千ヶ峰(1005.2m)  多可町   25000図=「丹波和田」


雪でさらに気高く、千ヶ峰

千ヶ峰山頂へ

 千ヶ峰……山名の由来は、「千ほど多くの峰がある」とも「仙人が降りた峰」とも言われている。標高1005.2m。1000mを越す山としては、中国山地のもっとも東にあたる。
 山頂から緩やかに降りた稜線がもう一度南西でせり上がるその山容を、これまで登った山から幾度となく見てきた。

 まずまずの天気の日曜日。冬型の気圧配置とはいえ、もうそんなに強くはない。麓から見上げた今朝の千ヶ峰は、白い雪をまとって、いつもよりさらに気高く立っていた。

 三谷川に沿った車道は、ハーモニーパーク(地形図では農林業公園)を過ぎると大きくカーブした。
 10時過ぎに、三谷登山口に着いた。広い駐車場には、すでに車が10台以上止まっていた。20人前後の大きなパーティーも下の谷からにぎやかに上がってきた。MTBをかついでいる人もいる。
 何十年ぶりかの雪山、アイゼンもワカンもない……そんな不安が登山口のこの賑わいで吹き飛んだ。屋根裏部屋から探し出したスパッツを膝下につけ、歩き出した。

三谷登山口

 登山口から渓流に沿ってしばらく歩くと、丸太の橋にさしかかった。雪をのせたこの橋を渡って、右岸を登った。
 大きな一枚岩を水が滑り落ちる「雌滝」を過ぎ、橋を渡って再び左岸へ。渓流の岩は雪をのせ、その間を水が流れていた。ところどころにつららが下がっている。
 道の雪は、先行者によって踏み固められていた。トレッキング・ポールで支えながら、すべりやすい道を進んだ。
 つららを下げた黒い岩盤の「雄滝」が現れた。その横を高巻くように登った。

雪の渓

 やがて、渓沿いの道は小さな滝にさえぎられた。その手前で、道は谷を離れ山の斜面を上っていた。このあたりの積雪は20cm程度。昨夜、新たに積もったのか、真白いきれいな雪だった。
 先行者によって踏み固められた登山道は、杉の木の下を続いていた。ちらちらと舞いだした雪の中を、息をはずませて上っていくと尾根に達し、岩座神コースと合流した。
 ここから、白い登山道を山頂めざして、ほとんど真っ直ぐに登っていった。雪は、だんだん深くなった。空からまた雪が舞いだした。
 高木がしだいに少なくなり、雪の斜面にクマザサの葉が顔を出し、アセビが雪をのせてじっと立っていた。
 見通しはあまりきかないが、木々の間から尖った山頂が見えてきた。

登山道より望む千ヶ峰

 最後の急な坂を登ると、頂上へ続くゆるくて真白い稜線が見えた。踏み跡をたどり、白い空に向かって進んでいくと、雪に深くおおわれた山頂に達した。

 頂上は風が強かった。冷えた汗が体温を下げた。熱いお茶を飲み、ザックから手袋とウィンドブレカーを、この日初めて出した。

山頂へ

 しばらく山頂に立ち、周囲を眺めていると、北西からの風が雪を舞い揚げて視界を閉ざした。市原峠までの稜線歩きは、次回の楽しみにとっておくことに決め、同じ道を下山した。

 雪の山歩き……また、山の新しい楽しみを見つけたような気がした。

山行日:2000年2月27日


行き:三谷登山口〜雌滝〜雄滝〜岩座神コース分岐〜千ヶ峰山頂 (三谷コース)  
帰り:行きと同じ
 千ヶ峰には、多可町側から三谷コースや岩座神コース、神河町側から木谷コースや岩風呂コースなどがある。その中で、今回は三谷コースをたどった。
 登山口には、広い駐車場がある。始めは三谷川に沿って歩き、上流で急坂を登って尾根に出て岩座神コースと合流するルートである。

山頂の岩石  後期白亜紀 生野層
 登山口には、石英閃緑岩が見られた。
 「雌滝」「雄滝」の手前からは、流紋岩が露出していた。ここの流紋岩は、黒っぽい色をしていることが多かった。細粒ガラス質で、斑晶をあまり含んでいない。流理構造による縞模様がはっきりと見える部分があった。
 千ヶ峰には、古来より雨乞いが行われていたとされる「雨乞岩」、市原峠南の「岩の展望台」など興味深いものがある。しかし、今回は、渓流を離れると積雪のため岩石の観察はできなかった。

「兵庫の山々 山頂の岩石」 TOP PAGEへ  登山記録へ