闘 龍 灘

加古川の川面に荒々しく広がるデイサイトと凝灰岩


跳びあへず 渦巻く鮎の ひねもする哉    河東碧梧桐 (大正5年)

 数多くの支流を集めて東播磨を流れる加古川。中流の名勝、闘龍灘は河床いっぱいに起伏する岩石に阻まれた激流が巨竜の躍動に似ていることからこの名が付けられた。
 滝野町上滝野の加古川右岸にある「闘龍すくえあ」という公園から、河床に降りることができる。公園で会った地元の人に聞いてみた。「昔は、瀧を飛び越えようとした鮎がよく見えた。今は、ずいぶん水が汚くなってしまって……」と言うことであった。
 川底に降りると、流れの上にいくつかの橋が架かり対岸へ渡ることができる。この橋の上流側がデイサイト(石英安山岩)の岩脈、下流側が有馬層群鴨川層の流紋岩質凝灰岩である。


写真:闘龍灘の景観

 「闘龍すくえあ」から見たところ。このあたりの岩石は、デイサイトである。河床の岩石には多くの甌穴(おうけつ)が、見られる。

甌穴(おうけつ)
 ポットホールともいう。河床の岩石に割れ目や節理があると、その弱い部分が早く削れてくぼみができる。このくぼみに小石などが入り込むと、渦流のため小石がくぼみの中をころがって、円形の穴に拡大する。これが、甌穴である。

写真:デイサイト(石英安山岩)の表面

 凝灰岩の割れ目に沿ってマグマが貫入し、固まったものである。緑っぽい灰色をしていて、細粒緻密で硬い。ルーペで見る限りでは、ほとんど斑晶が認められない(わずかに角閃石あるいは輝石の黒色の鉱物が含まれる。)。写真のように、数mmの白い縞模様がはっきりと観察される。これは、流理構造であり、冷却時におけるマグマの流動線を示している。細かな節理が、この流理構造の方向と斜行して発達している。

写真:流紋岩質凝灰岩

 全体的に褐色をしているが、新鮮な部分は写真のように黒い。白い斑点は、1〜3mm程度の軽石であり、写真のように大量に含まれている。黒色の基質はガラス質で、緻密である。
 この凝灰岩は、白亜紀の有馬層群鴨川層のものとされている。今からおよそ7000万年に活動した火山から噴出した火山灰が固まったものである。


写真:デイサイト(左)と凝灰岩(右)の接触部

 デイサイトと凝灰岩の境界面は、全体的には直線的で南に傾いている。しかし、細かく見るとやや入り組んでいる部分がある。境界付近の凝灰岩は、境界面に平行な細かい葉理が発達している。これは、凝灰岩の葉理に調和的にマグマが貫入したことを示していると思われる。

■岩石地質■ 白亜紀 有馬層群鴨川層の流紋岩質凝灰岩 及びそれに貫入したデイサイト
■ 場 所 ■ 加東郡滝野町上滝野 25000図=「西脇」
■ 交 通 ■ 中国自動車道滝野社インター下車 国道175号線を北へ 闘龍灘東交差点を左折すると闘龍橋へ
■探訪日時■ 1999年7月26日


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