かまいたちの夜2〜監獄島のわらべ唄〜
(チュンソフト)
<ストーリー>
東京で暮らす主人公の元に、一通の招待状が届いた。
去年の冬、スキー旅行で訪れたペンション「シュプール」を舞台としたゲーム「かまいたちの夜」の作者が、
当時の宿泊客をリゾート旅行に招待するというのだ。
主人公は北海道に引越した元同級生・真理と共に、孤島「三日月島」に向かう。
だが、その島は、リゾート地とは程遠い場所だった。
かつて監獄島であったといういわくありげの島に集まった、かつての宿泊客達を待っていたのは…?
「街」以来、久々のチュンソフト製作サウンドノベルであり、「かまいたちの夜」の続編です。
あらゆる面で前作から進化した、まさしく続編にふさわしい出来の作品に仕上がってます。
シナリオのボリュームといい、随所で見られる演出といい、よくここまで仕上げたものだと感心します。
特に、演出力の素晴らしさは、数多くのノベルゲームの中でもダントツ。
ゲーム全体で見ても、この作品を上回る演出力の作品は、そうそうないのではないでしょうか。
まず、随所に挿入されているムービーのレベルの高さ(特に「サイキック編」や「底蟲村編」)に驚かされます。
単に美麗なムービーというだけなら、他のゲームにもいくらでも見られますが、この作品のムービーは、
あくまでも「主人公から見た視点」を重視した作りになっているため、
他の作品にしばしば見られる「ムービーが始まるとプレイヤーからただの観客になってしまう」印象があまり感じられません。
ゲームのジャンルは違いますが、「バイオハザード」シリーズのような、
ゲーム画面とムービーの切り替わりに違和感を感じない作りになっていると思います。
そして、今作ではキャラクターのシルエットが実によく動き回ります。
背景の細かいムービーと、様々な動きを見せる人物のシルエットとの組み合わせが絶妙です。
あいかわらずキャラクターがシルエット表示であることに賛否両論あるようですが、私はこれでよかったと思います。
「街」のように実写にしてもそれなりに面白いとは思いますが、それだとどうもシナリオに感情移入しづらくなります。
やはり、サウンドノベルというものはプレイヤーの想像力をかきたてるものであるべきだと、
私は思っているもので。
おそらく、実写やポリゴン、またはイラスト表示であったら、ここまでの出来にはならなかったのではないでしょうか。
サウンドノベルの本家本元だけあって、チュンソフトさんはそのあたりをちゃんとわかって作っているなぁと思いました。
また、ムービーやアニメーションのみならず、テキスト面の演出もしっかり作りこまれています。
文字の拡大・縮小、場面に合わせて変化する字体やテキストの表示場所など、
地味な演出ですが、こういうものがあるとないとでは臨場感が全然違います。
ノベルゲームにおいては、同じ文章でも、ただのっぺりと同じ字体で文章が表示されるのと、
こうした変形フォントで表示されるのとでは、まるで印象が変わってきます。
私は今まで数多くのノベルゲームをしてきましたが、こういう変形フォントを充分に活用した演出を行っている作品は、
意外なほど少ないです。
変形フォントを活用した文章って、お手軽に雰囲気を醸し出せる演出だと思うんですけどね。
そして、シナリオの内容についてですが、私としては、これだけシナリオの種類と分岐が揃っていれば、特に不満はありません。
どれも凝った内容ですし、かなり楽しめました。
なんかギャグシナリオ以外は悲惨な結末ばっかりだったような気がしますが、これもまたよしかと。
ただ、主人公達を三日月島に招待した人物の名前が我孫子武丸ってのがちょっと…って思いました。
おまけシナリオやギャグシナリオなどで出てくるのならともかく、
メインシナリオの根幹に関わる重要人物の名前が作者の名前ってのは、
正直言ってやや興ざめしてしまいました。
「自分の作り上げた架空の世界に、何らかの形で自分を登場させたい」と思う気持ちはわかりますが、
ゲームをする側からすれば、何もそこまで自己主張しなくても…と思わずにはいられません。
…などとつらつら批評してきましたが、私としては、
「わらび唄編」のカマイタ音頭と、
「陰陽編」のダンサー主人公が見れただけで、
充分すぎるほど元がとれました(笑)。
こういう、手間暇かけてバカ(←最大級の賛辞)やるのって大好きです、私は。
上の冗談は置いといて、「かま2」は
確実に金額分以上楽しめる作品です。
数多いノベルゲームの中で、これほど丁寧に作りこまれた作品はそうめったにないでしょう。
おまけ:登場人物紹介