
小高い丘のてっぺんに、二人並んで腰を下ろす。
駈けぬける風がほほを過ぎて流れて行く。
 
「見ろよ。芳醇の季節を名残惜しいと嘆くかのような風景じゃないか。
 ひとつの時代が終わったんだな。。。なあ、ルヴァ。」
 
カティスは感慨深げにそう言いながら、そよそよと風を受けて流れる枯れた草木を眺めている。
ルヴァは、目ざとくカティスの左手に握られているビンに手を触れた。
 
「……これは。」
 
「あはは、見つかったか。お前と一緒に飲もうと思ってな。」
 
カティスがルヴァに差し出したのは、黄金色に輝く貴腐ワイン。
まったりと濃縮された太陽のエキスが輝いているように見える。
ポン、と軽快にコルクを抜くと、これまた手際良く持参のグラスにワインを注ぐ。
 
トットットット…
 
重そうな貴腐ワインが音を立てて注がれ、コップを黄金色に満たして行く。
ルヴァが、一口口に含んだ。
 
「甘いですね〜。なんだか贅沢な味がしますよー。」
 
「そうだろう?丁度干し葡萄のような熟成された味が出ているからな。貴腐を1樽に4プット。
 大いなる大地の恵みを沢山吸収した緑の産物を享受する。
 ・・・我々にこそ、似合うとは思わないか。」
 
カティスは、守護聖だった頃とは変わらぬ屈託の無さでワイングラスを傾けた。
 
「これは、20世紀最後の産物だ。幾つもの世紀をまたいで来た我々だが、感慨はひとしおだと思わないか。
 願わくば、この21世紀も変わらぬ大地と緑の恵みを享受する宇宙であるように。。。」
 
「ええ、まったくその通りですねえ。
 …私達が、頑張らないといけないのですね〜。」
 
カティスは、ルヴァのそのセリフには返事をせず、黙ってワイングラスを傾けた。
この、胸に妬けつくような貴腐ワインの芳醇さ。
さよなら、20世紀。
……私の時代よ。
 
そして、21世紀の輝かしい未来が、マルセルの明るいサクリアと共に宇宙に行き渡るように…。
ルヴァの大地のサクリアと溶け合って…。
 
カティスは、手元のグラスから、一気にワインを流し込んだ。
その様子を、ルヴァは静かに見守っていた…。
 

去り行く20世紀と新しい21世紀を寿ぐ、前緑の守護聖とルヴァ様のお話です。
なんだか、益々カティスの『時代の生き証人』的存在に磨きがかかって参りましたね(苦笑)
 
 
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