住吉山(200.4m)・高倉(257.4m)
   福崎町  25000図=「北条」


福崎町の低山、住吉山から高倉山を歩く


余田新池から望む住吉山(右のピーク)

 住吉山は福崎町の東域に位置する標高200.4mの低山である。そこから尾根伝いに高倉山(257.4m)を経由するコースが、最近になって整備された。

 八千種郵便局の角を曲がり、坂道を上ると戦争慰霊塔が立っている。その先の配水池の左脇に住吉山の登山口があった。

住吉山登山口

 雑木が密生した中に広い登山道がついていた。ミンミンゼミにツクツクボウシ・・・。木の上から、セミの声がにぎやかに聞こえてきた。
 古いコンクリートの建物があって、その下にキンミズヒキが黄色の花をつけていた。
 道はそこから狭くなり、傾斜も増してきた。登山道が、有刺鉄線に囲まれたところにぶつかった。そこを回り込んで上に出ると、今日初めての展望が広がった。
 眼下に青々とした田園風景。いくつものため池が、空の青を映している。南に春日山が近く、その右に畑山が重なる。西には七種山、明神山、棚原山、広峰山系と稜線がつながっていた。
 畑山と広峰山系の間から播磨灘が覗き、その向こうに男鹿島が浮かんでいた。視程の良い日で、播磨灘の青や男鹿山の岩肌の白褐色が鮮やかだった。

キンミズヒキ 登路より西を望む

 そこからさらに登っていった。カナメモチの樹皮が四角く割れてモザイク模様をつくっていた。リョウブやコナラの木が少し大きくなったと思ったら、住吉山の山頂に達した。
 山頂には、三角点と新しい標識。周囲は木々に囲まれ、見上げると青空に白い綿雲が足早に流れていく。木々の枝葉が強い風に大きく揺れ、地面の木漏れ日は渦を巻くように激しく揺れた。

住吉山頂上

 山頂を越して急な坂を下ると、道はそこからゆるくアップダウンを繰り返した。
 尾根の自然林に細い道が続いている。サトキマダラヒカゲ、あるいはヤマキマダラヒカゲかもしれないが、うす褐色のチョウがひらひらと飛んでは落ち葉に止まった。

雑木林の登山路

 標高215mの小さなピーク。木々を抜けて風が吹き、心地よい。このあたりから、ヒノキの植林地となった。
 ヒノキ林は手入れがなされず荒れていて、倒れているものも多い。ほとんどが、根こそぎ南に向かって倒れている。十数年前の台風の被害がそのまま残っているのかもしれない。

 そのまま尾根を東に進み、最後にひと登りするとそこが高倉山の山頂だった。
 尾根の小さなコブに三角点と山名を記した標柱。そのまわりがコケに覆われ、小さな木漏れ日がまだらに揺れる。
 何か日本的な美しさを感じる静かな山頂だった。木々の間から北西方向だけが開け、七種の山々とその背後の雪彦山や鉾立山が見えた。

高倉山頂上 高倉山より七種山を望む

 山頂の反対側に足を踏み出したとたん、登山道にいたホオジロが三羽いっせいに飛び立った。薄暗い尾根道を歩いていると、今度はヒカゲチョウが横切った。

 加西市との境界尾根と交わったところが、標高260mの小ピーク。コナラ、ネジキ、シラカシなどの木々の中に、タカノツメの白い樹肌が映える。
 アゲハチョウは山頂を知っているといつも思う。このピークでも、キアゲハとモンキアゲハが舞っていた。
 このピークは分岐点になっていて、ここにも標識が整備されていた。ここから、境界尾根を南に下った。

260mピーク分岐

 道は踏み跡ほどに細くなった。ところどころコシダにおおわれている。ひろった木の枝でクモの巣を払いながら進んだが、少しでも油断するとピシャリと顔に張りついた。
 道の脇に大きな岩が転がっていた。岩は、うすオレンジ色のチャート。ここまでずっと頁岩だったが、ここでチャートが出てきた。

 下った標高190mのコルにも分岐の標柱が立っていた。ここで方向を変え、西へ下った。
 あい変らずにぎやかなセミの声に囲まれて、雑木の谷道を下る。ときどき水の流れが浮かび上がっていて、道はぬかるんだ。
 下っていくと竹やぶが現れ、その竹やぶを抜けると田畑の開けた余田新池の上に出た。

 新池の堰堤から、低いが形のよい住吉山が見えた。高倉山は、なだらかな稜線で、その山頂がどこかわからないぐらいだった。キタキチョウがのどかに飛んでいると思ったら、私の目の前でシオカラトンボにパクリと食われてびっくりした。

 農地の広い道をゆっくり歩いた。あぜには、キツネノマゴやニラ、溝の上にはノアズキやセンニンソウが花をつけていた。どれも初秋の花。畑のコスモスも、ちらほらとピンクや白の花をつけていた。

キツネノマゴ ノアズキ
センニンソウ ニラ

山行日:2016年8月31日

余田配水池〜住吉山(200.4m)〜高倉山(257.4m)〜260mピーク分岐〜190mコル分岐〜余田新池〜余田配水池
 2015年、福崎町山の会によって住吉山〜高倉山登山道標識設置が行われた。今回、このコースを歩く。
 登山口は、八千種郵便局を曲がって坂道を登った余田配水池の左脇。広い駐車スペースがある。ここから住吉山、高倉山、260mピーク分岐と進む。
 260mピーク分岐の近くからこの山塊の尾根がさらに東へ続いている。試にそちらに進んでみたが、230mあたりで道が消えた。
 260mピーク分岐に戻り、加西市との境界尾根を190mコル分岐まで下り、そこから谷道を余田新池へ下った。

山頂の岩石 住吉山 丹波帯 八千種コンプレックス 頁岩 三畳紀後期〜ジュラ紀
        高倉山 丹波帯 若井コンプレックス 頁岩 三畳紀後期〜ジュラ紀
ピンク色のチャート(転石)
 今回のコースで見られた岩石の多くは、黄土色に風化した頁岩であった。
 ハンマーでたたくと劈開に沿って割れたり、ボロボロと砕ける。
 260mピーク分岐手前には、硬い細粒砂岩が見られた。また、その分岐を南に下ったところでは、うすオレンジ色のチャートが見られた(写真左)。
 どれも、三畳紀後期〜ジュラ紀に付加した丹波帯の岩石である。
 二つの山頂に露頭はないが、周辺の岩石から頁岩だと考えられる。住吉山と高倉山は違う層準の地層とされているが、今回のコースを歩いただけではわからない。

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