猿 尾 滝 の ひ ん 岩
 猿尾滝(さるおたき)は、妙見山の北西山麓にあたる香美町村岡区日影にかかっている。落差39mの上段と落差21mの下段の二段からなっている。
 「日本の滝100選 猿尾滝」の案内板の立つ入り口から、もうそこに滝が見えている。
。滝の景観が猿の尾に似ているところから名づけられたそうだが、下段の一筋の水の流れがそのように見えるのかもしれない。その上には、真夏の濃緑に左右からはさまれて上段の滝の白い流れが見えた。
 自然林の緑と、黒い岩肌を流れ落ちる白い滝の流れの調和が美しく、この日も数組のハイカーが涼を求めてここを訪れていた。
 
 

猿 尾 滝 ひ ん 岩
 上段の滝の下に立った。ごつごつした真っ黒い岩肌の上を、水が飛沫を上げて流れ落ちている。

 猿尾滝をつくっているのは、ひん岩岩脈で「猿尾滝ひん岩」と呼ばれている。岩脈とは、まわりの岩石や地層を切ってマグマが貫入し、それが冷え固まって厚い板状になった岩体のことである。
 猿尾滝に見られるこのひん岩の岩脈は、長さ約5.5km、幅500mにわたって南北方向に細長く分布している。地質図を見ると、蘇武岳や妙見山の山中にも、いくつかのこのような岩脈がほぼ並行に並び、岩脈群をつくっていることがわかる。また、少し離れて、氷ノ山あたりにも分布しているものがある。
 これらの岩脈は、主に北但層群村岡累層中に貫入してる。また、照来層群(新第三紀鮮新世)の一部を貫いているところもあるため、これらの岩脈は照来層群とほぼ同時期か少し遅れて貫入したと考えられている。
上段の滝
   
角閃石ひん岩と閃緑岩
 
角閃石ひん岩   閃緑岩
 滝の下段から下の部分は、角閃石ひん岩である(写真左)。やや緑色がかった灰色の、硬質の岩石である。斑晶として、長柱状の角閃石と柱状の斜長石が含まれている。写真の標本では、角閃石と斜長石の長さはどちらも2mm程度である。

 滝の上段の岩石は、閃緑岩である(写真右)。ひん岩と比べると、こちらは石基と斑晶の区別がなく鉱物の粒が大きい。主に、斜長石・黒雲母・角閃石から成っている。

 角閃石ひん岩は、岩脈の周辺部で速く冷え固まってできた。また、閃緑岩は、岩脈の中心部でゆっくりと冷え固まってできたと考えられる。


■岩石地質■ 猿尾滝ひん岩
■ 場 所 ■ 香美町村岡区日影 25000図=「村岡」
          (国道9号線を日影集落の北で東へ。作山川に沿って約1km進むと左手に、猿尾滝の案内板が立っている。)
■探訪日時■ 2002年8月4日

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