氷ノ山C(1509.8m)  養父市・若桜町   25000図=「若桜」「氷ノ山」


立ち並ぶ雪の造形、モンスター

モンスターの群れの中へ

 但馬に大雪をもたらした冬型の気圧配置もようやく崩れ、西日本は小さな高気圧におおわれた。待っていたチャンスが訪れた。わかさ氷ノ山スキー場から、氷ノ山山頂をめざすことにした。

 リフト券売り場で1回券を2枚買って(500円)、その横のスキーパトロール本部に登山計画書を出した。樹氷第2パノラマが、標高1000mまで一気に引き上げてくれた。
 リフトを降りてみると、その上の樹氷第3チャレンジがまだ動いていない。リフトの前には、スキーヤーや登山者が動くのを待っている。
 まもなく9時。リフトはもうすぐ動きそうだが、スキーにシールをはってゲレンデを登ることにした。

樹氷第3チャレンジ

 はじめは緩い傾斜。中間駅までは圧雪されていて、真っ直ぐに登ることができた。中間駅の上は、最大斜度37度の急傾斜。新雪をラッセルしながら斜めに登った。深い雪の中では方向転換が難しくて苦労する。
 しばらくするとリフトが動き出した。リフトの上から、大声で励ましの(?)声がかかる。中間駅から30分もかかって、ようやくリフトの上に出た。

 上駅の作業員さんと話をする。このあたりで積雪は3m。きのうまで、このリフトは雪で埋まっていたという。
 ここからの尾根は狭くて急傾斜。スキーを背負って、スノーシューで歩き始めた。リフトに乗って追い越していった人たちのトレースが、木々を縫って上っていた。
 ミズナラの幹には雪が張りつき、スギの枝葉は雪にくるまれている。林の中は、真白い雪の世界だった。
 ときどき、背中のスキー板が木の枝に当たった。細い枝は、ポキンと折れたが、太い枝に当たったときは跳ね返されてうしろによろけた。
 木々がまばらになると、左手に氷ノ山が見えた。山頂は朝日を斜めに受けて輝き、その左にはコシキ岩が白い要塞のように乗っていた。

登路より氷ノ山を仰ぐ

 標高1310m、傾斜がゆるんだところでスキーにはき替えた。
 1360mまで登ると、尾根が大きく広がった。雪面にブブナの木がまばらに立っている。吹き上がってきた南風が、雪面の上の小さな雪の粒を吹き飛ばし、それがウェアに当たってパチパチと音を立てた。空を見上げると、巻雲が先ほどよりも広がって巻層雲に変化しようとしていた。
 広くて緩い斜面をトレースが真っ直ぐに伸びていた。トレースの先には、3人ほどの先行者が小さく見えた。雪はよくしまっていた。新雪を歩くとくるぶしまでもぐったが、トレースの上ではスキーはよく滑った。

尾根のトレース
 11:02、三ノ丸に到着。避難小屋の赤い屋根は、上半分だけが雪から顔を出していた。展望台は雪にすっぽりとくるまれていた。
 神戸新聞社のカメラマンが、山岳ガイドに連れられて来ていた。氷ノ山の冬の光景を、2日後の新聞に載せるという。
 三ノ丸から、氷ノ山山頂の三角屋根をめざして進んだ。穏やかに起伏する雪原がずっとそこまで続いていた。
 雪原のあちこちに、白い“モンスター”が数本ずつ群れて立っていた。スギの木に雪が降り積もっては凍りつく。それを繰り返すうちに、白くて巨大な怪物に成長する。今年は雪が多く、“モンスター”はいつもの年よりずっと立派だという。

モンスター

 “モンスター”の前後は、風の通り道になっているのか、雪面が大きくえぐられていた。そんな雪の波をいくつか越えながらさらに進んでいった。
 右手にブナの林が現れた。ブナの木は、枝いっぱいに樹氷の花を咲かせて青空に映えていた。
 ブナの林の脇を抜けると、目の前に“モンスター”の大きな群れが迫ってきた。横に広がるその群れの真ん中を、トレースが貫いている。

ブナの樹氷 モンスターの壁を前に
 その“モンスター”の群れの中に入った。
 林立する白くて巨大な塔。
 塔の上には青空が広がり、その青空を濃淡のある雲が足早に流れていた。
モンスターを見上げる

 山頂まであと少しというところに、タツノオトシゴそっくりのかわいい“モンスター”を見つけた。先ほどから言葉を交わしていた人と、その前で記念写真を撮り合った。辰年が次に巡ってきたとき、年賀状に使えるかもしれない。

 山頂手前の小さなピークを右に巻いて、最後の上りにさしかかった。柔らかな雪は風で飛ばされ、雪の表面は硬くしまっている。その雪面に、風紋が曲線を重ねて描かれていた。

山頂へ タツノオトシゴ

 12:08、山頂に達した。
 山頂には10数名の先客がいた。雪を滑り下りるようにして、避難小屋の中にもぐり込み、おにぎりを1つ食べる。外は、絶えずヒュンヒュンという風の音が鳴っていた。隣からラーメンのいいにおいがした。
 シールをはずすために外に出た。北には扇ノ山、南には三室山が高かったが、ここからはあたりのどの山も見下ろすことができた。先日まで生徒たちと吹雪の中をスキー実習したハチ高原スキー場のゲレンデが、眼下に白く光っていた。

氷ノ山山頂

 さあ、滑降だ!カーブを描いて気持ちよく………のはずが、なぜかうまくいかない。ゲレンデでは少しうまくなったのに、山ではどうしょうもなほどへた………。
 シールを外して感覚が変わったせいなのか、それとも背中の荷物のせいなのか………。山頂から500mほど滑ったところで、傾斜がなくなってスキーが止まった。
 三ノ丸までスノーシューで歩き、再びスキーで滑った。傾斜が緩く、ほとんど直滑降で1000mほど。そこで、またスノーシューにはき替えて、わかさ氷ノ山スキー場に戻った。

山行日:2012年2月5日

さかさ氷ノ山スキー場〜三ノ丸〜氷ノ山山頂(復路も同じコース)
 わかさ氷ノ山スキー場から、尾根沿いに進んで三ノ丸へ。そこから氷ノ山山頂までたどった。スキー場の一番西の2本のリフトを乗り継げば、標高1200まで上れるので、冬期の氷ノ山にはこのコースがもっとも短時間で登ることができる。下山は、わさび谷を滑降するのがよいが、雪崩の心配のないときを選らばなくてはならない。

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