ガスに包まれた青い吊尾根
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Ca.580m鉄塔より水剣山を望む
(左 水剣山山頂、右 808mピーク) |
808mピーク南より水剣山を振り返る |
水剣山……山名の由来は分からないが、この山の雰囲気を伝えるいい名前である。隣の808mピークとはやせた稜線で結ばれ、2つのピークを結ぶ吊尾根の姿は印象的である。
先日、黒尾山の山頂から見た水剣山は、青い山体に白く雪をまとっていた。今朝、山に向かう途中で山崎町の市街地から見上げると、長水山の右奥にやはり青くその吊尾根を張っていた。
ステゴザウルスの骨板
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大谷の集落で道を尋ねると、砂防堤の先に送電線巡視路があるという。しかし、巡視路の入口を見逃してしまい、送電線の真下の急斜面にとり付いた。
暗褐色の岩の間や上を埋める黒土や落ち葉に、わずかに踏み跡がある。岩を手でつかみ、雑木の細い幹を支えにして登っていくと、左手に浅い谷を見下ろす尾根上の登路となった。
やがて傾斜はますます急になり、踏み跡も完全に消えた。ステゴザウルスの背中の骨板のように、角のある大きな岩が連続して現れる。何度も立ち止まって呼吸を整えた。
岩石をたたくと平らにぱりぱりと割れ、せんべいのような標本がとれておもしろいので、時間をさらにロスしていった。
ようやく、尾根に立つ鉄塔にたどり着いた。深い谷を隔ててはるか向こうに吊尾根が見える。水剣山山頂の下では、形の乱れた霧がゆっくと動いている。808mピークの山ひだからは、霧が湧き上がっている。空は暗くなって、小さな雨が落ちてきた。
ここから、尾根を北へたどって山頂をめざした。鉄塔から続く伐り開きも、しだいにあやしくなり、次の766mピークの手前で消えていった。
山頂手前の最後の上りで、薄いガスの中に入った。水蒸気で飽和した空気にメガネのレンズが曇る。地面の落ち葉はじっとり濡れ、どの岩もうす緑の蘚苔類や緑のコケ類で覆われている。突然大きな音がして、イノシシかシカかが斜面を駆け下りていった。
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| 水剣山山頂 |
Ca.570m鉄塔から望む長水山 |
色あせた赤いテープの結ばれたアセビの下に、山頂の三等三角点が埋まっていた。白いガスが四方の視界をさえぎっていたが、周辺は意外と明るく澄んでいた。細長い氷の結晶が降ってきた。ヤッケにそれがあたって、パラパラと音を立てる。氷の結晶は、ヤッケの上で真ん丸い小さな水滴となって、紺色の生地に吸い込まれていった。
山頂から808mピークをめざす。ガスで視界がきかない中、山頂からこの尾根に乗るのが難しかった。乗ってしまえばやせ尾根なので迷うことはないが、踏み跡はほとんどなくからみつく枝やとげが進行を妨げた。
反射板の立つ808mピークから、南へ尾根を下っていった。かすかな踏み跡をたどって鉄塔まで歩くと、長水山が姿を現した。山頂ドームから稜線をピラミッド型に左右に下ろし深く山ひだを刻んだその姿は、南から見る山容とは異なってたくましい。
鉄塔からは、巡視路を下る。雑木の間からときどき現れる長水山は、見るたびに近くなり、また高くなって下山する私を迎えてくれた。
山行日:2003年2月23日
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