上山高原(910m)    新温泉町               25000図=「扇ノ山」

扇ノ山、はるか手前で撤退

ショウブ池付近の樹林

 ヘッドライトに照らされた雪片が、フロントガラスに向かって流れてくる。午前4時、雪の播但自動車道を北へ向かった。山東町公民館でTさんと落ち合って9号線を西へ。今日は、新温泉町海上から扇の山をめざす。

 道路の除雪は、海上の集落の上まで。出発の準備をしているうちに、夜が明けてきた。
 林道の雪の深さは、始め30cmほど。除雪されたあとに、新しく降り積もっている。シールをつけて、歩き始めた。
 ストックの先が、雪の下のアスファルトに当たってコツッ、コツッと音を立てる。初めは私が前。新雪の上を、まずは快調にスキーが進む。
 歩き出して20分、トップを入れかわった。Tさんのペースは速い。少しずつ差が開いてきた。何とか追いつこうとするのだが、体が思うように動かない。いつも、石を叩きながらの軟弱な山歩きしかしていないせいなのか……。
 「桂の滝・シワガラの滝」の入り口で、小休憩。立ち止まってストックで体を支え、息を整えると、右下の谷から水の流れる音が聞こえてきた。乾いたあられのような雪がウェアに当たり、パチパチと音を立ててはじけた。

 再び歩き始めた。途中で、トップをかわりラッセル。雪はしだいに深くなり、スキー板が雪の中に埋まり始めた。板の先の部分だけが、わずかに顔を出す。それでも雪は軽く、板は雪にもぐったまま前に滑った。軽やかに……と思っていた。
 ところが、しだいに左足の付け根に痛みを感じるようになった。不覚!このところの運動不足がここに現れた。「ラッセルすると誰でもそこが痛くなる。」とTさんに慰めてもらったが、情けない……。
 それからは、Tさんの後を、ひたすら痛みを辛抱しながら歩いた。ペースは落ちていったが、それでもやがて上山高原にさしかかった。

上山高原、ミズナラの霧氷 上山へ向かって

 上山高原は、広くなだらかな雪原にミズナラの木がまばらに立っていた。その枝には、霧氷が白い花を咲かせたように張り付いている。ミズナラに近づいてみると、その幹の北に面した部分は樹皮が凍りついてめくれ上がっていた。
 正面には、雪にすっぽりとおおわれた上山の丸い丘。後ろを振り返ると、低く暗い雪雲の下、はるか遠くに東浜の海岸がかすんで見えた。その先の日本海はさらに暗く、もう空との区切りは見えなかった。雪は、間断なく静かに降っていた。

 上山の右の広い雪面を進んだ。この辺りは、雪が深くて道がどこなのか分からなかった。もうこの頃は、扇ノ山に登ることはすっかりあきらめていた。二人は、上山高原避難小屋で昼飯をとることにした。

上山高原避難小屋 ブナにつく霧氷

 小屋の外に掛けられた凍てついたはしごを上り、二階のドアから中に入った。小屋は新しく清潔だった。コッフェルに入れる雪を取りにいったん外に出た。素手で雪をすくい取ると、雪はしびれるほど冷たかった。
 Tさんの用意してくれた3種類のスープは、冷えた体を温めてくれた。上着を脱ぐと、体から湯気が立ち上った。

 小屋を出て、ショウブ池の上まで進んだ。ショウブ池の上の斜面は、樹林と雪と霧氷が墨絵のような風景をつくっている。前方には、小ズッコ、大ズッコと続く尾根。その先の扇ノ山山頂は、雲の底の没してもう見えなかった。今日の前進は、ここまで……。

ゴール地点(Tさん撮影)

 シールをはずして、さあ滑降!といっても、初めはほとんど平坦な上山高原の雪面。スキーを漕いで、一歩ずつ進む。
 高原を抜けると、傾斜が始まった。緩い下りだが、雪は乾いていて、スキーはよく滑った。足の痛さも忘れ、気持ちよく海上に滑りこんだ。

 いつの間にか雪は止み、雲の間から小さく青空がのぞいていた。車の横には、雪をかぶったツバキの木が赤い花をつけていた。
 


山行日:2008年1月27日
海上〜桂の滝・シワガラの滝入口(Ca.560m)〜上山高原避難小屋〜ショウブ池
(同じコースで下る)
 海上の民家が途切れるところまで除雪されていた。そこから、林道海上線を上る。積雪は上山高原で150cm程度。林道は上山高原まで明瞭。

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