神河町の障子岩 神河町大山の険しい山の中に、「障子岩」があります。山の急な斜面に立つ岩塔(トア)の上が平らになっていて、その表面が障子模様になっているのです。この障子模様は、溶結火山礫凝灰岩にできた柱状節理によってつくられました。 障子岩の周辺には、可憐な花が咲いていました。スギの落ち葉の間に、エビネやシハイスミレ。タニギキョウが、あちこちにかたまって小さな花を付けています。 岩の下には、フタリシズカやキランソウが咲き、コガクウツギの装飾花が暗い森の中に白く浮かび上がっていました。 障子岩の上に立つと、眼下には猪篠川の流れや大山の家々、その上には暁晴山から段ヶ峰へと続く山並みが一望できました。 ※現地を太田茂宏氏に案内していただきました。心より感謝いたします。 1.障子岩 障子岩があるのは、大山東方の障子場(しょうじば)と地元の人たちに呼ばれている山(882m)です。障子場という山の名前は、障子岩がある山ということからつきました。 障子岩には、大山の七宝寺から登っていくことができます。七宝寺周辺は、「やすらぎの森」として整備されていますが、その上の方に「狐の踊石」という岩があります。ここから障子岩に向かいます。 標識に従って尾根を登り、薬師山の三角点(510.4m)の脇をかすめ、さらに東へ進みます。ゆるかった傾斜が途中から急になり、間伐されて転がるスギの木を幾本も越えて登ると、標高720m地点に障子岩が立っていました。 岩の高さは18m、岩の上の平らな面は南北13.5m、東西7.5mです(いずれも実測)。岩の上は、二方向の割れ目によって格子模様ができています。この格子模様が、障子の桟(さん)のように見えるのです。 格子模様の一つの四角の大きさは30〜50cm程度。割れ目から岩石が風化していくため、そこが溝のようにへこみ、土や細かく砕けた落ち葉がたまっています。逆に、四角の中央部は周辺部より少し盛り上がっています。 この岩の割れ目は、溶結火山礫凝灰岩の柱状節理です。火山噴火によって堆積した火砕流堆積物が冷えるときにできました(冷却節理)。 このあたりの岩石は、節理が一方向に発達して板状節理となることが多いのですが、ここでは節理が二方向に発達したためにこのような柱状節理となったと考えられます。 節理の方向をクリノメーターで測ってみると、N35°W、90°とN60°E、90°でほぼ直交しています。
岩の上から下りて、岩塔の側面を見ると節理のようすがよく分かります。下の2枚の写真は、この岩の東側の面です。岩の上部は、節理が二方向の発達していますが、下部は一方向の節理が卓越して板状節理に移行しています。
標高600m地点に、新鮮な岩石を見つけたので(転石)、標本として採集しました。帯褐灰色で結晶片に富む溶結火山礫凝灰岩です。結晶片として、石英・長石・黒雲母・角閃石を含んでいます。基質は、ガラス質で緻密です。 この岩石は、白亜紀後期の火山噴火による火砕流が堆積してできたもので、笠形山層に属しています。笠形山層からは、約6600万年前というフィッション・トラック年代が得られています(吉川他、2005、「生野」地域の地質)。
3.障子岩とロックフォール ■岩石地質■ 溶結火山礫凝灰岩(後期白亜紀 笠形山層) |