白 岩 山    (973m)              神崎町  25000図=「生野」
地元の村の聖なる山、白岩山
 
白岩山
 播但国境付近、越知川と猪篠川に挟まれた地域に900mを越す山塊がある。その中で、西から東に稜線をせり上げ、頂上にドーム状のコブを乗せた山が白岩山(しらいわさん)である。
 播但自動車道を走るたびに、車窓からこの山を眺めていた。高気圧におおわれた秋晴れのある日、以前から気に止め、そして憧れていていたこの山に登った。

 コンクリート舗装の林道を歩き、渓沿いの登山道を上っていった。きれいに下刈りされたスギの林は風通しがよく、ひんやりした渓の空気が心地よい。
 スギの植林地帯を出て、頂上が近づくと高い木がなくなった。ササが多くなり、穂をつけたススキが風に揺れている。アセビは、もう赤緑色の小さなつぼみをつけていた。ヒノキも植林されているがどれもまだ背が低い。その中に、暗灰色の安山岩の巨岩がごつごつと露出し、それらが全体としてドーム状の頂上をつくっていた。

 山頂の岩の上に立つと、高度感を十分に感じた。南には、大きく秀麗な姿の笠形山が座っている。そこから右へ、七種の山々、明神山、雪彦山、暁晴山が並ぶ。暁晴山の右奥に薄く見えるのは三室山のようだ。昨年の秋に歩いたフトウガ峰から段ケ峰への水平に近い滑らかな稜線が見える。快晴に近いが、やや白く靄っているようでもあった。

白岩山頂上から笠形山を望む(手前はつぼみをつけたアセビの木)
 下山して、車を止めたところに戻ると、年輩の方が一人木材を削る作業をされていた。その方に、白岩山について次のような話を教えてもらった。
 植林される前は、山の上の方には広く笹原が広がっていた。視界を遮るものがない頂上からは、遠く飾磨やその向こうの瀬戸内海に浮かぶ船まで見えた。地元の人は、この笹を刈り、それで屋根を葺いていた。笹の屋根は茅などよりずっと強く、葉が落ちても茎はずっと傷まなかった。この笹(クマザサ)を、この辺ではイザサと呼び、それが猪篠(いざさ)の地名となった。小学生を連れて上がったことがあったが、そのときは猪篠の村の中からまっすぐに登っていった。急勾配で、かなりきつい登りということであった。
 実は前日、猪篠に住む友人に偶然会った。「白岩山?それはうちの山や。よく登っている。小学生が毎年登っているし、元旦に登ったりもする。それに、山火事の時にもよう行った。頂上の案内板を書いたのは、自分や。」という話を、その友人から聞いていた。

 林道を登っていったとき、スギの木立の間から白岩山の頂上が突然現れる地点があった。岩が積み重なったその頂上のドームに朝日が当たり、そこには崇高な気配が宿っていた。
 白岩山の南麓に在り、その山に抱かれた猪篠の村。この村にとって、白岩山は生活の場というだけではなく、聖なる山として誇り高くそびえる山なのである。

山行日:2000年9月18日
山 歩 き の 記 録 (ルート)

行き:猪篠浄水場(標高470m)〜林道(地形図実線路)〜登山口(標高650m:地形図実線路端)〜白岩山頂上
帰り:行きと同じ
山頂ドーム
 国道312号線を猪篠川に沿って北上し、猪篠の信号を右折する。越知ヶ峰林道との分岐を過ぎ、八幡神社を越えるとそのすぐ先の道路右側に、「白岩山案内図」がある。ここから、白岩山南麓に張りついたような猪篠の家々と、そのすぐ後ろの白岩山の頂上付近の稜線がよく見える。猪篠の集落の中の道をいったん左に回り込んで東に進むと、そのまま林道に入る。コンクリート舗装された林道(地形図の実線路)を進むと、浄水場がありその前に広い空き地があったので、ここに車を止める。スギ林の中のコンクリート舗装された林道を、真っ直ぐに登っていく。かなりの急坂である。途中、道は大きく湾曲するが、そのとき杉の木立の間に、白岩山の頂上ドームが見えた。林道を地形図実線路の端(まだ林道は先に延びている)まで歩くと、登山口がある。登山口には、登山路を示す「白岩会」の案内板が立っている。登山口からは、小橋を渡り渓流に沿った道を登る。標高800mの高さまで渓流沿いを登り、鹿よけのネットをくぐって白岩山の東斜面を登っていく。スギの林の中につづら折りの小径が続いている。ところどころに、「白岩会」の標識が立ち、頂上の方向を教えてくれる。やがて、頂上ドームの下の林道に出る。頂上ドームの南を、西に大きく回り込むと尾根道に合流した。ごつごつした巨岩の間の笹の中の道を登り、頂上に達した。

 
   ■山頂の岩石■ 白亜紀後期 峰山層  安山岩

山頂付近に露出する安山岩
 白岩山には、峰山層の安山岩が分布している。頂上ドームも、山体と同じ安山岩から成り、地表にはこの安山岩の大きな岩塊が積み重なるようにして露出している。不規則な方向の弱い節理が観察される。
 安山岩は、暗灰色緻密な岩石で斑晶として斜長石、輝石が含まれている。山頂に露出する岩石の表面には、鉱物が溶脱された跡の小さな穴が点々と開いていた。
 

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