AIR
(Key)
<ストーリー>
夏。
海に近いちっぽけな町に、一人の旅人がやってきた。
母から受け継いだ「法術」という不思議な力を使い、
手を触れずに人形を動かす大道芸を見せながら旅を続ける青年、国崎往人。
どこまでも続く空の下、どこまでも続く夏の中で、
青年はひとりの少女と出会った…。
さて、もはや出せば売れるKeyブランド最新作の登場です。
なんだか「サウンドノベルの鉄人」もすっかり路線が変わってしまいましたが、
他にサウノベネタがない以上しょうがありません。
どこか作ってよ、サウンドノベルの新作…(T_T)
…などとさんざん言い訳じみたことをのたまっておりますが、
はっきり言って買ってよかったッ!!
「Kanon」からさらに演出、シナリオ、BGMに磨きがかかっています。
特に演出面においては、演出過剰を通り越して演出壮絶とでも言うべき怒涛の嵐。
ほのぼのギャグ中心の前半部からシリアスな後半部への変化、そしてこれでもかと押しまくるクライマックス。
この一連の流れ、通称「Keyコンボ」(命名:俺?)は相変わらず衰えておりません。
一部で「これはゲームじゃない」などと酷評されておりますが、
この作品は「シナリオを読ませる」ことに焦点を絞り、他の部分をあえて切り捨てて作られていると解釈すべきでしょう。
そういう「切り捨てられた部分」に対して批判を浴びせるのは、果たして公正と言えるのかな…と私などは思いますが。
でも、まぁ確かにこの作品は「遊ぶ」ためのものではなく「読む」ためのものですから、
そういう意味では「ゲームじゃない」って言われてもしょうがないですけど…。
さて、この作品においても、相変わらず登場人物は個性豊かです。
あまりに個性ありすぎて、最初は「なんじゃこいつ?」と思ってしまうくらいに。
このメーカーさんは、どうしてこうもキャラの立った人物を作るのがうまいのでしょうか。
しかも、これがまた「変な奴なのにすぐになじんでしまう」んですよね。
今回はメインキャラは3人と少ないですが、このシナリオの内容から考えればそれもしょうがないでしょう。
ま、その辺は下の「登場人物紹介」でということで(笑)。
また、BGMの素晴らしさも相変わらずです。
よくまあここまで雰囲気ピッタリのBGM作れるもんです。
なんか「田舎の夏休み」って感じのする、ホントいい曲がそろってます。
特に観鈴との出会いのシーンで流れる「夏影」なんかは、思わずしばらくぼ〜っと聴き惚れてしまうほどでした。
また、オープニングテーマ「鳥の詩」とエンディングテーマ「Farewell Song」も雰囲気ピッタリの名曲です。
そして何より、あの核兵器的反則挿入歌「青空」。
これは…聴くたんびにあのシーンがフラッシュバックして…たまらんですよマジで(T_T)
そして、何よりも特筆すべきなのがシナリオの構成。
さすがのネタバレ超上等コンテンツ「サウンドノベルの鉄人」においても、
この作品のシナリオの進み方ばかりはバラすことができません。
これを知ったらあまりにつまんないですから。
あえて言うなら一言「最後まできちんとやれ」ってとこですか。
ホントうまいなぁ演出…。
しかし、何よりもこの作品のシナリオで私が気に入ってる点は、
「バッドエンドもそれなりにいい」ということです。
美凪シナリオの「二人、町を出る」と観鈴シナリオの「よーい、どん」は、ある意味トゥルーエンドより深いです。
「いきなりシナリオ中断、ハイやり直し」ってのが軽減されているのは非常に好感が持てました。
…とまあ、長々ととりとめのないことを書いてしまいましたが、ひとつだけ絶対に書いておくべきことがあります。
それは「AIR」は相当な意欲作であるということです。
「出せば売れる」Keyブランドだからこそ作れた作品でしょう、これは。
おそらく、他のメーカーでこういう内容のゲーム作ろうとしても、
企画の段階で「こんなの売れるはずがない」とボツになること確実だと思います。
有名メーカーゆえの前評判の高さを最大限に活用して、
こういう他ではなかなか作れない(または作らない)作品を出してくれたことに、私は本気で敬意を表します。
シナリオやBGMをどうこう言うよりも(さんざん言ってますが)、これは大きな声で評価すべきことでしょう。
この創作意欲、どこぞの大手メーカーも
見習ってもらいたいものですな。
おまけ:登場人物紹介