養父市のクロム鉄鉱
 2007年夏の一日、但馬を巡って鉱物を調べ採集しました。参加者は、何よりも石が好きという6人。兵庫の地質や鉱物の研究をライフラークとしている精鋭メンバーです。
 ポイントは、@養父市のクロム鉄鉱、A氷ノ山のオパール、B中瀬鉱山の珪ニッケル鉱・ベルチェ鉱の3地点。@とAは、地元のKMさんに案内していただきました。また、BはMさんのとっておきの産地です。

 朝まだ暗い播但自動車道を、稲妻光る北に向けて走りました。幸いなことに、雨は朝の打ち合わせをしているうちに上がりました。そして、この日は新しい発見もあり、参加者の鉱物に賭ける情熱を感じながらの充実した一日となりました。
 残念ながら、産地保護のためにこのHPでは各ポイントの詳細な位置を明らかにすることができません。但馬の鉱物の多様性や、今でも新しい鉱物産地の発見が可能なことを感じていただけたら嬉しく思います。


養父市の鉱山跡へ

 養父市の山中に、地元の人しか知らない古くて小さな鉱山の跡があります。鉱山の名前さえもう分かりません。KMさんの案内によって山の中の踏み跡をたどりました。
 すると、山の斜面に地形的には不自然な高まりがありました。土をかぶっていますが、これがその鉱山のズリです。坑道の入り口(坑口)は完全にうまっていますが、入り口の天井らしき石が地表にいくつか並んでいます。

 坑口跡から流れ出した水が地下を通り、ズリの上で小さく湧き出しています。この水で、ズリの石を洗って観察しました。
 まず見つかったのが、石英中に墨を流したように見える「銀黒」。輝銀鉱を主とする銀の鉱石です。周囲の岩石は蛇紋岩なので、この石英は蛇紋岩中に貫入した石英脈によるものと考えられます。

 金属鉱物の専門家のMさんが、蛇紋岩の中に黒く斑状に入ったクロム鉄鉱を見つけました。それらの中には、クロム鉄鉱が集まった黒い岩石もあります。
 クロム鉄鉱を採っていると、水溜りの中に黒い石の頭が出てきました。クロム鉄鉱の塊状に濃集した岩石です。表面は、クロム鉄鉱の粒状の結晶が浮き出てざらざらしています。緻密な岩石で、ハンマーで石の端を叩いてみると鋭利なかけらが音を立てて飛んでいきました。
 30分後に掘り出されたその石は高さが35cm程度、水に濡れて黒く光り、一部は鉄が溶け出して石の表面を褐色に染めています。Mさんによると、クロム鉄鉱の標本としては日本最大級ということです。
 水溜りを掘っていると、おもしろいことがありました。ズリの下に黒い粘土があるのですが、その粘土は粘り気があって手で丸めるとだんごか餅のように固まります。よく見るとつやがあります。これは、クロムを多く含んだ粘土なのです。

古い鉱山跡のズリ 掘り起こしたクロム鉄鉱のかたまり

ク ロ ム 鉄 鉱

 クロム鉄鉱は、クロムと鉄の酸化鉱物。採集したものを観察しました。
 強い磁石を少しひきつけるので弱い磁性があるのかもしれませんが、明らかに磁鉄鉱とは異なります。条痕色は、特有のチョコレート色を示しました。
 双眼顕微鏡で、蛇紋岩中に斑状に含まれているクロム鉄鉱を観察しました。クロム鉄鉱は、黒くて小さな粒として点々とし、周囲より飛び出しています。結晶形はほとんど示していませんが、ときどき正八面体の三角形の面らしきものが見られました。

クロム鉄鉱(写真横5mm)
蛇紋岩中に粒状結晶が斑状に入っている

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■ 場 所 ■ 養父市
■探訪日時■ 2007年8月23日

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