論鶴羽山    (608m)                 三原町・南淡町      25000図=「論鶴羽山」
常緑の樹林と白い海
 
 論鶴羽山(ゆづるはさん)には、紺碧の海と淡い水仙の花の色がよく似合う。時あたかも水仙の咲く2月、昨年買った「論鶴羽山」の地形図も真っ新なまま待っている。各種ガイドブックにあるように「市」を登山口として、諭鶴羽山を縦断し「黒岩水仙郷」に下るコースを予定した。洲本から「市」までと「黒岩」から洲本までは、バスを利用する。バスの時刻も確認し、完璧な計画だと、寝たのが午前2時……。起きたら日はすでに高く昇っていた。しかたがない、計画を論鶴羽ダムから山頂までの往復に切り替えた。

古道に立つ丁石仏 論鶴羽古道

 論鶴羽ダムからよく整備された道が山頂までついている。登山口には「論鶴羽古道入口」の案内板が立っている。尾根までは急登するが、その後は長く緩やかな道が山頂まで続いている。この道は、論鶴羽神社の裏参道にあたり、ところどころに丁石仏が立っている。石仏の顔は、ひとつひとつが異なり、それぞれが趣をもっていた。南国淡路は、2月でも雑木林の緑は濃い。常緑広葉樹が多いためである。ヒサカキ、ネズミモチ、ヤブツバキ、カクレミノ、ヤブニッケイ、ソヨゴ、イヌツゲ、ウバメガシ、ユズリハ……。ユズリハは論鶴羽山の名の由来になったとも言われている。また一説には、天竺の摩迦
陀神が鶴にのって熊野へおもむく途中、この山頂で羽を休めたことからこの名がついたとも言われれている。
 登山道沿いに見られる露頭も転石も、そのほとんどが砂岩である。論鶴羽山は白亜紀の和泉層群からできている。和泉層群は西日本を内帯と外帯に分ける中央構造線の北側に、四国は松山市あたりから阿讃山地へ、そして淡路論鶴羽山地を経て大阪府と和歌山県の府県境の和泉山脈へと総延長300kmにわたって分布している。保存の良いアンモナイト化石がでてくる地層としても知られている。どこかに、アンモナイトが転がってはいないかと探してもみた。

諭鶴羽山山頂(背景に紀伊水道)
 植生も地質も、これまでよく歩いた山域とは異なる。上を見たり下を見たり、立ち止まったりしている間に、どんどん人に追い越されていった。その人たちは論鶴羽神社まで降りていったのか、ようやく辿り着いた山頂は意外に静かだった。日差しに何となく春を感じるが、吹く風はまだ冷たい。山頂から東を見ると、緩やかな稜線から続く丘が急傾斜で海に落ち込んでいる。西南日本を貫く巨大な活断層、中央構造線にそって直線的に浸食された地形である。丘の下に広がる海は白く霞み、わずかな濃淡を示すのみである。その茫洋とした海はそのまま空の白にとけ込んでいた。
 海の青も水仙のレモンイエローも見ることができなかった論鶴羽山……。せめて写真だけでもと、水仙の咲く道ばたに車を止めて山を振り返った。しかし、もうそのとき、論鶴羽山は前景の山に隠れて見えなかった。
山行日:2001年2月10日


山 歩 き の 記 録 (ルート)

行き:論鶴羽ダム登山口〜尾根(山頂2.5km分岐)〜神倉神社〜山頂1.8km分岐〜山頂0.7km分岐〜無線中継所〜諭鶴羽山山頂〜論鶴羽神社
帰り:来た道を帰る
論鶴羽神社
 論鶴羽ダムのダム・サイトを渡った「論鶴羽古道入口」から登る。山の中腹を急登していくと、途中でスギ林から自然林に変わる。尾根に出ると、牛内ダムからの道と合流し、「論鶴羽山頂2.5km 牛内ダム0.2km」の標識が立っている。ここからは、緩やかに緩やかに山頂まで道が続いている。丁石仏の立つ論鶴羽神社の裏参道「論鶴羽古道」である。小さな神倉神社の社を過ぎて少し上ると、「山頂まで1.8km」の分岐。ここから「山頂まで0.7km」の分岐までは、ほとんど平地である。木を見ながらゆっくり歩いていった。「山頂まで0.7km」の分岐を右に上ると山頂手前の尾根に出る。無線中継所からコンクリートの道を少し行くと山頂。山頂には展望台が建っている。
 山頂で休んだ後、論鶴羽神社まで降りてみた。大きなアカガシやタブノキに囲まれた社殿の前の境内には多くのハイカーが集い、憩っていた。天気がよいと、鳥居越しに紀伊水道を隔てて紀州の山々が見えるという。ここから下へ降りれば、「黒岩水仙郷」。しかし、車は論鶴羽ダム。霞んで見えぬ海に背を向け、再び山頂を越えて、来た道を帰っていった。

   ■山頂の岩石■ 白亜紀 和泉層群 北阿万累層 砂岩

 淡路島の地質は、洲本市と西淡町灘を東西に結ぶ線によって、大きく2つに分けることができる。北は、六甲から続く白亜紀の花崗岩類とその上に堆積した大阪層群の地層。南は、白亜紀和泉層群の砂岩や泥岩を主とする地層である。和泉層群の砂岩や泥岩でできた山は、急峻な地形をつくることはほとんどなく、大きく緩やかにうねるような山並みをつくることが多い。柏原山から論鶴羽山に続く論鶴羽山地もそのような山並みが連なっている。
 論鶴羽山に分布するのは、和泉層群の北阿万累層である。北阿万累層は砂岩と泥岩の互層を主体とし、アンモナイトの化石も産する。今回歩いた尾根上に見られた露頭や転石は多くが砂岩であり、泥岩や礫岩がそれに少し混じっていた。

TOP PAGEに戻る登山記録に戻る