備前焼
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万能カップ
(ビアカップ) |
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両カップに金彩や銀彩が現われている。特に外から見えない底の色がいい |
備前焼は基本的には素焼きです。 |
右のカップはネコの祟りじゃ : ダーマネコ |
1.製造方法
@備前焼に用いる土は、岡山県備前市伊部(いんべ)周辺のヒヨセと呼ばれる田んぼの粘土を主として使用する。
Aヒヨセは粘性が低く、他産地の粘土を併用しないとロクロで形が作れない。数種類の土を混合して使用する。
Bヒヨセは、田の底2〜4m、厚さ10〜90cmの粘土層を冬期に掘り出した物。
C掘り出したヒヨセを野積みにして2〜3年間寝かせる。風雨に晒し、不純物を腐らせる。寝かせることによって、鉄分が除去される。
D寝かせた粘土を、天日でよく乾燥させる。
E粘土を細かく粉砕する。
F水を加えて粘土を溶かす。
G水に溶かした粘土をふるい機にかけて、小石・木くず等のキョウ雑物を取り除く。
H粘土を沈降させ、高濃度にし、練る。
Iロクロ/カタなどを用いて、成型する。
J約一ヵ月、乾燥させる。(生乾きの時になんらかの作業をするか否かについては不明)
K登り窯に詰める。
L2〜3日かけてゆっくりと窯の中の温度を上げ(300℃)、水分を飛ばす。
M窯の容量で異なるが、15〜30日間、1200℃前後で焼成する。燃料は赤松。
N10〜20日かけて窯の温度を常温まで低下させる。
O窯から取り出す。
2. 焼成時に模様を付ける方法(窯変)
”うわぐすり”をかけないで、良質の陶土をじっくり焼き締めるのが備前焼。
- 灰かぶり
登り窯の焚き口の近くの床で、炭に埋めて焼成したもの。床に接した面には自然の桟切り(下記項目c.参照)ができ、上の面にはブツブツ状に熔融した灰がこびりつく。灰かぶりは、ひと窯焚いてほんの数点しかできない。
- 胡麻(ゴマ)
赤松の木の灰が素地に降りかかってできる模様。窯の内の温度差で灰の溶け具合が異なり「流れ胡麻」「カセ胡麻」「黒胡麻」等数種のものがある。胡麻の定着には少なくとも一週間以上焚き続ける。
- 桟切(サンギリ;還元焼成)
窯の隅や、器物の陰など、直接に炎や灰の当たらない場所でできる模様。人工的には、炭を投げ込み、焼き物を炭で埋め、燃焼させることによって、還元状況にして焼成する(炎が当たる場所で焼成するのではなく、炎の中で焼成する)。金彩や銀彩・灰色などを呈する。
- 緋襷(ひだすき;火襷とも書く)
素地に稲藁を巻いて焼成すると、藁の跡が緋色の筋となって発色。登り窯では薪の炎を遮断して焼かなければならないので、以前は貴重な焼けのひとつだった。今は、ガス窯・電気窯で、鮮やかな緋襷が作り出せる。
- ころがし
横に寝させて焼くことにより多彩な窯変が起こる。
- 牡丹(ぼた)
ぼた餅のような形の焼き物を焼成しようしている皿などの上に置く。炎が直接当たらないところに丸い緋が出来たりする。
註 : 上記の説明文で、”灰が溶ける”という表現が出てきますが、私が納得している単語ではありません。 備前焼の説明文に出てくる単語です。”灰”の成分がどういうものか、何処にも書いていないのですが、SiO2/CaCO3/CaO/NaClといったものと想像します。一般に、無機物の酸化物の融点は2000℃以上であり、備前焼の焼成温度である1200℃で熔融するものではありません。SiO2でも融点はたしか2000℃以上です。灰が溶けるのでしょうか? 可能性があるのはSiO2です。結晶質の純粋なSiO2ですと1200℃前後では溶けませんが、非晶質のSiO2は1200℃で溶けます。ソーダガラス/鉛ガラスと呼ばれるものです。”灰が溶ける”とは、灰の中のガラス成分が熔融することと思います。
3.備前焼がいいと言われている巷の話
- 花を生けると、水が腐りにくい為に花が長持ちする。
← 水温がガラスや陶器に比べて上昇しないため、新鮮さを保つという説あり。 ∵H2Oが蒸発しうる表面積が大きいため。
- ビールの味がまろやかになる。泡がクリーム状になり、ビールの泡まで旨くなる。
- コーヒーを入れて飲むと、マイルドになる。
- お茶が冷めにくい。
- 壷は年が経つにつれて艶が出てくる。
- 日本酒に丸みが出る。 但し、10分間ビアコップに貯えておいた酒。
4. 歴史
- 弥生時代〜奈良時代
- 備前焼は、土師器(はじき)と須恵器の技法を受け継ぐ古い形態を残す焼き物(素焼き)。
- 土師器は、弥生式土器の一種で、職能集団である土師部が造った土器。約900℃で焼成され、一般的な釉(うわぐすり)を使用しない焼き物。
- 須恵器は、中国で紀元前4000年頃(中国龍山文化期)に発達した灰陶や黒陶の技術が、5世紀に新羅・百済を経由して日本にもたらされた。半地上式の穴窯で、1000〜1200℃の高温で焼かれる陶器。
- 古墳時代後期(5世紀末〜6世紀初)には、世帯共同体の家父長層とその家族を葬る墳墓が無数に造られるようになった。それに伴い、古墳文化の担い手であった土師器・須恵器の職能集団が全国に拡散した。備前地方に土師器・須恵器の工人達が居住するようになったのはこの時期から。山陽地域は古墳の密集地。
- 奈良時代、中央集権制が強まり、地方の群集墳は衰退した。
- この時代、唐から彩釉(さいゆう)陶器が日本に輸入されたが、国内生産は行われなかった。庶民・官人・貴族の器は、旧態の須恵器・土師器が使われた。須恵器は主に液体を入れたり、物を盛ったりする器に、土師器はものを煮炊きする道具に用いられた。
- 奈良時代〜平安時代
- 土師器は、一般庶民の厨房用具として使われた。神祭用具や使い捨てのかわらけなどとして現在でも使われている。
- 須恵器は、官庁・貴族・寺院などで使用されたが、広く一般には普及しなかった。こうした状況の中で、須恵器の窯は二・三の例外を除いてなくなった。
- 残ったのは、珠洲窯(能登半島先端)、 亀山窯(岡山倉敷児島)。備前焼は、例外的な中世窯のひとつが発展した。
- 平安時代初期の「延喜式」の記述によると、備前須恵器は中央官庁への貢納品で、種類・数量・いずれも、全国第一位を占めていた。
- 一方、東海・近畿地方で、原初的な施釉陶器が生まれた。こうした動きのなかで、中世の六古窯、瀬戸・伊賀・信楽・常滑・越前などが生まれてくることになる。六古窯のもうひとつ備前は、これら東海・近畿の須恵の後継とは様相を異にし、無釉陶の特性をそのまゝ維持継承していく。
- 以降、備前焼は無釉陶の特性をそのまゝ維持継承していく。そして、茶道が武士の世でもてはやされた安土桃山時代に、わび/さびを表現する器として、注目を浴びました。更に、江戸中期、隆盛の時代を迎えます。
明治維新に、日本の文化は否定され、備前焼は冬の時代を迎えます。しかし、備前焼のともし火は消えることなく継承され、現在に至りました。
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独り言
- 10年近く使っていた茶碗が欠けました。直径15cm×深さ5cmの茶漬け用茶碗。
- 素焼きの茶碗がどのように機能するか実感するために、備前焼の茶碗を探す。
- 千葉市で備前焼を取扱っているのは下記の店と判り、探していますが、今のところなし。
- 四街道・衆楽館 JR四街道の西、徒歩5分
- みつわ台病院前・陶芸社
- 小倉台・ヤマト モノレール小倉台駅の南、徒歩5分強
- 植草 セントラルプラザの北東隣り
- 千葉そごうにはあるようですが、小売店でじっくり眺める/話すのが好きなので、見ていません。
- 次は、文化の町、市川で探そう。 ← あったが、欲しいものはなかった。葛飾八幡宮入り口の備前焼専門店は閉まっていた。
- 1/16、12:00頃、衆楽館で万能カップを買った。一般にはビアジョッキと言うと思いますが、私はこれで何でも飲む。
- 現在はビールを月に1杯程度しか飲みませんが、久しぶりにスーパードライを約15℃で飲みました。かみさんは、私が注いだ残りのビールを缶から飲んだら、まずいと言っていました。私は、約180ccのビールを、備前焼カップで約90分かけて飲みました。旨みがありました。気が抜けると感じることはありませんでした。ただ、スーパードライは時間が経つと泡が消える。もう少しコクがあるものの方がいいだろうか。10℃以上のビールを飲みたい。冷たいビールは健康に悪く、邪道と考えます。
- 水が旨い。・・・ような気がする。器がいいからか。水をコップに入れ、数時間かけて飲みます。ガラスの場合、生臭さが出てきますが、備前焼の場合、生臭くなりません(普通の人は気にしないかもしれませんが)。このごろ、水の味にうるさくなっています。
- 今回買ったカップの模様は灰釉だろう。窯に入れる前に藁で十文字に縛り,カップの上部は何かを巻いた。藁中のプラントオパールが溶融し,線状の模様を作り,上部に巻きつけたものに灰を入れて、灰釉や赤褐色の発色を期待したのだろう。
- 私は、赤色と黒褐色の配色が面白いと思って買ったのに。家でよく見てみると、色抜けでデブネコの姿が現れています。変なカップだ。命名されてしまった「デブネコカップ」(「ダ-マネコ」は標準語では判らないか?)。
- ヤマトには、還元炎で焼成した素焼きの湯呑がありました。縄文土器と機構的には同じ製造方法のもの。喉から手が出そうだったが、¥6,000という価格と店のオヤジさんと意見が合わなかったので、ツバを飲み込んで帰宅。
- しかし、焼き物関係の人は難しい。2回ぶつかってしまった。1ヶ何万円では済まない物を取扱っているから、貧乏の素人が何を言っているかと思っているのだろう。しかし、私はくじけない。縄文式土器を知るために、備前焼を調べることは重要。ビアコップが欠けたり、割れたら、断層(Z軸方向)の構造を見よう。
- 備前焼は素焼きなのに水が漏れない。土に特徴あり。土は田んぼから採取する。土が枯渇するところだったが,新幹線工事で新しい土が見つかった。