山崎宮(646.0m)   宍粟市  25000図=「山崎」


揖保川右岸、与位の洞門から山崎宮山へ

揖保川河畔から見る山崎宮山

 山崎の町から国道29号線を北へ向かうと、東西に稜線を広げた山が立ちはだかる。整った山容で、冬に雪をまとった姿は印象的で美しい。長らくこの山の名前が分からなかったが、「宍粟50名山(2009)」に宮山として紹介された。雄棲山、あるいは水見行山とも呼ばれているという。

 この山の東裾、山脚が揖保川に落ちるところに「与位の洞門」がある。明治36年ごろ、揖保川の右岸に道を通すため、村民によって2つの隧道がここにうがたれた。この景勝地はその後、車が通れるように内部が広げられ、今はその内側がコンクリートで固められてしまった。

 洞門の西に新しく「よいたいトンネル」がつくられ、その田井側入口のそばに「宮山登山口」の標識が立っていた。登山道は、そこから山すそを東に向かって上っていた。雑木林に入ると草いきれに包まれた。ホタルガが飛んでいる。山はもう、真夏の空気が充満していた。
 すぐに与位の洞門の上に出たが、そこにはミツバチの巣箱が3つ4つ並んでいて近づけない。そこで、潅木を分けてその少し上に出た。眼下に揖保川の流れが見える。洞門の下の急流に、先ほど見た赤いカヌーを探したが、岩の陰に入ったのか見えなかった。
 ここから、尾根上にずっと道が続いていた。始めは鉄塔巡視路。雑木の尾根の急坂を登ると、送電線鉄塔の下に出た。ここは北に眺望が開け、揖保川を見下ろすと、その中に釣り人が点のように小さく見えた。田んぼの広がる低地の上には、山並みが重なりながら稜線を引いていた。ピークがすっとせり上がった855mピークの西に、反射板を乗せた水剣山の808mピークが見えた。
 山並みの上には青空が広がっていた。梅雨の雨よりも、午後の雷雨を心配しなければならなくなった。

与位の洞門 送電線鉄塔下より北を望む

 すぐにもう1本の鉄塔が現れ、そこからひと登りすると297mピークに達した。ここから、宮山山頂までの尾根が一望できた。尾根は起伏を繰り返しながら高度を増し、山頂へ続いていた。ちぎれ雲が、尾根の上を左から右へゆっくりと流れた。
 倒木が多くなり、根こそぎ倒れたアカマツが道をふさいだ。木の間越しに揖保川を見て、まだそんなには登っていないことに気がついた。
 マムシが道の枯葉の上をはい、倒木の下に隠れた。そこを大きく迂回して、マムシに驚いた余韻を引きずりながら、先に進んだ。459mピークで一息ついて、ほてった体を冷やした。木の葉のざわめきの中に、オオルリとキビタキのさえずりが響いた。
 アベマキ、コナラ、モミなどの雑木林の中、尾根道はゆるく長く続いた。エナガの群れが、チュリチュリ鳴いて、木漏れ日の中を渡っていった。
 地形図には表れない小さなコルは、倒木で荒れていた。そこには、タケニグサが侵入し、シロダモが緑色の実を上向きにつけていた。

尾根道から見る山頂への稜線

 尾根はしだいに岩がちとなった。600mピークを越え、シキミの匂いを気つけにして、最後のコルから標高差40mを一気に登り詰めると、宮山の山頂に達した。
 山頂は両側が切れ落ち、南西に梯川の谷、北東に与位の低地が、スギ木立のすき間から見えた。

 山頂から尾根を北西に100mほど進むと、金剛岩が立っていた。高さ3mほどのいびつな直方体。風化に残されたコア・ロックである。岩の底は土に埋まっているが、岩盤とはつながっていないように思える。西へやや傾いているが、その下に高さ50cmほどの岩がくさびのように入って支えている。
 周囲の地質を調べ、金剛岩を振り返ると、それは薄日を浴びて木立の中にぽっかりと浮かび上がっていた。
 山頂へ戻り、野口神社に下っているとき、金剛岩から男鹿島が見えると「宍粟50名山」に書かれていたことを思い出した。

山崎宮山山頂 金剛岩

山行日:2009年6月28日
「よいたいトンネル」入口登山口〜洞門のノゾキ〜送電線鉄塔〜297mピーク〜459mピーク〜宮山山頂〜金剛岩〜宮山山頂〜野口神社〜五十波〜「よいたいトンネル」入口登山口
 「よいたいトンネル」入口付近に、宮山の登山口がある。登山道は洞門のノゾキの上に出て、そこから尾根に沿って山頂まで続いていた。
 山頂から野口神社へ下る道は、標高530mの地点で2つに分かれている。一つは、409mピークを経由する「迂回コース」。もう1つは、南東へ一気に下る「直降コース」である。「直降コース」を下ると、標高320mで「迂回コース」と合流し、道がゆるくなって野口神社に達した。
山頂の岩石 後期白亜紀 雪彦山層 流紋岩質溶結火山礫凝灰岩
金剛岩周辺の岩石
 山崎宮山には、後期白亜紀の火砕流堆積物(雪彦山層)が分布している。
 金剛石付近に好露頭があった。この地点の岩石は、異質岩片を多量に含む火山礫凝灰岩である。異質岩片は、黒色の泥岩が主体で、白色や暗灰色のチャートも含まれている。岩の表面に見られる穴(最大15〜8cm)は、これらが抜け落ちた跡である。基質は灰色で、長石と石英の結晶片を含んでいる。また、流紋岩質の火山岩塊や軽石も認められた。
 宮山には、このような火砕流堆積物が広く分布しているが、異質岩片や火山岩塊の量、結晶片の量、溶結の程度などの違いによる岩相変化に富んでいる。
 下山時に通った野口神社上方の標高300mあたりには、シルト岩や細粒砂岩が分布していた。


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