瀞 川 山(1039.2m)         香美町    25000図=「氷ノ山」


ハチ北高原スキー場から林道をスキーで

ハチ北高原スキー場から望む瀞川山

 今年の但馬はよく雪が降った。ここ数日、春のような陽気が続いたが、それでも田畑に雪は深く、家々の屋根に積もった雪もヘッドライトに白く浮かび上がった。

 午前6時30分、ハチ北高原スキー場の山麓ペアリフトの下、誰もいない薄明のゲレンデを歩き始めた。風がひんやりと冷たい。空には雲が広がったのか、先ほどまで見えていた金星が見えなくなった。
 圧雪車によって描かれた縦じま模様の上を、スキーは一歩一歩着実に登っていった。

 山麓ペアリフトの上に出たとき、鉢伏山に朝日があたって山頂の雪が薄赤色に染まった。今日歩く瀞川山への稜線も、赤みを帯びていた。

夜明け 朝陽を浴びる瀞川山
(山頂は写真右のピーク)

 少し下って、今度は中央クワッドの下を登っていった。陽が背後から昇り、雪面の縦じま模様が陰影を濃くした。辺りの木立から、キツツキのドラミングが聞こえてきた。
 スキー場の従業員を乗せた一台のスノーモービルが、ゲレンデを登っていった。そのあとには、排気ガスのにおいがしばらく漂った。

中央クワッドの下を登る

 7時29分、中央クワッドの上駅に着いた。そこから北壁スカイロードを登ると、標高940mでゲレンデを横切る林道に出た。
 雪のようすしだいでは、ここから尾根を行くつもりだった。しかし、雪は朝の冷気に固くしまっていて雪崩れる気配がなかったので、この林道を行くことにした。

林道の入り口から望む瀞川山
(山頂は写真右)

 林道はゆるく下っていた。雪面は固くて、スキーはほとんど沈まなかった。シールを着けたままだったので滑れないが、スキーは快調に進んだ。
 朝陽が、林道に木々の影を細く伸ばした。ウサギの足跡が、林道をいくつも横切っていた。新しい足跡は雪に沈んでいたが、少し古い足跡は雪面から浮かんでいた。
 左の斜面から、ところどころで雪が滑り落ちていた。そんなところはできるだけ速く進み、斜面に木の生えているところで休んだ。
 途中から、スノーシューの新しい足跡が現れた。林道は、野間峠の下からゆるく上りはじめた。

 934mの下には、恐ろしい光景が広がっていた。急斜面に積もった雪が幅20mにわたって、底からすっぽりと雪崩れ落ちていた。斜面はそこだけササが顔を出し、その上には落ちずに残った雪が雪庇となってせり出していた。
 耳をしばらく澄ましてみたが、音はしない。気温もまだ低い。大丈夫……。進もう。
 林道には、50cmから1mぐらいの大きさの凍った雪の塊がデブリとなって積み重なっていた。スキーをはいたまま乗り越えよう。気があせると、スキーの操作がうまくいかず、何度かバランスをくずした。
 デブリを乗り越え、平らな雪面に立ち、ホッと胸をなでおろした。
 スノーシューの跡は、デブリのこちら側にはきていなかった。うん?まさか!いや、そんなことはないだろう。きっとデブリの前で引き返したのだ。

雪崩の跡

 雪は深く、カーブミラーは丸い鏡だけを雪面に出していた。ガードレールがあるのかどうかも、もう分からなかった。ウサギの足跡にキツネやシカの足跡が混じっていた。
 そこからも小さな雪崩の跡が連続した。先ほどよりも小さなデブリをもう一つ乗り越えて進むと、林道は傾斜を失って標高990mの峠に達した。

最後は倒れた雪まくれ ウサギの足跡

 峠で林道を離れ、東へ伸びる尾根に取り付いた。ヒールを立て、リョウブ、ウリハダカエデ、ミズナラを縫って登った。木々のところどころに、凍った雪のかたまりがまつわりついていた。
 もう少しで山頂。ポールを持った自分の影も雪面を進んだ。9時05分、小さなコブをいくつか越えて登り詰めると、瀞川山の真白い山頂に達した。

 山頂は東側が切れ落ち、その向こうに展望が大きく広がっていた。ここまでずっと見えていた妙見山が、正面に迫っている。その左に蘇武岳。右に須留ヶ峰、藤無山。南には鉢伏山が丸く盛り上がり、その左肩に氷ノ山が白い稜線を雄大に傾けていた。

瀞川山山頂より氷ノ山・鉢伏山を望む

 空は少しかすんでいたが、風のない穏やかな日だった。もう少しこの山頂に居たかったが、気温が上がる前に戻らなければならない。9時25分に山頂を後にした。
 10時15分にスキー場に到着。妻に下山を知らせるメールを送り、シールをはずして、一度きりの滑降でふもとに下った。
山行日:2011年2月6日

行き:山麓ペアリフト下〜中央林間コース〜ハチ北中央ゲレンデ〜中央クワッド上〜北壁スカイロード940m地点〜(林道)〜野間峠下〜瀞川山山頂
帰り:行きと同じ
 6時10分にスキー場に到着。駐車料金1500円は、少し高いがしかたがない。ハチ北高原スキー場を登り、北壁スカイロードが林道と交差したところから、林道を進んで瀞川山の山頂へ。
 瀞川山へ楽に登れるコースであるが、林道では雪崩に十分気をつける必要がある。

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