点名亀ヶ坪(650.4m)    神河町・姫路市   25000図=「粟賀町」「寺前」

甲良川から点名亀ヶ坪へ

寺前より望む点名亀ヶ坪(左)と541mピーク(右)

 点名亀ヶ坪は、平坦な山頂部の端が急角度で落ち込み、その北の541mピークとの間に吊り尾根をつくっている。
 この日の朝は、鮮やかに色づいた山肌に斜光を浴び、山襞の陰影を深くして立っていた。

 市川町の甲良川を遡り、十三回りの峠からこの点名亀ヶ坪をめざした。
 甲良川のまだ下流の小さなコンクリート橋から、川原に下りた。ここに分布している花崗岩を調べ、サンプリングするためである。
 川原には丸い石が転がり、表面についたミズゴケがつるつると滑った。岩間を流れる水は澄んでいて、私の影に小魚がすばやく動いた。
 流れの中の露頭は水に洗われて、赤い岩肌を見せていた。赤い花崗岩である。岩には大小の節理が発達していて、ところどころで節理から直線的に割れ落ちていた。大き目のサンプルを2つ採ると、ザックはもう重くなった。
 川幅はすぐに狭くなり、倒木も多くなって、快適な沢登りとはとても言えなくなってきた。
 途中で右手の林道に上った。しばらく、この林道を歩く。道の脇には、カナクギノキの葉がやまぶき色に染まっていた。

甲良川の流れ カナクギノキの黄葉

 道がヘアピンに曲がるところから、沢は傾斜を増していた。そこから、もう一度沢に下りた。沢には、花崗岩の大きな岩が積み重なっていた。水のよどみには、ヤマザクラやコナラの落ち葉が吹き寄せられて水面を隠していた。
 岩を越えて進むと、滑滝が現れた。赤い岩盤を水が滑り落ちている。そこから、大きな岩が積み重なったところと滑滝が交互に現れた。
 急流部が終わり、倒木が再び沢をふさぎ始めた。沢をあきらめ、林道を歩くことにした。沢を離れる最後に、足を滑らせて水にはまってしまった。こんなことなら、ここまでジャブジャブと水の中を歩いた方が早かった。

水面に浮かぶ落ち葉 花崗岩を越えて

 林道を歩き、送電線の下を過ぎると、右手に比延へ抜ける峠道との分岐、左手に新しい林道との分岐が現れたが、そのまま甲良川沿いに直進した。
 岩は、花崗岩から凝灰岩に変った。広い道が続いたが、その道はだんだん草に埋まってきた。林道は、標高315mの地点で終わった。そこには、1本のウリハダカエデが燃えるように赤い葉をつけて立っていた。
 林道終点の左に架かっていた小さな橋を渡ると、谷沿いに山道が伸びていた。角張った岩がゴロゴロと転がった坂を登っていくと、標高400mあたりで傾斜がなくなり、谷底は湿地となった。厚いコケの上を歩いた。イノシシのヌタ場がいくつかあった。そこを通り抜けると、谷にはもう水がなくなった。
 あたりはスギの植林帯となり、道はほとんど分からなくなった。傾斜はしだいに急になっていった。この上の峠には、十三回りという名がついている。峠への道は、標高455mの地点で谷から鋭角で右に折れて、斜面を上っていた。スギ林の中の、ほとんど消えそうな道だった。
 つづらになった道を、曲がり角を数えながら登っていった。6つ目の曲がり角で、自然林の中に入った。8つ目の曲がり角まで数えることができたが、9つ目の曲がり角を見つけることができなかった。そこからヤブを分け、最後は斜面を真っ直ぐに登って十三回りの峠に達した。
 峠から北へは、木漏れ日の射す雑木の尾根。シキミのいいにおいがした。一登りすると、市川町・神河町・姫路市の市町界、Ca.590mピークに達した。アカボノツツジの葉が、朱色に色づいていた。
 さらに尾根を北へ向かった。常緑樹の中に、ドウダンツツジやベニドウダンの紅葉が鮮やかだった。

アケボノツツジ ベニドウダン

 点名亀ヶ坪の山頂には、伐採された潅木が枯れて横たわっていた。
 山頂からは、寺前の町並みが一望できた。中学校のグランドから野球の声がかけ上がってくる。その上の城山は、もう山腹まで日がかげっていた。

 山頂から北へ下った。少し進むと、尾根は急角度で落ちていた。ほとんど垂直のように思えたが、実際は60度ぐらいだったのかも知れない。重なった大きな岩の上に生えた木をつかみながら、後ろ向きになってその斜面を下りた。つかんだ木を離すと、ぱらぱらと枯葉が落ちてきた。
 そこを下ってしまうと、541mピークまでは、切り開きがはっきりしていた。541mピークから、尾根を北東に下って上岩に下りた。

点名亀ヶ坪山頂より寺前を望む 山頂より望む北西の山々
左から姫路市最高峰、Ca.930m、三辻山

山行日:2008年11月15日
鶴居水源地〜鶴居配水池〜189m点〜十三回り〜点名亀ヶ坪(650.4m)〜541mピーク〜上岩=(自転車)=鶴居水源地
 市川町の鶴居水源地の前に車を止める。そこから、甲良川に沿って十三回りまで上った。標高315mは広い林道が通じているが、そこからは細い山道となる。ここに分布する花崗岩を調べるために、一部は沢を歩いた。
 十三回りから尾根を北へ進み、点名亀ヶ坪(650.4m)に達した。点名亀ヶ坪から、541mピークを経て上岩に下りた。
■山頂の岩石■ 後期白亜紀 大河内層 流紋岩質溶結火山礫凝灰岩

 点名亀ヶ坪には、大河内層(いわゆる生野層群に属す)が分布している。山頂の岩石は、流紋岩質溶結火山礫凝灰岩である。珪化していて、風化による変質も進んでいる。結晶片として石英・長石が見られ、1cm以下の黒色頁岩の岩片も多く含んでいる。軽石は薄く引き伸ばされ、溶結構造が明瞭である。
 甲良川の下流〜中流には、斑状花崗岩が分布している。鮮やかな赤色をしているのが、この岩体の特徴である。黒雲母・角閃石・石英・斜長石・カリ長石の斑状結晶を、石英とカリ長石からなる基質が埋めている。

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