ジンダイの滝~千ヶ峰③(1005.2m)  神河町  25000図=「生野」「丹波和田」


石風呂川を遡りジンダイの滝へ
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ジンダイの滝 上部

 越知川の支流、石風呂川は千ヶ峰を源に発する。その上流部にかかるのがジンダイの滝。今回、石風呂川を遡り、ジンダイの滝を経て千ヶ峰に登った。

 作畑の地域交流センターから越知川を渡り、民家を抜けて林道を登っていく。林道は石風呂川に沿って続いている。
 石風呂川を右岸から左岸へと渡る橋の下には、ツリフネソウが咲いていた。土の道となり、防獣ゲートを抜けてスギ林の下をゆるく登っていく。
 ミカエリソウが、花穂の下から咲き始めていた。花から突き出た紅紫色のおしべが、鮮やかに目に映る。ミカエリソウは、このあとずっと石風呂川に沿って咲いていた。

 ツリフネソウ  ミカエリソウ

 林道の両側には、シカの食べないミツマタがずっと続いた。やがて、堰堤下の広場に達した。左に、千ヶ峰の山頂に続く登山道が分かれている。
 そちらには行かずに、そのまま林道を登った。大きく曲がったところで林道と分かれ、沢に沿った山道に入った。
 群生するミカエリソウを分けて進む。流れの脇のガレ石は、昨夜の雨をたっぷりとふくんでいた。

 道はすぐに踏み跡程度になり、やがて途切れがちになった。ときどき、流れを渡って反対側を歩いた。少しでも歩きやすいところを探しながら登っていくが、いつもどうも自分の歩いている反対側の方が歩きやすいような気がしてしまう。

滝への渓流を遡る

 少しずつ傾斜が増してきた。二つの沢が合流するところで、その右の方に滝が見えた。ジンダイの滝である。
 下から見上げると、一段、二段、三段、四段・・・。階段状になって水が流れ落ち、岩にぶつかったところで白い飛沫を跳ね上げている。
 空をおおう木の葉が落ち口を隠し、緑の向こうから水が飛び出しているように見える。全体の落差は20mほど。
 山上の滝なので水量はそれほど多くはない。しかし、岩のコケ、そのコケの上に生えたオシダ、光をまだらに透かす木々の葉など、深山幽谷の趣きがあった。


 ジンダイの滝

 滝の右を登った。急な斜面を、岩や木々を伝って登っていくと、落ち口の下に出た。厚くコケの生えた岩が累々と重なっている。上には、垂直に落ちた岩盤が屏風のように長く延びている。その岩盤のいちばん左で、水が真下に静かに落ちていた。

 ジンダイの滝 最上部

 滝の上は、スギやヒノキが植林されていて、林床は透いている。まっすぐ登ることにした。
 滑るとどこまでも落ちていくような急な坂。喘ぎあえぎ、地図アプリの標高が増えていくのを励みに登っていく。よくこんなところに植林したものだと思う。
 ときどき、木の幹に背をもたれかけて休んだ。ヤマガラやヒガラの声が聞こえてきた。
 

 ジンダイの滝の上 ここを登る

 ひと登りすると、斜面の傾斜が少し落ち着いてきた。そのまま、真っすぐ登る。
 植林が途切れ、傾斜がゆるくなってきた。稜線までもう少し。雑木の中に入っても、ヤブ漕ぎをしなくてすんだのは鹿のおかげかもしれない。
 最後は左へトラバースするように進み、稜線の登山道に出た。

 こんなところにもイヌタデが咲いていた。ゆるくアップダウンを何度かくり返して進む。ススキがもう穂をつけていた。ススキの穂の上を見上げると、山頂の石塔とその横に立つ登山者の姿が見えた。

山頂を見上げる

 ススキを分けて山頂へ登っていく。山頂手前の大きな岩の間に、オトギリソウが咲いていた。

 山頂には10人ほどの人が休んでいた。三角点にくっつくように立っているのは、下から見えた石塔。「南無妙法蓮華経」と彫られている。小さな石の祠に、山名標柱、地図板、下山路を示す道標などが登山者を迎えてくれる。
 ベンチに座って休んでいると、アマツバメが二羽、山頂を越えていった。アマツバメはこの山頂近くを飛び交い、このあとも、ときどき山頂を渡っていった。
 一度は、背中でビューと音がしたので振り向くと、私のすぐ近くを飛んだアマツバメの風を切る音だった。長い翼に猛烈なスピード。アマツバメの飛行は、見るものを魅了する。

千ヶ峰山頂

 西に段ヶ峰や千町ヶ峰、北に粟鹿山、東に篠ヶ峯、南には飯森山や笠形山が見える。朝方はきれいに晴れていたのに、いつの間にか雲が多くなって景色はかすんでいた。それでも周囲の山々をぐるりと見渡すことができた。
 小さな男の子がお父さんに、「せっかく登ってきたんやから、ずっとここにおろ。」と言っているのが聞こえてきた。それがそのうち「3時までおろな。」になって、結局は2時前、元気に下りていった。

 飯森山(中央)、笠形山(左)を望む

 千ヶ峰山頂をあとにして、稜線を北東に下った。休憩所が2ヵ所に建てられ、「シカの影響を受けた森」や「動物のフィールドサイン」の説明板が立っていた。
 思っていたより長い下山路だった。山頂までの登りで疲れていたのかもしれない。ようやく、市原峠の広い駐車場にたどり着いた。
山行日:2022年9月24日

地域交流センター~広場(登山口)~ジンダイの滝~千ヶ峰~市原峠 map
 地域交流センターから越知川を渡り、石風呂川に沿って林道(林道石風呂線)を登る。広場(登山口)の少し上で林道と分かれ、渓流に沿って登る。踏み跡程度の道がときどき現れた。
 ジンダイの滝を越え、稜線に達してから、登山道を千ヶ峰山頂へ。
 千ヶ峰から登山道を市原峠へと下る。市原峠には広い駐車場がある。朝、市原峠にデポしていた自転車で地域交流センターへ帰った。

山頂の岩石 白亜紀後期 生野層 安山岩
千ヶ峰山頂付近の安山岩(横10mm)
 千ヶ峰の山頂付近には、安山岩が分布している。
 左の写真は、ジンダイの滝から稜線までの間で採集した新鮮な標本である。

 少し赤みを帯びた暗灰色の安山岩で、斑晶として長柱状の斜長石と短柱状の普通輝石をふくんでいる。写真で白い粒が斜長石、黒い粒が普通輝石である。

 稜線上で見られる安山岩は変質が進んでいて、石基の部分は紫色を帯び、斑晶の斜長石は白く変質してよく目立つ。

 この千ヶ峰の安山岩は、兵庫県レッドリスト(地質)でCランクに選定されている。

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