六甲最高峰(931.3m)    神戸市    25000図=「西宮」「宝塚」「有馬」

ロックガーデンから六甲最高峰へ

芦屋川から六甲主稜線を望む

 うつらうつらと揺れていると、電車の中で夜が明けた。
 今日は芦屋川からロックガーデンを経て、六甲最高峰へ。そこから有馬温泉へ下った。

高座ノ滝

 阪急芦屋川駅で降り、住宅街を抜けて山に向かった。高座川に沿った山道に入ると、ウソとシジュウカラが迎えてくれた。
 木々はもうすっかり葉を落としていた。舗装された広い道を上っていく。
 始めから花崗岩だと思っていたのにホルンフェルス化した頁岩や砂岩が出てきて戸惑った。露頭の前に立っていると、ハイカーが次々と追い抜いていった。

 「滝の茶屋」をくぐると「大谷茶屋」。その広場の上に高座ノ滝がかかっていた。褐色に染まった花崗岩の岩肌を水が滑り落ちている。横や斜めに走る節理が、水の流れにちょっとした変化を与えていた。
 滝の下には護摩堂が建ち、その前で焚き火が炊かれている。そのうち、人が集まってきてにぎやかになってきた。茶屋のおでんの匂いが、焚き火の匂いに混じって漂ってきた。


 滝の左を巻き登る。風化の進んだ花崗岩の斜面に、石の階段が巧みにつけられていた。
 もうここから、ロックガーデンの主稜線が始まっていた。岩尾根を、手と足を使って登っていった。一上りして振り返ると、V字に開けた谷の向こうに海が見えた。
 岩尾根をさらに上り、樹林帯を抜けると、見晴らしの良い岩場に出た。海側は先ほどよりぐっと大きく開け、手前に神戸や大阪の市街地が大きく広がった。地獄谷を見下ろすと、ロックガーデンの岩の風景。節理から風化の進んだ花崗岩の岩塔が、指を立てたように林立していた。かつてはクライマーの声が響き渡った、近代アルピニズム発祥の地である。 

ロックガーデンを登る ロックガーデン

 再び、木々の中を歩いた。イヌツゲが群青色の実をつけている。風化によって半ば土になった花崗岩の溝を通ると、岩塔の立つ広場に出た。岩塔の高さは5mぐらい。そこから、片側が平面ですっぱり切れ落ちた岩体が続いていた。ここが、風吹岩だった。

 震災で崩れたという岩の跡を探してみたが、以前の風景を知らない者にとってはそれは見当がつかなかった。
 岩に登ってみた。淀川の向こうに大阪の高層ビル群がかすみ、その右に大阪湾の水が板を敷いたように平らになってまばゆく光っていた。山側に目を向けると、北東に荒地山の岩肌が近く、北西には白いホテルを乗せた六甲の稜線が長く続いていた。
 岩塔の上は北風が強く、その風が吹き降りる南に雲が厚かった。

風吹岩 風吹岩の上から

 風吹岩から冬枯れの林を上っていった。葉の縁に白い隈どりができたミヤコザサが増えてきた。地形が平坦になり、地面が湿ってきたと思ったら「湿地とその植物」という案内板が立っていた。
 黒五谷に架かる小橋を渡り、ゴルフ場の道を横切った。茂みからは、ウグイスやアオジの地鳴きが聞こえてくる。一羽のよく太ったアオジが道に出てきて落ち葉をさかんにつついた。
 再びゴルフ場の道を横切ると、急な斜面となって丸太階段が連続した。そこを上り切ったところが雨ヶ峠だった。
 ベンチに座って休んでいると、目の前の木の枝にヤマガラが止まり、木の枝を何回も突いた。そして、何かを加えて飛んでいった。

 雨ヶ峠からしばらくは、平坦な道が続いた。周囲はリョウブの林。ときどき、大きなヤマザクラやアカマツの木が立っていた。そして、落ち葉の林を住吉川へと下っていった。
 少し前から、地面は黒土に変わっていた。花崗岩の風化によってできた土とは思えない。それを確かめるために、住吉川を少し遡ってみた。川の横のがけを叩くと、丹波帯の古い岩石。砂岩や頁岩を原岩とするホルンフェルスだった。

 住吉川を渡ると、住吉道に合流した。本庄橋跡を見て、急な石段を上った。やがて、道はまた下り、三たび住吉川を渡った。
 ここからは、七曲りと名づけられた急な道となった。始めは、どこかの大きなパーティに混じって上った。空が暗くなって、時雨れてきた。上るほどに、左下の谷が深くなってきた。
 道の脇に、きれいに石が組まれたところがあった。石はコケに厚くおおわれ、こんなところにもこの道の歴史を感じた。

 そのうち、傾斜が緩くなって、山上の雰囲気が漂ってきた。舗装路に変わった道を進み丸太階段を上ると、唐突に立派な石垣と白壁が現れた。そこが一軒茶屋だった。
 一軒茶屋は多くのハイカーで賑わっていた。きつねうどんとビールを注文した。う〜ん、ごくらく。六甲山は、いい〜。

 茶屋から出ると、日差しが山を照らしていた。山上の車道を渡り、コンクリート道を上って電波塔の下を抜けると、山頂に達した。
 「六甲山最高峰」の標柱が立ち、その下には地面から頭だけ出た一等三角点。近くの石碑には、地震のときの隆起にによって標高が931.13mから931.25mに変化したと記されていた。

 山頂の南に、見晴らしの良いところがあった。そこから、白くかすんだ街や海や人工島を眺めた。風が強く、目の前でススキが大きく揺れた。

山頂が近づいてきた 六甲最高峰

 下った住吉道(魚屋道)は、落ち葉の降り積もった広くて快適な道だった。粗粒花崗岩、細粒花崗岩、安山岩の岩脈……思ったより変化する岩石を見ながらゆっくりと下った。家族連れ、マウンテンバイク、若いカップル……多くのハイカーとすれ違った。

 たどり着いた有馬温泉。芋の子状態の「金の湯」に入り、先日のTVで見てねらいをつけていた「有馬サイダー」を飲んだ。ホカホカの「よい湯(と)まんじゅう」を口にして、幸せな気持ち。やっぱり、六甲山はいい〜。今日は、土産を買って家に帰ろう〜。


山行日:2007年12月24日
阪急芦屋川駅〜高座ノ滝〜ロックガーデン中央稜〜風吹岩〜雨ヶ峠〜本庄橋跡〜七曲り〜六甲最高峰〜住吉道(魚屋道)〜有馬温泉〜神戸電鉄有馬温泉駅
 ガイドブックに紹介されている一般的コースの一つである。途中に分岐が多数あるが、標識が各所に設置されている。高座ノ滝周辺やロックガーデンは震災で崩れたが、その後整備されて安全な登山が楽しめる。
■山頂の岩石■ 白亜紀 六甲花崗岩 粗粒黒雲母花崗岩

粗粒花崗岩(ロックガーデン)
 六甲最高峰の周辺には、粗粒黒雲母花崗岩が分布している。これは、六甲山を構成している主要な岩体で、六甲花崗岩と呼ばれている。ピンク色のカリ長石が目立つため、岩石全体もピンクがかって見える。カリ長石のほか、斜長石・石英・黒雲母から成っている。高座ノ滝やロックガーデンも同じ岩石からできている。

 この粗粒黒雲母花崗岩とは粒度が明らかに異なるアプライト質の細粒花崗岩も、かなり広く分布していた。本庄橋跡から七曲りの標高830mあたりまでの区間である。とこどどころにピンク色のカリ長石を斑状に含むが、全体的に細粒で優白質である。有色鉱物として黒雲母を含んでいる。

 その他、歩いたコースでは丹波帯の砂岩や頁岩を原岩とするホルンフェルスが何ヶ所かに分布し、下山に歩いた住吉道(魚屋道)の標高680m地点には安山岩の岩脈が見られた。

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