白岩山③(973m)~高畑山②(983.7m)
神河町  25000図=「粟賀町」


白岩山から高畑山を越えて追上川を下る
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猪篠川畔より白岩山を望む(2022年11月2日撮影)

 猪篠川の川辺を、ミゾソバの花がピンク色に染めていた。その流れの向こうに立つ白岩山の山頂は、ガスに隠れていた。
 猪篠から白岩山、高畑山と越えて、追分川を生野峠へと下った。

 八幡神社を出発。空は厚く雲におおわれている。この季節、北に高気圧があるとこのあたりは雲におおわれやすい。
 奥猪篠の集落を抜けて西コースの登山口へ向かう。ノコンギクの花の色は、薄紫色や白色。白色の花弁の裏を見ると、うっすらとむらさきがかっているものがあった。
 道端には、イヌタデやキツネノマゴが咲き、チカラシバの黒い穂が群れていた。

ノコンギク   キツネノマゴ

 朝の空気は冷たかったが、登山口に着いたころには体は温まっていた。山道を歩き始めると、すぐに防獣ゲート。
 そこには、「山頂では南の方向に姫路港が見えます。南東方向には明石海峡大橋が・・・運がよければ見えます。見えれば幸運があるかも・・」という案内。
 
 道は小さな沢に沿って上っていた。落ちたスギの枝葉が積もって、道を隠そうとしていた。その上の踏み跡を探しながら登っていった。

スギ林の下の単調な上りが続く。しだいに傾斜が急になってきた。
 ところどころに大きな岩が出ていた。ミツマタとマツカゼソウが林床に目立ち始めた。ここもまた、シカが植生をつくっている。
 谷はしだいに広がって浅くなり、水音も小さくなってきた。地面のガレ石や倒木はどれもコケにおおわれていた。

スギ林の登路

 朽ちかけた丸太階段が、落ち葉の下に現れた。
 登山道は、巨大な岩壁の前で折れ、そのあたりからつづらになって上っていた。ずっと急な坂が続いた。なかなかハードなコース。
 見上げると、スギ木立の向こうに空が白く見えた。そこが尾根。
 今日初めての日差しが木漏れ日となって林内に広がった。マムシグサの朱色の実が光を浴びて、つややかに光っていた。
 拾った二本のスギの枝を杖にして登る。斜面に立ついくつかの大きな岩の横を抜けると尾根に達した。

 尾根には、スギやヒノキの間にはっきりした登山道があった。玉ねぎ状風化の安山岩が、尾根に一つ顔を出していた。


 尾根の登山道 安山岩の玉ねぎ状風化 

 アセビが現れた。ススキも穂を伸ばしている。ススキの穂の間に、段ヶ峰や千町ヶ峰が見えた。
 東コースとの合流点はススキの中。背たけを越えるススキを抜けると、林床にササが現れた。
 岩がちになった尾根を登り詰めると、白岩山の山頂に達した。

 山頂には5mを越すような大きな岩がいくつも配されている。
 かつては岩の周囲に背の低いササが広がり「雲上の日本庭園」と称されていたが、今はヒノキが迫り岩の間はアセビやススキにおおわれてしまった。
 山頂の案内板の裏に、何枚もの木の札が掛かっていた。見ると、大山小学校の児童の学年や名前が書いてある。日付は、ちょうど10年前の2012年10月17日のもの。
 白岩山は大山小学校の校歌にも詠われていた。小学校の統合によって大山小学校はなくなったが、白岩山を慕い、誇りに思う気持ちは村にずっと引き継がれているに違いない。

白岩山山頂  大山小学校児童の登頂記念板

 空は雲におおわれていたが、視程は良かった。南に突き出た岩に立つと、七種の山々、明神山、雪彦山、暁晴山・・・。播磨の山並みが幾重にも重なっていた。
 遠くに播磨灘がにぶく光り、淡路島や小豆島の島影がうっすらと線を引いている。手前には、家島の島々が浮かんでいた。
 笠形山の北面が斜光に陰影を強め、その左に明石海峡大橋が見えた。きっといいことがある・・・はず。
 双眼鏡で景色を眺めていると、視野をイワツバメが横切った。

 白岩山山頂から西を眺める 白岩山山頂より望む笠形山

 白岩山から北へ、高畑山をめざした。ヒノキ林の下に切り開きがあったが、次のピークへの上りはアセビにおおわれていた。
 アセビのすき間を抜けたり、アセビを踏みつけたりしながら進んだ。ピークを越すと、また道が開けた。薄日を浴びた高畑山が北に浮かび上がり、その右奥に粟鹿山が見えた。

高畑山が見えた(右奥は粟鹿山)

 981mピークの手前は尾根が広がっていた。ヒノキ林の林床はすいていて、どこでも歩けた。露頭もなく、どんどん進む。
 再び尾根は狭くなった。あちこちに丸く広がるオオスギゴケの緑がみずみずしい。
 尾根の上に、一本の枯木が立っていた。彫刻家のつくったオブジェのように力強い造形。その存在感に驚いた。
 高畑山への上りにさしかかると、右手に今日初めての自然林。木の葉が黄やオレンジに染まっている。

オオスギゴケ 枯木のオブジェ

 高畑山の山頂には、大きな反射板が立っていた。青い空に、発達した積雲が足早に流れていった。

 高畑山山頂

 高畑山からは、神河町と朝来市の境界を下ることにしていた。この境界は、標高750mで尾根から谷に下り、そこから追上川に沿っている。
 尾根の傾斜は急だったが、植林の下がすいていて順調に下ることができた。しかし、途中で境界尾根から外れ、予定地点より上流で谷に下りてしまった。
 谷は険しい岩場で、倒木も多く下れそうにない。もう一度谷の上に登って、植林帯を斜めに下り750mの予定地点に下りた。
 そこからも、谷には険しい岩場が連続していた。いくつもの滝が連なっている。高巻きをくり返しながら、少しずつ高度を下げていった。

高巻き地点より追分川の流れを見る 追分川の滝

  谷は、素晴らしい露頭が続いていた。しかし・・・、いつの間にか岩石ハンマーがなくなっていた。高巻きの途中で落としてしまったのだ。
 地質を調べることはできなくなってしまったが、安全に集中することができたので、かえってよかったのかもしれない。
 傾斜は少しずつゆるくなっってきたが、谷の岩場はずっと険しかった。
 砂防堤を過ぎると、ようやく右岸に道が現れ、生野峠へと下った。

山行日:2022年10月30日

八幡神社~西コース登山口~白岩山(973m)~高畑山(983.7m)~追上川~生野峠 map
 八幡神社前の駐車場に車を止める。ここには猪篠の案内板があって、「白岩山登山マップ」が置かれている。
 白岩山へは東コースと西コースがあるが、今回は西コースで登った。尾根までの登山道は、一部で消えかかっていた。
 高畑山へは尾根伝いに進む。高畑山から、市町境界を生野峠まで下った。

山頂の岩石 白岩山 白亜紀後期 峰山層 安山岩
        高畑山 白亜紀後期 笠形山層 溶結火山礫凝灰岩
 白岩山には、安山岩溶岩が分布している。暗灰色の緻密で硬い岩石である。斜長石の斑晶が目立つ。
 有色鉱物は単斜輝石と思われるが、ほとんど変質している。緑簾石の生じているところが多い。

 白岩山から高畑山への尾根上で、安山岩から溶結火山礫凝灰岩に変わった。
 
 高畑山の山頂には、溶結火山礫凝灰岩が分布している。灰色~帯褐灰色で、石英・長石・黒雲母・普通角閃石の結晶片を多くふくんでいる。
 強く溶結していて、溶結レンズが明瞭である。

白岩山の安山岩(横1.7mm) 高畑山の溶結火山礫凝灰岩(横1.7mm)

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