高御位山(299.8m)  高砂市・姫路市・加古川市  25000図=「加古川」


高御位山縦走コースのフィールドノート

 晩秋の一日、高御位山を縦走した。今回は、フィールドノートに記したことをそのままに……。山名や山の高さは、「はりま歴史の山ハイキング(横山晴朗、2003)」を参考にした。

 ローソンで弁当。車を一日止めさせてもらう。5分で登山口へ。

豆崎登山口
 標識に、「百間岩まで60分」「高御位山まで150分」
 9:26 ススキの穂を分けて山に入る。
 ひんやりした風。アベマキの葉がパラパラ落ちる。ヤマウルシの葉が赤い。
 岩盤をいきなり急登。
 Geo. 黄土色 lapilli tuff (hyalo.?)
      岩の表面、数mm〜1cmのlapilliが飛び出してざらざら。
 岩盤の上 南に街並み。2号線、バイパス、その向こうを新幹線が走り抜ける。
        街と山を、色づいた木々が分けていた。

岩盤の上から振り返る

経塚山古墳 主尾根に出たところ
 Geo. (経塚山古墳の手前) 黄土色 lapilli tuff 中に火山豆石。
      火山豆石……径6mm程度、同心円状str.
      火山豆石を含んでいて、hyalo.と言えるか? sp.10Y28.1
 尾根 アカマツ、ネズミサシ、ヒサカキ ソヨゴが赤い実。
 細いが、歩きこまれた道が続く。岩間にリュウノウギクが揺れる。

リュウノウギク

 Geo. ときどき、10cm程度のvolcanic block。
 モチツツジの返り花がチラホラ。
 中所登山口分岐

@豆崎奥山(159m) 地面から丸く顔を出した岩の上
 播磨灘が初めて見える。
 大平山(156.0三角点)は、豆崎奥山の肩。
 北東に、めざす高御位山。山頂の白い岩、要塞のよう。
 初冬の空、かすんでいる。昨日はあんなに晴れていたのに……。
 Geo. 黄土色 lapilli tuff 弱くwelded、風化進んでいる。
      hyalo.であること確認できない。
      feldspar の結晶片、白く変質。quartz少量含む。
 岩がちの尾根、続く。
 コシダの上に、ヒサカキ・ヤマモモの細い幹がひょろひょろ伸びた坂を下り、上り返す。

A161mピーク コナラがまだら
 次のピーク、知徳山が高い。
 正面に鷹ノ巣の三つコブ。その右、池の上に高御位山。
 百間岩や馬ノ背が、うす褐色の岩肌を見せている。
 Geo. 同じ
 下る。弱い日射しが、落ち葉や岩の上にうすい影を映す。

左に知徳山、右に鷹ノ巣の三つコブ

B知徳山(194m)
 Geo. ずっと同じ。lapilliの大きさ、volcanic blockの量に多少の岩相変化。
 別所高校のグランドから野球の声、北西の風に乗って。
 がんがん下る。百間岩が眼前に。
 Geo. sl. 145m andesiteの岩脈、幅1m。緑褐色、風化進む。
             plagioclaseのphenocryst、白く目立つ。
 まだまだ下る。これまで何のために登ってきたのかと思うほど……。
 鷹ノ巣山があんなに高くなってしまった。ホオジロがなぐさめてくれる。

88mコル 11:10
 神社から太鼓?の音
 コルの上に古い展望台
 小さなかわいい葉をノートにはさむ。

百間岩
 Geo. 一番下は、rhyolite flow str.明瞭、厚さ50cm確認。
     その上は、lapilli tuff(welded)
        ときどき10〜30cmのvolcanic block
         → 飛び出したり、抜け落ちたりして岩盤に凹凸をつくっている。
        数mm程度の black shale の岩片はさむ。
        lapilliやfeldsparは、白く粉状に変質。quartzの結晶片を少量ふくむ。
 photo. 長径16cmのvolcanic block(rhyolite)ガラス質

百間岩を見上げる

 百間岩の上 馬の背の奥に、高御位山が形を変えて……(山頂の左は下に凸、右は上に凸)。
 Geo. sl.190m 黄土色 lapilli tuff 「黄竜山」に似ている。 sp.10Y28.2
 階段のように折り重なった岩を登ると、

C210mピーク 11:44 うす褐色の岩が盛り上がったピーク。反射板が立っている。
 眼前に、鷹ノ巣がたくましい。
 また陽が射してきた。風が強くなった。

D215mピーク 西へ分岐あり。
 215mピークを過ぎたところ 鷹ノ巣の岩山が迫り、その右奥に高御位がゆるく稜線を引く。 

鷹ノ巣山(左端)と高御位山(右端)

 鷹ノ巣、鋭く尖る。
 陽射しが出て、景色もすれ違う人々の表情も明るくなった。
 Geo. sl.220m green welded lapilli tuff
     lapilliもmatrixもgreen、feldsparは白
 

鷹ノ巣山(250m)

E鷹ノ巣山(250m) 12:10 盛り上がった白い岩盤の頂上
 コナラがオレンジに紅葉。
 北西に、桶居山が岩肌を見せて荒々しい。
 播磨灘にさざ波が立ち、きらきらと光っている。上島がぽっかりと浮かんでいる。
 Geo. 黄土色に風化した lapilli tuff (竜山石に近い)
 前に、岩をまとった264.2mピーク。成層str.が見える。ゆるく傾いている。
 Geo. 264.2mピークの西(sl.245m) 登山路を南に外れた岩盤
     成層 hyaloclastite
     成層の厚さ10〜20cm。連続性よい。N80°W、15°N
     lapilliをほとんどふくまず細粒。quartz,feldsparの1mm程度の結晶片をふくむ。
     気泡のつぶれたpumice、black shale の岩片、少量認められる。
     sp.10Y28.3

264.2mピーク下の成層 hyaloclastite

F264.2mピーク 岩のピーク 雑木に入ったところに三角点
 岩の上で弁当。
 山肌にコナラのオレンジが点々と燃えている。
 山すそに、木々にうずもれて鹿嶋神社がたたずむ。
 13:00発
 肩の岩場が馬の背分岐 ソヨゴが赤い実

G245mピーク
 Geo. 風化の進んだlapilli tuff(lapilli少)
 ここを越えると、正面にさえぎるものなく高御位が見える。
 sl.240m 桶居山分岐
 急な岩場を下り、上り返すと、210mピークの手前に新しい分岐。
 左へ、「松の木谷池経由高御位山90分」

登山路より高御位山を望む

H210mピーク このあたりはゆるい。右へ、市ノ池分岐。岩が赤い。
 Geo. sl.255m red welded lapilli tuff

I263mピーク 13:45 アカマツ・コナラの立ち並ぶ登山路の小さな高まり。
 右へ長尾奥登山口分岐。
 緑色とオレンジ色の林の中に、白い岩盤の道が続く。

J280mピーク 13:55通過
 高御位山頂手前 方位盤と天乃御柱天壇

K高御位山 14:05 南に切れ落ちた岩壁の上
 風が、海側から吹き上げてくる。
 北に、明神山、薬師峰の右奥に暁晴山、千町ヶ峰、段ヶ峰、笠形山、千ヶ峰……。
 南に、法華山谷川が伊保港から海に注ぐ。
 播磨灘が、初冬の弱い光ににぶく光っている。
 淡路島、家嶋諸島…。数隻の船がじっと浮かんでいる。
 神社横のベンチは、アナゴがうまかったという話。
 ”飛翔”の記念碑
 Geo. 成層した light greenのhyaloclastite sp.10Y28.4
      水平に近い面で、平行に割れている。
      max.2cmのgreenのrhyoliteの岩片 珪質でhard。
      matrix light greenのtuff、 laminaが観察できる。
      feldspar、quartzの結晶片を含む
      black shale の岩片を少量含む。
 14:45 山頂発

高御位山山頂

 sl.270m 十字路、南東に下る。
 ずっと岩盤
 Geo. sl.190m red lapilli tuff
 下り切り、上り返して、

L180mピーク 東に分かれて、

M小高御位山(185m)
 南西に傾いた夕日が、コナラの紅葉を透かす。
 ざわざわと風の音。
 この時間になって、やっと空気が澄んできた。
 北西に、高御位山が独立峰のような姿でそびえている。
 山肌の木々や岩が、夕日に照らされて、オレンジに染まってきた。

高御位山を振り返る

 Lに戻り、岩盤を下り、鉄塔を過ぎる。
 左右に、ふもとへの分岐がいくつも。
 もう、人に会わなくなった。

N135mピーク 15:30 コナラの下、小さく岩の出たピーク
 Geo. 黄灰色の lapilli tuff、 matrix細粒、lapilli少量
 急坂を登り、さらにゆるく高度をかせぐと、

O170mピーク
 影がうしろに長くなる。沈む夕日にせかされながら進む。
 鉄塔下 15:46 北山分岐
 岩、red
 リュウノウギク、最後まで楽しませてくれる。
 
P北山奥山(183m)
 南に、高砂や加古川の街並みが大きく広がる。
 加古川が悠々と海に注ぐ。
 振り返ると、今日歩いてきた稜線が夕日に染まっていた。

夕日に染まる縦走コース

 木々の間に細い道が続く。
 リュウノウギクの広がる尾根。ノコンギク?も咲いている。

Q160mピーク 16:45
 海がさらに近くなった。

R城屋敷(160m) 米相場中継所跡の説明板

太閤岩 SL115m
 オレンジ色の地衣類、正面に志方城山と飯盛山
 sl.70mコルに下り、ラストの登り。

S100mピーク 陽が西島に沈みかけている。
 今日初めての土の道。薄暗い森の中を、つづらに下る。
 16:45 峠に下った。

自転車で、ローソンに。 17:04
山行日:2010年11月28日

山頂の岩石 後期白亜紀 宝殿層 成層ハイアロクラスタイト

 高御位山には、後期白亜紀の宝殿層が分布している。主にハイアロクラスタイトから成り、溶結火山礫凝灰岩や流紋岩溶岩をはさんでいる。各ポイントの岩石は、上記のようにフィールドノートに記した通りである。
 観察できたハイアロクラスタイトは成層していることが多く、水中に噴出した流紋岩溶岩が急に冷やされて粉々に壊れ、それが水流によって運搬され、その後堆積してできたと考えられる。このような岩石を、「成層ハイアロクラスタイト」という。

 採集した山頂付近の岩石を切断し、研磨した面を観察した。

高御位山山頂のハイアロクラスタイト
研磨面、写真の横の長さは3.7cm

 数mm程度(最大20mm)の緑灰色の火山礫が多く含まれている。火山礫は、珪質の流紋岩の岩片で、石英と斜長石の斑晶が含まれている。
 また、火山ガラスが繊維状に集まった軽石や黒色頁岩の岩片も少量含まれている。
 基質は、淡緑灰色の細粒火山灰の集合したもので、石英・斜長石・黒雲母(?)の結晶片が含まれている。黒雲母と思われるものは、完全に変質している。
 基質には、葉理と思われる層状構造が認められる。葉理は、層理面に沿った節理にやや斜交している。

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