| 三 の 丸 @ (1464m) 波賀町・大屋町・若桜町 25000図=「戸倉峠」「氷ノ山」 |
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車は、「やまめ茶屋」から林道を上っていった。夏だというのにスタッドレスタイヤを履いた車は、でこぼこ道による振動を増幅させ、シートベルトもストッパーが作動して伸びてこない。たどり着いた殿下コース登山口には、もうすでにたくさんの車が止まっていた。ハイカーに混じって、補虫網を持った人や、白衣を着た人がいる。なぜか、パトカーまで止まっていた。
傾斜の緩くなった登山道を上っていくと、木の種類はしだいに少なくなって、やがてほとんどブナの純林といえるような林となった。そのブナも標高1300mあたりで途絶え、あたり一面がチシマザサでおおわれた。 合流した坂の谷コースを下って、もう一度ブナの樹林帯に入り定点観測点を探した。この定点は、人の影響をもっとも受けにくい所に設定されているというだけあって、登山道から大きく離れている。チシマザサをかき分け、かき分け、小さな流れを二つ越えて、ようやく現地にたどり着いた。 ブナの幹の太さを測ったり、ブナ以外の植物の種類を調べたり、チシマザサの密度や更新を調べたりする。チシマザサをかき分けての調査はなかなかハードであった。初参加の私はほとんど戦力にならない。せめて、足手まといにならないようにしなくては……。
赤い三角屋根の三の丸避難小屋は、新しく上塗りされたペンキがまだ匂っている。そのすぐ先が、三の丸山頂であった。氷ノ山山頂まで2.4kmのこのピークは、播磨の最高峰である。 丸太で組まれた展望台に上った。 あたり一面、チシマザサでおおわれている。その緑の海原の中に、点々とダイセンキャラボクの深緑が染みている。 東の谷からすべり上がってくるガスが、氷ノ山山頂を隠していた。しばらくすると、そのガスにぽっかりと小さな丸い穴が開いて、稜線上に千本杉が見えた。そのガスの穴はゆっくりと氷ノ山山頂に向かって動いたが、山頂に達する前に再び閉じてしまった。 誰もが、このあと予定されていた第2地点、第3地点の定点観測のことを忘れ、山頂を緩く吹き抜ける風に身をまかせていた。
山行日:2003年7月27日 |
国道29号線を北上。波賀町堀の交差点を右折し広域基幹林道に入ると、すぐに「やまめ茶屋」に着く。ここで、調査員8名が揃った。今井さんの車に乗せてもらい、林道をさらに進んでいく。「坂の谷コース登山口」を過ごし、さらに深く山中に入リ込むと播但国境(中央分水界)のすぐ手前にある「殿下コース」登山口に着いた。ここには、広い駐車スペースがあって、すでに多くの車が止まっていた。 |
| ■山頂の岩石■ 新第三紀鮮新世 氷ノ山安山岩 三の丸には、今からおよそ250万年前(新第三紀鮮新世後期)の火山活動による岩石が分布している。安山岩質の溶岩を主とし、それに火山灰や軽石、火砕流堆積物の層を挟んでいる。 この安山岩質溶岩を主とする岩石は、戸倉峠の北から始まり、三の丸、氷ノ山山頂、鉢伏山、瀞川山へと続く稜線付近に広く分布している。 今回、岩石を調べる機会はあまりなかった。定点観測点付近の小沢の転石は、ほとんどが白く変質した長石の斑晶が目立つ安山岩であった。どの岩石も、風化による変質が進み、褐色や紫がかった灰色をしている。 |