瀞 川 山 (1039.2m) 村岡町 25000図=「村岡」「氷ノ山」
高原に浮かぶ長大な雪の稜線、瀞川山
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森脇から瀞川山を望む(山頂は左、右は十石山、手前の高原は瀞川平) |
まだ真冬というのに、西日本が小さな移動性高気圧におおわれた。こんな日は但馬の山々も穏やかだろうと、瀞川山に向かった。
国道9号線の但馬トンネルを抜けると、長大な稜線を水平に引いた瀞川山が目の前に大きく現れた。雪をまとった瀞川山は、朝日を浴びて淡くオレンジ色に染まり、瀞川平の高原の上に悠然と浮かんでいた。スノーシューを履き、今日は岩石ハンマーを車に残して、「木の殿堂」登山口からミズナラ林へ入っていった。
雪の表面は、融けた雪が再び凍り、薄く固まっている。落ちた鉛筆が、その表面でバウンドした。歩くと、雪の薄い表層がガリッと音を立てて割れ、スノーシューはその下の柔らかい雪の中に沈みこんだ。真白い雪面の所々には、小さく割れ落ちたミズナラの樹皮が落ちていた。
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登山口から入ったミズナラ林 |
輪郭のぼやけたスノーシューの跡が、ミズナラ林を縫っていた。その足跡をトレースしていると、やがて林間を下り始めた。コースをはずしたことに気付き、いくらか戻って道を再び見つけた。
そこからは、足跡の途絶えた林の中を、道を探しながら進んでいった。ノウサギやキツネの足跡が、道に沿ってついていたり、道を斜めに横切ったりしていた。ノウサギは、足跡の所々に真ん丸いフンを1つずつ残していた。
数ヶ所で、小規模な雪崩の跡があった。進路を雪の流れが乱していたので上を見上げると、積もった雪が幅10mにわたってU字状にえぐられ、その部分が下へすべり落ちていた。重なる雪崩で、その斜面には木が生えていなかった。
美しい林だった。ミズナラにブナやリョウブが混じり、さらにアカマツが混じりだすと、十石山への急な上りとなった。
十石山は、丸いピークが2つ並んでいる。初めの少し低いピークの方が広く、ここには道標やオリエンテーリングのポイントが立っていた。ノウサギとキツネの足跡の交錯する雪面に立って空を見上げると、冬芽をつけたミズナラの木の上に巻雲が筋を描いていた。
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十石山頂
右上から左下へノウサギの足跡、右から左へキツネの足跡 |
十石山頂の巻雲 |
十石山のもう一つのピークを越えて、支尾根を西へ進んだ。雪の表面は、もう固くはない。スノーシューに弾かれた雪は、小さく柔らかなかたまりとなって雪面を転がった。やがて、「但馬アルペンロード」の看板の立つ大幹線林道に出た。
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林道手前からの展望
右から瀞川山(山頂)、鉢伏山、氷ノ山 |
林道は、カラマツ林とスギ林を左右にきれいに分けて、南西へ真っ直ぐに伸びていた。林道の雪は深く、また湿っていて重かった。立ち止まって後を振り返ると、林道の伐り開きのちょうど延長線上に蘇武岳が立っていた。林道に残した足跡は、小さくうねってついていた。
呼吸を整えて、再び前へ進んでいった。長く平坦な山頂部の南西端近くに位置する瀞川山頂は、林道の左に小高いドームをつくっていた。カラマツの立つ急な斜面を上ると、古い杭の標柱が雪面に一本突き出た山頂に達した。
山頂は、南側が急傾斜で落ち込んでいる。眼下には、雪に埋まった瀞川平が広がっていた。
鉢伏山が近く、北面のゲレンデをスキーヤーが点のように小さくなってゆっくりと動いている。スキー場の音が、ゆるく吹く南風に乗ってここまで流れてきた。
鉢伏山の左奥には、氷ノ山の白銀の頂が陽を浴びて輝いている。
東に大きく裾を広げた妙見山は、この山頂からはさらに豪快に見えた。
蘇武岳、妙見山、須留ケ峰、藤無山、氷ノ山、鉢伏山、陣鉢山、扇ノ山……、あたりをぐるりと但馬の山々に囲まれたこの山頂でしばらく時を忘れた。
巻雲は、いつのまにか巻層雲となって空に薄く広がり、橙・黄・青に淡く彩色された日暈が太陽を囲んでいた。
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瀞川山頂 左に鉢伏山と氷ノ山 |
瀞川山頂から望む妙見山 |
山行日:2004年2月1日