高坪山(1104m)・小鉢(1210m)   香美町・養父市  25000図=「氷ノ山」


スカイバレイから高坪山を経て白銀の小鉢へ

小鉢

 3本のリフトを乗り継いで、スカイバレースキー場の上に出た。ゴーグル越しの空は、深い青。周囲のぼやけた積雲がゆったりと浮かんでいる。今朝の天気図とこの空が、今日一日の好天を約束してくれた。
 シールを着けて、尾根を南西に向かった。まだここは、東鉢とスカイバレーを結ぶスキー場の中。スキーヤーやボーダーが次々と滑り降りてくる。
 東鉢の一番上のリフト駅を過ぎると、六角屋根の展望台があった。
 スキーをはずして、展望台に上がってみた。南西に氷ノ山が朝陽に白く輝いている。そこから右へ、1000mを越す稜線がぐるりと続き、西には高坪山の樹林の先に、小鉢と鉢伏山が白い峰を並べていた。 

スカイバレイスキー場の上 東鉢スキー場展望台小鉢・鉢伏山を望む

 展望台から新雪を進み、シールをつけたまま緩い斜面をひと滑りした。上り返したところは高坪山の肩で、そこには緑色の屋根の避難小屋が建っていた。
 今年は、これでもまだ雪が少ないのか、一階の入口から入ることができた。ドアを開けると、ぷーんとタバコのにおい。壁には、氷ノ山までの縦走路を示した地図が掛けられていた。
 小屋を出ると、スギやヒノキを縫うようにして、ゆるく登っていった。こちら向きのキツネの足跡が、長く続いた。林内は、樹皮の茶色、葉の緑、雪の白が、細かなパッチワークのように混ざっている。そこに、木漏れ日が射し込んで、さらに複雑なまだら模様をつくっていた。

 高坪山の山頂が近づき、尾根が傾斜を失うと、雪面が大きく波打ってきた。その上を歩くと、スキー板が大きくたわんだ。
 高坪山の山頂は、スギ・ヒノキにカラマツの混じる林の中にあった。コガラが、カラマツの枝を忙しく渡っている。近くで、コゲラがギーと鳴いたが、姿は見えなかった。

 高坪山を過ぎると、今度はノウサギの足跡が続いた。あたりはカラマツ林。葉をすっかり落としたカラマツは、小枝に小さな冬芽を並べていた。
 カラマツ林を抜けると、南に氷ノ山が大きくなって再び現れた。氷ノ山の北面は青々として厳しい。その急峻で荒々しい壁を、山頂から直線的に伸びる東尾根が白く縁どっていた。

高坪山山頂 登路より氷ノ山を望む

 ここからしばらくは、左手に氷ノ山を見ながら進んだ。雪面に出た潅木の細い幹や枝にぶつかりながら、ボーゲンでずりずりと下ると、瀞川・氷ノ山林道の横切る峠に達した。
 眼下に、ハチ高原スキー場やロッジ群が広がり、ゲレンデから音楽やアナウンスが聞こえてきた。好天の日曜日、スキー場は多くの人たちで賑わっている。しかし、除雪車も入らないこの峠は、雪に深く閉ざされて、野生の動物と登山者だけの世界であった。

 峠のすぐ上には、「村野工業山岳部慰霊碑」が立っていた。1966年1月5日、ここで3名の高校生が命を落とした。
 両側の切れ落ちたやせ尾根を登っていくと、目の前に小鉢が大きく現れた。真白い峰が、蒼空に鋭くそびえている。ここから見上げる冬の小鉢は、背後の鉢伏山を隠して、アルペン的な光景をつくり出していた。
 小鉢の山頂をめざして、雪のスロープを登った。傾斜はしだいにきつくなり、ゆるく折り返しながら高度をかせいだ。
 雪の中から、背の低いリョウブがぽつんぽつんと出ていた。枝についた霧氷は、この日北東方向に成長していた。霧氷の幅は2cmほど、枝の近くは透きとおっていて、手に持ってひねるとパキンと音をたてて枝から離れた。

霧氷と小鉢 リョウブにつく霧氷

 山頂のすぐ下に、数個の大きな岩が飛び出していた。岩石は、安山岩。風化によって表面が丸くなっている。板状節理が発達して、岩の下には、平たく割れた岩のかけらがたくさん落ちていた。岩の間には、石の祠が一基まつられていた。
 何とかスキーをはいたまま、小鉢の山頂に上ることができた。山頂のケルンは、風で雪が飛ばされて、積まれた石が見えていた。しかし今、風はなく、空は相変らず青い。ここからも、氷ノ山が美しかった。

 もう目の前は、鉢伏山の山頂。小鉢を滑り降りて、ゆるく上り返すとスキーヤでにぎわう山頂のリフト駅に達した。

 ハチ北スキー場を、スカイロード、中央ゲレンデ、林間コースと一気に滑り降りるつもりだった。しかし、コースが複雑でどう滑ったらよいのか分からない。ゲレンデで、何度か立ち止まってマップを広げなければならなかった。林間コースへは、うまく入ることができずに、ファミリーコースのベルトに乗ったりもしながら、大笹のリフト乗り場へ滑り込むことができた。

小鉢山頂 鉢伏山山頂

山行日:2010年1月24日
スカイバレイスキー場山頂ペアリフト上〜東鉢スキー場展望台〜高坪山避難休憩小屋〜高坪山(1104m)〜小鉢〜鉢伏山〜ハチ北スキー場スカイロード〜中央ゲレンデ〜中央林間コース〜山麓ペアリフト下〜(大笹から中大谷まで歩く)
 上りにスキー場リフトを利用しての、山スキー山行である。好天に恵まれ、順調に鉢伏山まで進むことができた。
山頂の岩石 新第三紀鮮新世 鉢伏火山岩 かんらん石輝石安山岩
小鉢山頂下の安山岩
 小鉢の山頂直下に、写真のように大きな岩が露出している。岩石は、斑状組織が顕著な安山岩である。
 斜長石と輝石の斑晶が多いが、オリーブ色をしたかんらん石の斑晶も確認できる。
 板状摂理が発達し、平たく割れた岩のかけらがたくさん落ちていた。
 山頂のケルンは、この安山岩のかけらを積んでつくられている。
 


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