蘇武岳A(1074.4m) 豊岡市・香美町 25000図=「栃本」
奥神鍋スキー場から雪の山頂へ
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| 登路より蘇武岳を望む(写真中央が山頂) |
但馬の沿岸部に多量の雪をもたらした厳しい冬型の気圧配置が、日曜日にようやくゆるんだ。スキーとシールの出番だ。奥神鍋スキー場から、林道を歩き蘇武岳をめざした。
リフト券売り場で聞いてみると、登行リフトだけでも400円という。早速シールをつけて、節約とウォーミングアップを兼ねてリフトの下を歩いた。スキー場に入ってから、3本のリフトを乗り継いで「四季の森コース」の上に出ると、そこはもう標高811mの小さなピークだった。
軽快な音楽がスピーカから流れ、上空には青空が広がっていた。スキーヤーやボーダーが、次々とリフトから降りてくる。好天に恵まれた休日のスキー場は華やいでいた。
スキー場を背にして、ここから山に入っていった。ブナやトチノキの美しい森を右に見て下ると、そこには林道が延びてきていた。林道の雪面には、一筋のトレースがついていた。ストックの跡から、2,3人が歩いた跡だと分かった。
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| 「四季の森コース」の上 |
林道を進む(一筋のトレイルがあった) |
スギの木は、枝のあちこちに雪のかたまりを丸くのせていた。ときどき風が吹くと、そこから雪が飛ばされ、冷たい空気の中をきらきら光りながら舞った。
斜面から、雪まくれが線を引いて転がり落ちていた。雪まくれには、いろいろな大きさや形のものがあっておもしろい。上手に転がったものは、輪切りしたバームクーヘンのようだった。
標高で50mほど登ったところで、最初の休憩。からだは早くもほてり、上着をぬぎ、くもってきたゴーグルをはずした。雪の深さは2mほど。表面はやわらかく、スキー板は30cmほど沈んだ。
スギの枝についた雪が、その重みで枝を折り、、折られた枝ごと雪だるまのようになって林道へ転がり落ちていた。ときどき、ノウサギの足跡が道を横切っていた。
急斜面をヘアピンに曲がって進むと、傾斜がゆるくなって、三川山と結ぶ尾根に出た(Ca.910m三差路)。ここから道は、尾根の西側に回りこんで、蘇武岳へ向かっている。
トレースが消え、新雪のラッセルとなった。尾根の西に出ると、冷たい風を感じた。地表から吹き飛ばされた雪が、からだにあたった。夏、このあたりにサンカヨウが真白い花をつけていたのを思い出した。今は、雪が深く積もり、カーブミラーは丸い鏡だけを雪面に出していた。
ゆるく上っていた林道が傾斜を失った。下山時にシールをはずすのはここだと決めて、ぐるりと一回りして雪の上にしるしをつけた。
若いブナの林が続いた。カキツバタ群落の標識を過ぎると、ブナやリョウブの枝に霧氷がつき、その白が空の青に映えていた。
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| 雪山の光景 |
リョウブやブナの霧氷 |
いつの間にか正午を過ぎ、雪が重くなった。シールに雪が張り付き、思うように進まない。おまけに、シャリバテ……。スキーをはずして、ザックにすわり、昼飯にした。
シールに、ワックスを塗ると、またよく滑るようになった。一歩ごとに、雪を踏む音がギュッ、ギュッとなる。プラブーツのきしむ音が、周りの雪に吸い込まれた。
標高1000mを越えたあたりから、白くガスってきた。かたい粉雪が降り始め、ウェアにあたってパチパチと音を立てた。
長い林道歩きを終え、ようやくドームのように盛り上がった山頂の下に達した。
ビンディングのヒールを立て、雪の急斜面を登った。雪は深く、ラッセルが重い。山頂までわずかなのに、なかなか届かない。10歩進んでは、休んで息を整えた。立ち止まると、上空から低い風の音が聞こえてきた。
13時48分、山頂に達した。スキー場から歩き始めて、3時間が立っていた。
山頂は雪にすっぽりとおおわれ、大きな標柱も完全に隠されていた。あたりは濃いガスに包まれ、何も見えない。うすい灰色のガスの中に、雪面と降る雪の粒だけが白かった。
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| 林道のカーブミラー |
山頂 |
山行日:2010年1月17日