千町ヶ峰②(1141.3m)     神河町・宍粟市   25000図=「神子畑」


アセビをこいで展望の山頂へ
 map

千町ヶ峰山頂(うしろに氷ノ山)

 アセビをこいで辿り着いた千町ヶ峰の山頂には、展望が大きく広がっていた。

 南千町ヶ峰(985.6m)との鞍部から、神河町と宍粟市の境界尾根をたどり千町ヶ峰を越して千町峠近くへ下った。
 スタート地点から弘法の池まで道はないが、下山すると森林基幹道を自転車でスタート地点まで走り下れるコースである。
 
 朝から雲一つない青空が広がっていた。林道から急な斜面を登って山に取りついた。スギ林の境界尾根を登っていく。スギの落ち葉の上に、踏み跡がうっすらと残っている。
 急な坂が続いた。樹上でヒガラが鳴き、遠くからツツドリの声が聞こえてくる。林床にはチゴユリが咲いている。シハイスミレはもうとっくに花期を終え、丸い蒴果をつけていた。

チゴユリ

 尾根に防獣ネットが現れ、スギ林にミズナラやネジキが交じり始めた。アセビの枝が地を這うように伸びていた。
 スギ林からヒノキ林に変わり、またスギ林となった。カッコウが鳴き始めた。今年初めて聞くカッコウの声。
 露頭がほとんどなく岩を調べることができないので、けっこういいペースで登っていった。
 ミズナラ、リョウブ、アカマツ、ネジキ・・・、若葉の自然林に入った。キビタキやオオルリやゴジュウカラの声が森に響く。

 尾根に大きな岩が出ていた。溶結火山礫凝灰岩で、節理が発達している。カスミザクラが、節理による割れ目に根を張って岩の上に立っていた。

ミズナラ・リョウブ・アカマツ・ネジキの林  岩に根を張るカスミザクラ

 高度を増していくと、尾根の周辺にはアセビが広がった。アセビの枝葉を分けたり、踏みつけたりして進んだ。ときどきシカのつくった道が現れた。その道には、シカの糞があちこちに散り、土を掘り返した跡があった。
 シカの食べないアセビだけが茂り、アセビの間に残されていたササも見事に食いつくされていた。
 日の当たるところに、ヒメハギが咲いていた。

 アセビの森 ヒメハギ

 1100mのピークは、アセビの丘。イヌシデがその上をおおっていた。ピークを越し、さらにアセビをこいで進むと弘法の池に達した。
 弘法の池は、小さな水たまり。落ち葉で半ば埋まっているが、水面に空の青を映している。畔をおおうコケの緑がみずみずしい。イモリが落ち葉の下から這い出てきた。

 弘法の池 弘法の池のコケ

 弘法の池から、道がついていた。アセビとアカマツだけの林をゆるく登っていく。
 マムシグサが生えていた。チラチラと飛んでいたアオスジアゲハの青が、青空によく映えた。

 千町ヶ峰の山頂は大きく展望が開けていた。
 東に段ヶ峰が平らな山頂を広げている。その左には、粟鹿山がかすんでいる。右には、手前に平石山から高星。その向こうに、千ヶ峰から笠形山へと稜線が延び、さらに夜鷹山、暁晴山へと続いていた。

 山頂から望む千ヶ峰~笠形山

 北には、一山、阿舎利山、三久安山、藤無山と並び、その先に三室山から氷ノ山が稜線を引いていた。
 遠くの山ほど青く見える。目と山の間に空が入りこんでいるのだ。
 

 山頂から望む三室山~氷ノ山

 山頂の周りではタニギキョウが咲き始めていた。
 数種類のチョウが舞っていた。じっと座ってカメラを構えていると、コジャノメが飛び立ったササの葉にまた戻ってきた。
 二羽のイワツバメが、風を切って横切ったかと思うと、翼をひるがえして素早く方向を変えた。

 咲き始めたタニウツギ 山頂のコジャノメ

 山頂から東へ向かった。しばらくは、ほとんど平らな道。北側には自然林が豊かに広がっている。ミズナラにウリハダカエデやネジキなどが交じった林。南側は、シカの食害によってアセビばかりが繁茂していた。
 

山頂北側の林

 道を進むと、正面に段ヶ峰、右手に平石山から高星への稜線が少しずつ近づいてきた。電波小屋の建っているところで、上千町への道と分かれ、千町峠への道を下った。

稜線から望む平石山から高星の尾根
(中央は1067mピーク)

 コナラ林を下っていくと林道に出た。ここは、千町ヶ峰の登山口となっている地点。その林道を横切って、林道と並んで伸びている尾根を歩いた。スギにおおわれた尾根には、踏み跡がかすかに残っていた。
 スギの落ち葉の間に、ヒカゲノカズラが群落をつくっていた。

山行日:2022年5月24日

スタート~弘法の池~千町ヶ峰(1141.3m)~ゴール map
 神河町と宍粟市の境界尾根をたどった。スタート地点から弘法の池まで道はない。スギやヒノキの植林の中は歩きやすいが、アセビの森に入ると枝を分けて歩かなければならなかった。
 ゴール地点から、デポしておいた自転車で3.5Km林道を下りスタート地点へ戻った。
 

山頂の岩石 白亜紀後期 段ヶ峰層(仮称) 溶結火山礫凝灰岩
山頂の露頭
 千町ヶ峰には、白亜紀後期の火砕流堆積物が分布している。
 山頂の露頭で見られるのは、風化して緑色を帯びた褐色の溶結火山礫凝灰岩である。節理が斜めに入り、そこから平らに割れている。

 この溶結火山礫凝灰岩は結晶質で、多くの石英・斜長石・カリ長石と、少しの黒雲母・角閃石を結晶片としてふくんでいる。
 石を割ると、ギラギラと光る石英が目立ち、その形が破片状であったり融食されているのが肉眼でも観察できる。

 千町ヶ峰で見られる溶結凝灰岩は、段ヶ峰や藤ヶ峰など見られるものと同じ岩相である。
 

「兵庫の山々 山頂の岩石」 TOP PAGEへ  登山記録へ