千ケ峰(1005.2m) 〜またに山(928.0m) 神崎町・加美町 25000図=「生野」「丹波和田」
作畑から静かな山道を千ケ峰・またに山へ
 |
 |
| またに山への縦走路より千ケ峰 |
千ケ峰山頂から播磨の山並みを望む |
千ケ峰は、中国山地最東端の1000m峰である。加美町から見る吊り尾根の描く曲線、縦走路から見上げる高くそびえる山頂とそこから流れ下るスロープは、秀峰の名にふさわしい優美さを備えている。
今回は、西麓の作畑から上り、山頂からは市原峠を越して北東のまたに山(深谷山)まで足を伸ばした。
越知谷第二小学校前の石風呂橋を渡ったところで車を止め、歩き始めた。アイゼンは、作業路に薄く張った氷をとらえ、小気味よい音を立てた。山頂に発する沢に沿った作業路は、大きな二股から狭くなってさらに右の沢へ続いていた。右の沢を渡り、斜面を小さく巻き戻って今度は左の沢を進む。作業路がヘアピンに曲がる地点に、「登山口」の標識が立っていた。
千ケ峰山頂へ
 |
思わぬところで角閃石が黒く光るひん岩の岩脈を見つけたので、ここまでずいぶん時間を費やしてしまった。
道標に従って杉林の中の沢沿いの山道に入った。ガレ石にスギの落ち葉が積もり、その上に雪が薄くのっている。沢にはつららが下がり、その下を水が音をたてて流れている。山道はこの沢を渡り、斜面を上って千ケ峰北西尾根に出た。
スギ・ヒノキにおおわれた広い尾根であった。薄い雪の下には、霜柱が長く伸び、それが程好いクッションになった。
コースの所々に、地元の小学生の作った小さな木の標識が立っている。「コケのみちまで約20分」とあったが、そのコケの道は今は雪に隠されていた。
スギ林が切れ、白く丸い山頂が目の前に現れた。道をはずして、山頂北面の深雪の中に足を踏み入れた。真白い雪にひざまで埋まりながら歩くのは爽快だったが、傾斜が急になったところで、それ以上進めなくなった。
深雪から出て、再び道を進むと、笠形山からの縦走路に合流し、そこからすぐに山頂に達した。
多くの登山者の憩う山頂で、私もベンチに腰掛けた。南に986m峰、飯森山、笠形山と縦走路の山が並んでいる。
笠形山の北面は暗く切り立ち、その斜面には雪が張り付いている。その姿は、南から見るいつもの穏やかな山容とは異なって、冷たく厳しかった。
笠形山の東には、播磨の山並みが幾重にも低く重なっていた。山稜のみが青黒く、その下は白くかすんで、水墨画のような光景が広がっていた。
西に遠い段ケ峰・フトウガ峰・千町ケ峰の稜線は、白い雪をのせていた。しばらくすると、その稜線は雲の底に隠れ、その下が見る見るかきくもってきた。「段ケ峰は吹雪いているみたいやなあ」という声が聞こえたかと思うと、この千ケ峰山頂にも雪が舞い降りてきた。初めは、小さく光る氷の結晶のような雪であったが、すぐに大粒のボタン雪となって、横から吹き付けてきた。舞い降る雪は、あたりの風景をメルヘン調なものに一転させた。
 |
 |
| 千ケ峰山頂(正面に篠ケ峰) |
千ケ峰山頂より笠形山を望む |
山頂を立ち、縦走路の尾根を市原峠へと向かった。アセビとササにはさまれた雪の道を、篠ケ峰・大井戸山・竜ケ岳を見下ろしながら進んでいく。作畑からの上りでは千ケ峰の姿がほとんど見えなかったものだから、後ろに残した千ケ峰が気になって、何度も振り返った。そのたびに、千ケ峰は高くなり、美しい姿でそびえていた。
市原峠近くは雪が消えていたが、またに山に向かって高度を上げていくと、再び雪の道となった。コナラ、リョウブの冬枯れの木立にアセビが混じっている。アセビの葉は、輝きを失ってどれもが下へ垂れ下がり、じっと春を待っていた。
いくつかの起伏を越して進むと、またに山の白く丸い山頂に達した。標柱の下の雪をわずかに掘ると、三角点の四角い標石の頭が現れた。
 |
 |
| またに山 |
またに山山頂(正面に三国岳) |