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Fetishism
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by ayarin
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朝もやのけむる森を走る。
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…こんなに気持ちがいい鍛錬なら、いくらでも喜んでやるものを。。。
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ヴィクトールは、毎朝聖地の森を走った。
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早朝マラソンは、軍人になる以前からの彼の毎朝の習慣だった。
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しかし、正直言って彼の生涯でこんなに楽しい習慣は今までなかったであろう。
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ヴィクトールはそのまま森を抜け、なだらかな坂道をゆっくりと駆け上がっていく。
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針のような音色が、朝もやの森を抜けて微かに響いてくる。
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聖地の、他の誰もがその音色を耳にした事はないであろう。
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自分だけの密やかな秘密。
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ヴィクトールは、足を速めた。彼の人に会いたくて。。。
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坂を登ると、森の湖が見渡せた。
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初めは偶然この道に迷い込んだ。それが運命のキッカケ…
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アイリッシュハープを抱えたリュミエールの姿を遠くに見た刹那、何故か、まるで見てはいけなかったものを見てしまったかの想いに囚われた。
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それほどまでに、意外な表情の…とても儚げな、リュミエールの姿。
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…何を思うのか。この聖地に於いて、守護聖を務めるお方が。
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最初はそう気を揉んだ。
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それほどまでに、普段の穏やかな表情からは程遠いリュミエールの様相。
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そして、知らぬ間にこうして毎朝見守る事が日課になっていた。
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普段、クラシカルで優しく繊細なハープを奏でるリュミエールが、人知れず、早朝の森で奏でるアイリッシュハープ。
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一心不乱に弾き出されるその音色は、ヴィクトールの心を掴んで離さない。
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異国の、哀愁漂う、胸に迫る物悲しさ…
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今日もただ遠くからやるせなく、調べに人知れず耳を傾け、姿を遠目に見守るのみ。
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○o。. ○o。. 〜゚・_・゚〜 .。o○ .。o○
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…毎夜毎夜、夢を見ます。
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…何故、このように夢はわたくしを呪縛するのでしょうか。
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…忘れるな、と。
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…そうです。忘れられません。この、故郷の調べを忘れる事など、とうていわたくしには出来ません。
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…オリヴィエ、夢の持つ力はこんなにも偉大なのですね…
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リュミエールは、大振りのハープをぎゅっと握り締めた。
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○o。. ○o。. 〜゚・_・゚〜 .。o○ .。o○
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その朝も、ヴィクトールはリュミエールの姿を遠くに見、調べに耳を傾けるため朝霧の立ち込める森の中を走り抜ける。
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絡み付く霧の湿気にむせそうになりながら、ようやくいつもの小高い丘から森の湖を見下ろす。
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始めは、湿度が高い所為で音が響いてこないのだと思った。
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でも、姿も無い。
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…リュミエール様?
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聖地において体調を崩したなどという事は有り得ない。
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きっと昨晩夜更かしでもして起きられないんだろう。。。
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ヴィクトールは、そう解釈してゆっくりと坂道を歩いて下る。
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無性にがっかりしている自分を、なんとか励ましながら…
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でも、何故だか心が己に叫ぶ。
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…森の湖に行ってみよ、と。
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その事を自覚した時、居ても立っても居られず彼は、大股に地面を蹴った。
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ガサッ
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森の湖に程近い所で、木の葉のざわめきにヴィクトールは思わず歩を止め、用心深く聞き耳を立てる。
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離れた茂みからは微かに人の気配がした。
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さっとヴィクトールの全身に緊張が走る。
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…リュミエール、様なのか?
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彼のそんな疑問に答えるかのように、小さな声がヴィクトールの耳に飛び込んだ。
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○o。. ○o。. 〜゚・_・゚〜 .。o○ .。o○
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夜遊びが、図らずも朝帰りになってしまった。
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オスカーは、人目につかないよう庭園を避けて森に分け入った。
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ジュリアス様の乗馬のコースを大きく迂回し、森の湖を通る道を選んでフラフラと歩を進める。
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…?
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オスカーは、酔いの抜けきらない頭ながらも、聞こえて来る微かな音にさっと身構えた。
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音は、湖の方から聞こえて来る。
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しかも、今まで聖地で聞いた事も無いような音だ。
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やおら警備隊長としての自覚が頭をもたげ、剣の柄に手を添えて、音を立てずに湖に近寄る。
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それは、例えて言うなら女性の悲鳴のような…
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スチールがぶつかり合って立てるような、そんな音。。。
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音源を突き止めそっと覗く。
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「…リュミエール。」
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音の主を見たとたん、オスカーは思わず飛び出していた。
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リュミエールは、ハープを弾く手を止めて驚いた様にオスカーを見上げる。
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「…何故、あなたが?」
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ハープの名手のリュミエール。
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彼の奏でるハープの音色は繊細で優雅。
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今までそう思っていた。こんな一面が潜んでいたなんて。。。
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〜☆〜以上、1部抜粋〜☆〜
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このお話の本編は、裏水研で読めます(~_~;)本編のやOい度は極めて軽い「注意喚起」程度ですが、裏水研はその名のとおり裏ページですからね。
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尚、裏水研へのお問い合わせは「水様研究所」へどうぞ^^
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また、うちの薔薇サイトでもごらんになれます(^-^;)
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チェスト 触りだけ見せる辺り、わたくし悪でしょうか…(^^ゞ