| 千 丈 寺 山 (589.6m) 三田市 25000図=「藍本」 |
|---|
|
湖面に映える千丈寺山を南から北へ
千丈寺湖の向こうに、湖に浮かんでいるかのように千丈寺山が立っていた。朝の光は、その山肌に雲の影を帯のように長く落とし、細かいさざ波を浮かべた湖面に山の姿と空の青、雲の白を映らせた。
高根山を東へ下り、上り返したピーク(Ca.430m)の手前で、南から上ってきている小径を見つけた。黒紫の実をわずかに残したイヌツゲの木には、「千丈寺山 約1時間」と記された小さな板の道標が掛かっていた。 そこからは、落ち葉の小径が尾根の雑木を縫って続いていた。前山(Ca.460m)の右に、千丈寺山の山頂が見える。空はいつの間にか厚い層積雲でおおわれ、風も冷たくなってきた。右手に並ぶ大舟山・烏ケ岳・羽束山は、もう夕暮れの色のように暗く沈んでいた。 道は前山を右に巻いていた。再び尾根に戻り、しばらく平坦な道を進むと、山頂への急登が始まる。だんだん露岩が多くなる道を進み、ロープの固定された岩稜を上り切った。岩の上に立って南を振り返ると、大きく展望が開けていた。北摂・東播の丘陵地帯が悠々と広がっている。その丘陵は遠くに真っ直ぐな線を水平に引き、その上には雄岡山・雌岡山の淡い山影が小さく飛び出していた。
そこから、北へわずかに辿ると、千丈寺山の山頂であった。一等三角点の標石より、一段高い平たい岩の上が頂である。下を見ると、この岩は巨大な岩の上に乗っていた。 岩の上に立つと、ツガの枝葉のすき間から北東方面が開けて見えた。峯ケ畑、三国ケ岳、弥十郎ケ嶽などが並んでいる。それらは、私がまだ足を踏み入れたことのない山域であった。 山頂からは、北へと稜線を下った。Ca.570mの台地状のピークから峠までは、急激な下りが長く続いた。目の前には、丹波との国境付近の山並みが幾重にも重なっていた。
山行日:2004年1月4日
|
高根山南麓の下青野にある青久寺(地形図卍記号)の右脇より山に入る。道はない。高根山山頂東のコルを目ざして谷を北へ上った。この谷は、始めは裸地、途中からヤブとなる。コルから、高根山山頂へ。 |
| ■山頂の岩石■ 後期白亜紀 有馬層群佐曽利凝灰角礫岩層 流紋岩質火山礫凝灰岩 千丈寺山のある三田市を含む東西19km、南北14kmに及ぶ広範な地域には、佐曽利凝灰角礫岩層が分布している。白亜紀中期〜後期(約1億年〜7000万年前)には、山陽帯に属す兵庫県南部の広い範囲に大規模な火山活動が生じたが、この佐曽利凝灰角礫岩層はこの時期の末期に起こった爆発的な噴火によってカルデラ内を埋めつくした火砕流堆積物である。このカルデラは、佐曽利カルデラと名づけられている。 今回歩いたコースで見られる岩石は、ほとんどが凝灰角礫岩〜火山礫凝灰岩であった。そのどれもが、頁岩やチャートの小岩片を含み、表面はそのために凹凸に富んでいる。 千丈寺山山頂の岩石は、流紋岩質火山礫凝灰岩であった。石英・長石・黒雲母の結晶に富み、1cm程度の黒色頁岩などの岩片や緑色の軽石や火山礫を含んでいる。基質は、緑灰色である。 |