天滝〜杉ケ沢高原 養父市
25000図=「氷ノ山」「関宮」「戸倉峠」「大屋市場」
天滝から俵石を巡って、夏草茂る杉ケ沢高原へ
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| 天滝 |
梅雨明けも間近に迫った夏の一日、但馬の名瀑「天滝」に向かった。
養父市筏にある「レストハウス天滝」に車を止め、そこからさらに続く車道を歩き始めた。この道は、岩石がよく出ていたので、地質の観察には好都合であった。車道の終点には、ログハウスの休憩所とトイレ、案内板、駐車場が整備されていた。
ここから木の小橋を渡って踏み込んだ山道は、雑木におおわれて薄暗かった。天滝まで1170mという木の札がかかっている。木の葉も、それを透かして注ぎ込む光も緑なら、沢に転がる岩も緑色をしていた。
「しのびの滝」、「岩間の滝」……、すぐに滝が連続し始めた。
「糸滝」は、対岸の崖に糸のように細くかかっている。滝の落差は約100m。落ち口は、崖のずっと上方、木立に隠れて見えない。その下には、「連理の滝」が勢いよく水を落としていた。ヤマモミジ、クマシデ、イヌシデ、アオダモ、アワブキ、その他深山や谷あいによく見られる植物が多種生えていた。
谷底深く、木々の枝越しに見えるのが「久遠の滝」だった。
天滝への遊歩道は、狭く急峻な谷に巧みにつけられていた。左岸から右岸へ、右岸から左岸へと木の小橋を渡って進む。
「夫婦滝」、「鼓ケ滝」は、橋の上に立てば手が届きそうなほど間近にかかっていた。
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| 久遠の滝 |
夫婦滝 |
鼓ケ滝の右手を上ると、目の前に「天滝」が大きく現れた。
落差98m、兵庫県下一を誇る名瀑「天滝」は、その名の通り水が天から降るかのように流れ落ちている。
今は、水量も豊かな時期なのか、狭い落ち口から勢いよく水が飛び出している。垂直に近い岩盤には、いくつかの浅い棚があって、そこで跳ね上がる水が光を強く反射して白い絹のように輝いていた。
傾斜が緩くなった滝の下部では、凹凸の激しい岩盤の上を水が幾筋にも分かれて、網の目のようになって滑り落ちている。
滝の下で石を調べていると、母と娘だろうか二人連れが不思議そうにこちらを見て、それから天滝をバックに写真を撮っていった。
天滝の右に設けられた鉄製の階段を上ると、滝の横の「天滝三社大権現」に出た。狭い境内は格好の滝見台である。一組の夫婦がベンチに横になって憩っていた。近くにかかる小さな板に、神木の座・神庭の座・登山道上・天水の座などと、滝を見るポイントが紹介されていた。
神庭の座へは、神社の左脇の道を下るとすぐである。ここは、滝下部の岩の上に立つことができる。岩に下りて石を調べた後、脇のベンチに座った。
滝を見上げながら、「ああ、いい気持ちだ」と、ぼんやりおにぎりを食べていた。すると突然、陽の光が対岸の木々の枝葉を透かして滝に降り注ぎ、幾本もの明線となって水の飛沫を浮かび上がらせた。シャッターを何回も切ったが、その感動を写真に残すことはできなかった。
ベンチの下には、ドクダミが白い花をつけていた。
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写真左:天滝全景
写真上:天滝上部 |
神社に戻り、裏手の山道を上った。数本の大きなトチノキが、滝に負けない生命力で立っていた。
急斜面を上っていくと、こんな所にも炭焼き窯の跡が残っていた。滝の音が谷底から長い間聞こえていた。
小さな尾根に出たところに、俵石との分岐があった。コナラ、リョウブ、イヌシデ、ホオノキ、ヤマモミジ、ヤマザクラ、タカノツメ……辺りは美しい自然林であった。まだ昼下がりなのに、ヒグラシがさかんに鳴いていた。
分岐から俵石方面へは、等高線に沿うようにほとんど水平に道がついていた。
その道の山側に、俵を積み上げたように並ぶ俵石が現れた。やや丸みを帯びているが、断面は5角形から6角形であることが分かる。1mぐらいの高さのものが2段・3段と積み重なっている。高原をつくる玄武岩溶岩にできた柱状節理のつくる景観である。一番規模の大きい所に、「俵石」の標識が立っていた。
そこで道は屈曲し、再び急になった斜面を上ると、杉ケ沢高原の南端部に達した。
この辺りは、「森林浴の森」として整備されている。踏み跡をたどると、ログハウスの休憩所が建っていた。ここから標識に従って、杉ケ沢高原の中心部をめざした。
高原の真ん中は、腰まで伸びた草におおわれていた。草の中に、一本の道がほとんど消えかかりそうになって北へ伸びていた。草をかき分けるようにして進むと、左の小さな沼の上に杉ケ沢高原のシンボル、「一本杉」が見えた。
道はフェンスでさえぎられ、その向こうの畑では人々が農作業をしていた。
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| 俵石 |
杉ケ沢高原一本杉 |
山行日:2005年7月15日