■池田元久 略 歴

1940年 12月20日に神奈川県で生まれ
1959年 神奈川県立湘南高校卒業
1964年 早稲田大学政治経済学部卒業
1964年 NHKに放送記者として入社
1990年 衆議院総選挙にて初当選
    (旧神奈川4区)
1994年 神奈川大学経営学部国際経営学科
    講師
2006年 現在当選5回
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財務金融委員会・会議録(部分)
平成20年3月25日(火曜日)
    午後1時31分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君
   理事 大野 功統君 理事 後藤田正純君
   理事 田中 和徳君 理事 野田 聖子君
   理事 中川 正春君 理事 松野 頼久君
   理事 石井 啓一君
       石原 宏高君    小川 友一君
       越智 隆雄君    木原   稔君
       佐藤ゆかり君     鈴木 馨祐君
       関   芳弘君    谷本 龍哉君
       とかしきなおみ君  土井 真樹君
       中根 一幸君    萩山 教嚴君
       林田   彪君    原田 憲治君
       広津 素子君    松本 洋平君
       宮下 一郎君    盛山 正仁君
       山本 有二君    池田 元久君
       小沢 鋭仁君    大畠 章宏君
       笹木 竜三君    階     猛君
       下条 みつ君    鈴木 克昌君
       古本伸一郎君    大口 善徳君
       佐々木憲昭君    野呂田芳成君
       中村喜四郎君

    …………………………………

   国務大臣
   (金融担当)          渡辺 喜美君
   内閣府副大臣        山本 明彦君
   財務大臣政務官      宮下 一郎君

   参考人
   (日本銀行副総裁)     白川 方明君
   (日本銀行副総裁)     西村 清彦君
   (日本銀行理事)        水野   創君

   財務金融委員会専門員  首藤 忠則君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件
 金融に関する件

    ―――――――――――――
          (中略)
    ―――――――――――――

原田委員長 池田元久君。

池田委員 民主党の池田元久でございます。

 まず、白川さんと西村さん、御就任おめでとうございます。国民のために重要な職責をしっかりと果たされるよう、お祈りをしたいと思います。

 まず、総裁不在という事態の中で就任されたお二人に就任の抱負をお尋ねしたいと思います。端的にお答えをいただければ幸いです。

白川参考人 お答えします。

 日本銀行の使命は、これは物価の安定と信用秩序の維持でございます。私は日本銀行の副総裁として、この日本銀行に課せられた使命を達成するために最大限の努力をするということだと思います。

 あわせて、私の場合、現在は総裁が不在という状況でございますので、総裁がいない間、しっかりと日本銀行の機能が低下しないようにやっていくということが私に課せられた使命だというふうに認識しております。

 以上でございます。

    〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕

西村参考人 お答えさせていただきます。

 白川副総裁と気持ちを全く共有いたしております。

 サブプライム住宅ローンに端を発した国際金融市場の動揺、原材料高を背景とする中小企業の収益環境の悪化、ガソリン、食料品の値上がり、それから米国経済の景気減速傾向の強まりなど、日本経済を取り巻く環境は大変な時期にあります。そうした中で、総裁の空席という異例の事態での出発となったわけですが、私の持つ力をすべて注いで、白川副総裁と力を合わせて、しっかりと職務を遂行していきたいというふうに考えております。よろしくお願いします。

池田委員 白川さんにお尋ねしますが、お二人の仕事の割り振りは当面どうなっているんでしょうか。

白川参考人 お答えいたします。

 私、副総裁という立場と、それから総裁が不在の間代行を務めておるということでございますけれども、まず、現在総裁が不在ということで、私が総裁の代行という役割を果たしております。あわせて、政策委員会の議長という立場を果たしております。したがいまして、例えば、本日は定例の政策委員会がございましたけれども、私は政策委員会の議長として議事をつかさどりました。

 それから、業務の執行という面でございますけれども、これは副総裁は総裁を補佐すると。今回の場合、たまたまその総裁が不在ということでございますけれども、業務執行に当たりましては、この二人の副総裁が共同して当たっているということでございます。

 あと、個別の担当局ということでございますけれども、従来から副総裁は基本的には局は担当せずに、ただ、局の性格上、個別の理事が担当するのは必ずしも適切ではないと思われる局室、具体的に言えば検査室と金融研究所、これは副総裁が直接担当をしております。現在の場合ですと、私は検査室、それから西村副総裁は金融研究所を担当しております。

 しかし、副総裁としては、日本銀行全体の仕事をきっちり見てこの遂行をしている、そういうふうな体制になっております。

 以上でございます。

池田委員 新日銀法の施行直後に審議委員を務めた中原伸之さん、御存じだと思いますが、東亜燃料工業の社長、会長を務めた中原さんは、著作の中でこう言っています。

 政策委員会の構成も、見直すべきだと思います。総裁はともかく、副総裁の二人制は機能しているとは思いません。一人で十分ではないでしょうか。このように言い切っています。

 白川さん、どう考えますか。

白川参考人 現在の日本銀行法の規定でございますけれども、日銀法の第二十一条には、総裁一人、副総裁二人を置くというふうに定められております。

 副総裁が二人とされていますその背景、理由でございますけれども、現在の日銀法を制定するときにいろいろな議論がなされましたけれども、当時の金融制度調査会の答申、この答申には次のような表現がございます。これは、「副総裁は、現在、一名であるが、国際会議等への総裁・副総裁クラスの出席が求められる機会が増大していること等にかんがみ、副総裁は、二名に増員することが適当と考えられる。」というふうに書かれております。

 最終的に、こうした議論も踏まえた上で、現在の日銀法ができているというふうに理解しております。

池田委員 日銀法の改正に私も多少かかわりはあるんですが、改正前は総裁一人、副総裁一人、中原さんは十分機能すると。しかも、副総裁を内外それぞれ分ける、そういう話もやっていらっしゃらないようでありまして、今の総裁代行と副総裁一人で十分に実務はできる、こう評価していいと思うんですが、いかがでしょうか。

白川参考人 私の経験に基づく発言ということになりますと、私、きょうが就任三日目でございます。したがいまして、自分の体験に裏づけられて、今、委員の御質問に対してきっちりと答えるという時間的なものはございません。

 ただ私、従来、一年八カ月前まで日本銀行の理事を務めておりまして、そのときに総裁、副総裁の仕事を間近で見ていたときの経験からしますと、副総裁が二人いらっしゃるという体制のもとで、いろいろな分業をなさっているというふうに思いました。そういう意味で、将来法律を改正するときにいろいろな議論がもちろんあると思いますけれども、現状では、総裁一人、副総裁二人の体制は、私が勤務していたころは非常にうまく機能していたなというふうに思います。

 その上で、どういうふうに運用していくかということは、これは常に総裁、副総裁、それからボードメンバーがしっかり考えて運用すべき問題だというふうに理解しています。

池田委員 日銀といえども、組織のスリム化といいますか、そういう視点はやはり大変重要だと私は思います、しかもベテランの中原さんがおっしゃるわけですから。

 その中原さんの著書を、ついでと言っては恐縮ですが、少し引用しますが、「今や「世界の中央銀行」化しているFRBと比べても、日銀の幹部の報酬はかなり高い。FRB議長は年収18万3500ドル、副議長を含む他のメンバーは16万5200ドル」、最近はほんのわずか上がっているようですが、「これに対して、日銀総裁は、旧法時代は5000万円以上でしたが、新日銀法施行時で約4000万円となり、その後少し下がって現在は3600万円ほど。二人いる副総裁はそれぞれ2800万円クラス、審議委員が2700万円ほど。こうした報酬水準が、金融政策運営の実態や、政府の財政赤字状況などを踏まえて、妥当かどうか見直しの議論が必要です。」ちょっと長いですが、中原さんの発言を引用いたしました。

 中原さんがこのように述べているわけですが、後で低金利の影響を取り上げますが、低金利のしわ寄せを受けた庶民からすれば、アメリカの二倍近い日銀総裁の報酬に目をむくかもしれません。ここで取り上げたのは、財界出身で、実際に審議委員を務めたことのある中原さんの発言ですから、また重みがあると思いますが、どのように考えますか。

白川参考人 お答えをいたします。

 日本銀行役員の給与につきましては、外部の有識者による諮問委員会の答申を受けて策定しました役員の給与等の支給の基準に基づきまして、毎年、政策委員会で決定いたしております。

 具体的には、第一に、必要な人材を確保する観点から、民間企業における処遇の実情を勘案するとともに、第二として、総裁の給与につきましては、特別職国家公務員の最高給与を上回らないようにこれを定め、また、総裁以外の役員の給与につきましては、総裁との均衡を考慮して決定するという枠組みとなっております。

 日本銀行における役職員給与決定の考え方は以上のとおりでございますけれども、いずれにしましても、私としては、給与に見合った職責をしっかり果たしていくということが責務だというふうに考えております。

 それから、今委員御指摘の海外の中央銀行の役員の給与との比較でございます。

 各国、状況はまちまちでございますから、もちろん単純な数字の比較に意味があるというふうには私は思いませんけれども、しかし、事実として申し上げますと、例えば昨年、これはもちろん為替レートの影響もございますけれども、日本銀行の総裁は約3578万、それからFRBの議長は、委員御指摘のとおり日本銀行よりも低くて、これは2008年でございますけれども2238万。しかし、ニューヨーク連銀あるいは欧州中央銀行、イングランド銀行、これはいずれも日本銀行の総裁よりも給与はかなり高い。

 日本銀行の給与が少ないと言っているわけではもちろんございませんけれども、いろいろ比較してみますと、いろいろな国が存在しているということで申し上げた次第でございます。

池田委員 これからよく考えていただきたいと思います。

 次に、お二人の就任に合わせて残念なことが起きました。内部資料の流出問題であります。金融政策等について私は議論したかったんですが、先週末、日銀松江支店の検査資料が流出し、金融機関が破綻懸念先とした企業の名前が明るみに出たという大変な事態が起きたわけです。事実の経緯を聞きたいと思います。

水野参考人 事実関係の御質問でございますから、私からお答えさせていただきます。

 3月21日の午前10時半ごろ、私どもの松江支店に対しまして、インターネット上に松江支店のものと思われる資料が掲載されている旨の連絡が匿名でございました。松江支店で内容を確認しましたところ、松江支店の職務関係資料であるということが判明いたしました。掲載情報の中には、特定の金融機関等に関する情報が含まれておりました。

 これらの金融機関等に対しましては、個別に事情を説明させていただき、謝罪いたしました。また、情報の掲載が確認されたサイトに対しましては、情報の削除依頼を行いました。これらを行いました後、22日土曜日の12時から対外公表をさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

池田委員 その私物のパソコンに入っていた情報の内容と数はどうですか。それから、流出した資料の内容と数もあわせておっしゃっていただきたいと思います。

水野参考人 お答えいたします。

 パソコンの中に入っておりました金融機関等の情報のファイルの数でいいますと、39でございます。このうち、流出を確認したものが6つでございます。

 以上でございます。

池田委員 大事なところが欠けていますよ。その39のファイルのうち、要注意としたファイルが15もあったということであります。

 白川代行、この事実を知ったのはいつですか。

白川参考人 私、3月21日に国会内で総理から辞令をいただきまして、国会のあいさつを終えまして、その後銀行に戻りまして、これがお昼過ぎでございました。それで、お昼を過ぎましてすぐ、総務人事、こういう案件を担当します局の局長から報告を受けまして、私の方からは、それは直ちに調べて、その上で公表をするようにというふうに指示をいたしました。

池田委員 同じようなケースが去年もあったんです。日銀本店で去年11月です。日銀本店の職員が、同様に、国庫出納業務を委託している金融機関の顧客の名前などの入った資料を持ち出して、上野駅ですか、かばんごと盗まれてしまったということが起きている。このとき、顧客の氏名、住所などのほか、信用情報も含まれていなかったのかどうか、端的にお尋ねをしたいと思います。

水野参考人 お答えいたします。

 個人の名前と金融機関の名前等が含まれておりました。

池田委員 こういった内部資料の持ち出し等について、日銀の内部ではどういうふうな定めになっているんですか。

水野参考人 お答えいたします。

 内部の資料につきましては、重要度に応じて取り扱いの区分が定められておりまして、機密度の高いものについては、内部で格納して保管するようにというふうに定めているところでございます。

池田委員 そのルールの要点だけ言ってくださいよ、これは内部資料の持ち出しですから。

水野参考人 お答えいたします。

 公文につきましては、専用のキャビネット等により公文以外のものと区別の上保管する、それから機密資料等を保管する場合には、キャビネット等に格納の上施錠する、そういうふうに定められております。

池田委員 今は職員の資料の持ち出しの話ですからね。

 その前に、こういう資料の持ち出しが続くのはどういうことですか、原因はどこにあるんですか、お尋ねをしたい。

水野参考人 お答えいたします。

 個々のケースについては、それぞれ事情を調査して確認しないといけない面があると思いますけれども、一般的に全体を通して申しますと、やはり個々の職員が、よりじっくり考えて仕事をしたいとかよりよい資料をつくりたいとか、そういうようなことで自宅に持ち帰って仕事をするということが行われているということではないかと考えております。

 以上です。

池田委員 全然とんちんかんですね。自宅持ち出しの理由を説明するだけで、どうしてそういう事態を防ぐかという観点はない。非常に残念な、ちょっとレベルを考えざるを得ない答弁で、びっくりしました。そういうところが、コンプライアンス担当の理事さんがそういう考えじゃちょっとお寒いなと私は率直に思います。

 日銀のルールというのをほんのちょっとだけ調べてみたんです。そうしたら、ルールといっても、日銀では、パーソナルコンピュータ等管理事務取扱要領。取扱要領ですよ。規則でも何でもないですよ、取扱要領に規定されているだけです。そして、資料の持ち出しは原則禁止となっているものの、上司が認めれば、外部記憶媒体持出届を出せば資料を持ち出せるということになっているわけです。

 私は、少なくとも融資や信用情報にかかわる資料は明確に持ち出しを禁止すべきだと思いますが、いかがでしょうか。白川さんにお尋ねしたい。

白川参考人 私、これから総裁代行としまして、コンプライアンスも含めまして、日本銀行の体制をもう一回しっかり点検して、今委員から御指摘の点も含めまして改めて検討して、その上で日本銀行としての職務をしっかり遂行し、かつ、こういうコンプライアンスの問題が生じない体制は何であるかということをもう一回検討したいというふうに思っております。その意味で、きょうこの席で具体的にお答え申し上げることはできませんけれども、その点は私ども、これを大きな責任だというふうに思って、しっかり取り組んでまいります。

池田委員 また、06年3月に日銀の総務人事局長が全所属長に出した通知によりますと、私物のパソコンを業務に使わないようお願いしますとしています。

 そして、ちょっと長いんですが、ウィニー等セキュリティー上危険なソフトをインストールしたパソコンがウイルスに感染した場合、新たに作業するファイルばかりではなく、過去にハードディスクに保存したファイルも広く流出してしまうおそれがある。したがって、過去、私物パソコンで作業を行った業務上のファイルがハードディスクに残存していないか、速やかに悉皆的な自己調査を実施し、万一、該当ファイルが確認された場合は、直ちに消去してくださいと呼びかけているわけですよ。

 これは危ない話ですね。これでは、松江に限らず、情報流出がこれからも起こるおそれがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

白川参考人 まず、ちょっと前後いたしましてまことに恐縮でございますけれども、今回、松江支店での内部資料の流出事故を発生させたことにつきまして、大変御迷惑をおかけしまして、関係者の皆様と国民の皆様に深くおわびを申し上げたいというふうに思います。

 多少説明が前後いたしますけれども、代行という立場で、今の委員の御質問も含めまして、改めてお答えしたいと思います。

 今回流出しました資料は、これは、金融機関の過去の決算分析に関する資料と日本銀行が金融機関に委嘱しています国庫国債事務の事務検査の資料の二種類でございますけれども、このうち決算分析に関する資料には、金融機関の融資先である企業、個人に関する情報が含まれておりました。

 こうした事態が発生した原因、背景や責任の所在につきましては、現在既に調査を行っていますけれども、今後さらに詳細に調査してまいります。

 資料流出の経緯としては、支店職員が内部資料の記録されたフロッピーディスクを無許可で持ち帰り、自宅の私物パソコンで作業を行っていたところ、そのパソコンにインストールされていましたファイル交換ソフトを経由してインターネット上に情報が流出したというふうに見ております。

 私どもとしましては、職務関連資料の無許可での持ち出し、私物パソコンでの業務処理及びファイル交換ソフトのインストールのいずれについても行わないように行内で周知し、役職員を指導してきました。今回、こうした内部ルールが守られず、情報流出事故を引き起こしてしまったことは極めて遺憾であり、事態を深刻に受けとめております。

 今後は、役職員に対しまして、情報管理の重要性や機密情報が万一流出した場合の影響の大きさを改めて認識させるとともに、情報管理体制の見直しや執務環境の整備等について検討し、今後このような事態を二度と引き起こさないように万全の対策を講じてまいる所存でございます。

 以上でございます。

池田委員 ちょっと調べてみると、これに関しては取扱要領というのと所属長への通知、それで、所属長への通知はお願いしますモードですよ。何々してください、お願いします。いいですね、いい会社ですね、それでうまくいけば。ですから、これは私が言わなくても、明瞭で厳正な規則を新たにつくるべきであると私は思います。

 それからもう一点、今度の問題について調査をするということですから、責任を明確にすべきだと思います。

 以上、二点について、端的にお尋ねします。

白川参考人 現在既に調査を行っておりますけれども、今後早急にさらに詳細な調査を行いまして、その結果を踏まえまして、厳正に対処したいというふうに考えております。

池田委員 時間が余りありませんが、低金利の家計への影響について若干取り上げたいと思います。

 総裁交代の時期に当たりまして、日銀の金融政策を検証する必要があると私は思います。きょうは時間がありませんので、多くは申し上げられません。低金利の家計への影響を取り上げたいと思います。

 まず、国民生活に身近な預貯金の金利でありますが、我が国の預金金利は、95年に公定歩合が0.5%に引き下げられたことを契機に、超低金利時代に突入しました。その後、量的緩和政策を含めた金融緩和政策によって家計はどのような影響を受けたか、見てみたいと思います。

 お手元に資料が行っていると思います。きのう日銀に頼んでまとめてもらったものであります。最新のデータですが、家計の利子の年間受取額は、「受取」の一番左の欄でございますが、91年の三38.9兆円から年々減り続け、06年には4.6兆円と、9分の1まで減ってしまいました。

 そして、資料の受け取り欄の右側、「93年との対比」という欄をちょっと見ていただきたいんですが、93年の利子受取額がその後も継続したと仮定した場合、その累計は、一番下、220兆9000億円となり、この間家計から220兆9000億円もの利子が失われたことになると思います。もっと金利の高かった91年との対比では、累計で364兆4000億円の利子が失われた計算になります。

 こうした計算でいいと思うんですが、確認をしていただければと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 金利の変更が家計部門に対してどのような影響を与えるかというときに、経済全体はいろいろな複雑な相互依存関係がございますから、金利の部分、受取利子あるいは支払い利子というその部分だけに焦点を合わせて分析することはできませんけれども、家計が受け取った利子所得は幾らかということでありますと、一定の前提を置きますとこういう計算になる。

 ただし、経済全体への影響を評価するときには、このことが持つ意味もまた評価する必要があるというふうに思います。

池田委員 数字の確認をしたいと思ったわけであります。

 福井前総裁は、金融政策の評価は、その家計の利子所得の減少という面だけではなく、一方で借入金金利の低下の影響などを含め総合的に判断する必要があると言いました。しからば、家計について、借入金金利の低下の影響はどうなのか、それをこの資料で見ていきたいと思います。

 資料の右半分の「支払」の下の欄を見ていただきたいと思います。家計の利子の支払い額は、91年の22.9兆円から、06年には13.7兆円と減っています。少しずつ減っているわけですね。支払い利子は、受取利子と違って減り方は少なく、この期間、半分も減らなかったことになります。

 そして、資料では、右側の支払い欄の「93年との対比」に出ていますが、93年の借入金の利子の支払いがその後もそのまま続くと仮定しますと、累計で53.9兆円、利子を余計に支払わなければならなかった勘定になると思います。

 以上でよいと思うんですが、この点、確認をしていただければと思います。

白川参考人 数字についてのお問い合わせだというふうに理解いたしまして、一定の前提を置いて計算しますと、この数字自体はこういうふうに計算をされるというふうに思います。

池田委員 それでは、トータルで家計全体の利子収入の収支はどうか。低金利により失われた受取利子から同じく低金利により軽くなった支払い利子を引くと、93年対比で見ますと、220兆9000億円から53兆9000億円を引いて、差し引き167兆円の利子が失われた計算になります。同様に、91年との対比では、差し引き273兆円の利子が失われた勘定です。

 百六十七兆円と一口で言いますが、日本のGDPの三分の一。個人金融資産が最近発表されましたが、一年前より少し目減りして、昨年末で1544兆8000億円ということでありますが、その個人金融資産の10%以上がなくなった計算になると私は思います。

 いつも受取利子の方でよく議論するんですが、きょうは支払った利子の方も含めて議論をしておりますが、これはやはり金融政策の担当者、当事者として当然考えていらっしゃると思います。この辺に対する感想といいますか感覚を聞きたいと思います。

白川参考人 これまで数字についてお答えいたしましたけれども、今感覚ということで御質問がございましたので、感覚といいますか、私自身この問題についてどういうふうに考えているかということをお話ししたいと思います。

 これは、釈迦に説法でございますけれども、金融政策あるいは金利の変更といいますのは、債権者と債務者、あるいは輸出企業と輸入企業、それぞれ立場によって全く相異なる影響を及ぼしてくるものでございます。そうした異なる影響を及ぼすものでございますけれども、中央銀行といたしましては、常に物価安定のもとで経済が持続的に成長をしていく、そういう姿を念頭に置きながら金融政策を運営していくということになってまいります。異なる影響を与えていくことにつきましては、大変痛みをいつも負いながらも、しかし、最終的には経済全体のバランスを考えていく。

 それでは、経済全体のバランスということはどういうことなのかという御質問になると思いますけれども、先ほど、金利の受取収入と支払い収入、その差し引きで見て、ネットの数字はこうであるという御説明がございました。これはこれで、一つの重く受けとめるべき数字でございます。

 ただ一方で、この十数年間を振り返ってみますと、日本の経済、金融は、バブルが崩壊して、金融システムが崩壊の危機に瀕していたというふうに私は思います。もちろん、そうした事態それ自体を防ぐように努力をしないといけないわけでございますけれども、現実に金融システムが大変な危機に直面していた。そういう中で金融システムが不安定になっていくとなりますと、これは本格的なデフレスパイラル。各国、アメリカの1930年代もそうですし、日本の金融恐慌もそうでしたけれども、金融システム自体が動揺してしまうと、これは経済自体が根っこから大きな動揺を来します。

 日本銀行としましては、この金融システムの安定をしっかり維持していく必要があるというふうに感じました。これは、具体的な中央銀行のアクションとしましては、流動性を潤沢に供給していく。そのことの結果として金利も大きく低下をしていった。その結果として金利についてもこういうバランスになりましたけれども、しかし、この潤沢な流動性の供給それから金利の低下ということは、第一には金融システムの安定、それから第二には、企業部門の調整を円滑にやることを通じて最終的には国民の、家計の雇用をしっかり確保していくということを強く念じながらやってきた政策でございます。

 長くなって恐縮でございます。

池田委員 感覚をと申し上げたんですから、痛みという言葉も使われたので、ちょっと安心しました。何か、昔、経済学者が言ったようでありますが、やはりウオームハートというものも大変大事ですから、この痛みがわからないとやはり金融政策の当事者として資格がないと私は思いますよ。そういう感覚を僕は聞いたわけです。

 それで、92年から03年度の全国銀行の預金貸し出しの利ざやの累計額が96兆円、また同時期の全国銀行の不良債権処理額は100兆円余り。我々も金融再生法で大きなマネーセンターバンクの二つの銀行の処理をやったわけですが、銀行の利ざやはそのまま不良債権の処理に使われたと言ってよいだろうと思います。ちょっとその辺、コメントしていただきたい。

白川参考人 今、私の手元に正確な数字があるわけではございませんけれども、大きな感覚としましては委員の御指摘のとおりだというふうに理解しております。

池田委員 この低金利は銀行を助けたというのは紛れもない事実なんですね。しかし同時に、速水さんが前によく言っていたんですけれども、超低金利、金融緩和は重い債務を抱える従来型の古い産業を助けた。我々庶民には利子所得の減少を通じて家計に犠牲を強いながら、改革とは裏腹に従来型の産業構造を延命させたのではないかと思いますが、いかがですか。

白川参考人 若干繰り返しになるかもしれませんけれども、90年以降の日本の経済を考えてみますと、大変大きな不良債権を抱えておりました。この不良債権を円滑に秩序立てて処理をしていきませんと、これは経済全体が大混乱になってまいります。その結果、そのもとで行われました低金利がどういう作用を果たしたかということでございますけれども、不良債権が大きく発生したその時点での産業構造それ自体が、今議員の使われた言葉ですと従来型の産業でございます。そういう意味では、結果として、そうした産業も含めて、しかし全体として秩序立てて処理をしていくためにこれは必要な政策であったというふうに認識をしております。

 その間の痛みはもちろん認識しておりますけれども、しかし、最終的に経済全体が大混乱になってきますとその結末は国民に及ぶものだというように思って、この政策を遂行してまいりました。

池田委員 最後に、時間がないのですけれども、デフレから脱却できたかどうかお尋ねをしたいと思います。

 福井前総裁は就任当初は、日本銀行の持てる知恵と力をフルに発揮して、日本経済の持続的成長軌道への復帰とデフレ克服のために、中央銀行として最大限の貢献を果たしてまいる決意ですと述べたり、翌年春には、日本銀行はデフレから日本経済を脱却させる、この一点に絞って懸命の努力を継続中ですと答弁して、力を込めてデフレ脱却の決意を述べていたんです。

 しかし、その後、06年3月、量的緩和政策解除の記者会見、節目のときに、デフレについてはみずから言及しなかった。質問に答えてこう言ったんですよ。デフレは論ずる人によって随分観点が違う、これを一律に論じることは難しい。話をまぜ返しちゃったわけです。政府の方は、その直後にデフレの定義を発表いたしました。

 そういうふうに態度を変えたんですが、その前に、まずデフレから脱却できたかどうか、白川さんにお考えを聞きたいと思います。

白川参考人 先ほどの福井前総裁の発言と若干重なる部分がございますけれども、しかし、デフレという言葉は使っている人によって意味が随分異なっているというのが実態だと思います。一般物価の下落、資産価格の下落、それから経済活動の落ち込み、いろいろな意味で使われているというふうに思います。また、どの程度の幅や期間の物価指数の下落をもってデフレと呼ぶのか、これもまた人によって定義が違っているというふうに思います。

 ただ、デフレを心配したときの問題意識を今思い起こしてみますと、これは、物価の下落が景気の悪化をもたらし、その景気の悪化がさらに物価の下落をもたらす、そういう経済活動の大きな収縮、これをよくデフレスパイラルと呼んでいますけれども、そうした意味でのデフレの危険といいますかデフレスパイラルの危険は、これはかなり以前にもう過ぎ去ったというふうに認識しております。

 それで、中央銀行の立場から見ますと、ある人に対してある特定のデフレの定義を押しつけるということではなくて、中央銀行の目的である物価の安定のもとでの持続的な経済の成長を実現するという観点に照らして、足元の物価情勢それからこの先の物価情勢を判断していく、そういう姿勢にやはり尽きるのではないかというふうに思っております。

池田委員 そういうことじゃ困るんですよね。

 では、内閣府が定義したデフレからの脱却というのはもう達成したんですか。

白川参考人 内閣府の定義で、これは内閣府のことですから、私が内閣府にかわって答えるのは適切ではないかもしれませんけれども、物価指数、例えば消費者物価指数の場合でも、この消費者物価指数の中で、例えば一時的な要因、生鮮食品を除くのかどうかとか、いろいろな議論が現実に内閣府の中でもあるんだというふうに理解しております。

 したがいまして、私の立場で内閣府の定義に従ってどうであるかということを申し上げるのは適切ではないというふうに思っております。

池田委員 総裁代行でいらっしゃるからそれ以上詰めませんけれども、そこが一番大事なところで、別におっしゃっても何も差しさわりはない。内閣府の定義自体に異論を唱えるわけではなくて、それに沿えば、もう後戻りしないんだ、もうデフレは脱却できたと言うか、まだできないと言うか、そういう非常に言葉の明瞭なことが中央銀行のトップとしては、私、大変重要だと思っております。

 なぜこの問題を取り上げるかといえば、デフレの脱却が大変大きな問題であると同時に、中央銀行の総裁が、最初あれだけかねや太鼓でデフレ脱却と言いながら、途中から定義云々と言い出した。驚くべきことですね。言葉というのは大事ですから。これはもう中央銀行の信認性を著しく下げますよ。

 そのことを白川さんに申し上げて、これから一層明瞭な言葉で金融政策、そして日銀のスタンスを明瞭に伝えていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。


    ―――――――――――――
          (後略)


 

 

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