ソウル 北漢山(プッカンサン)    836.5m  
 2泊3日のソウルの旅、その中日のフリータイムに北漢山(プッカンサン)を歩いた。北漢山は、ソウル市とその北の高陽市との境界に広がる「北漢山国立公園」に広がる山で、ソウルの北を屏風のように取り囲んでいる。中央に白雲台・仁寿峰・万景台の三つの峰が角のようにそびえているので、古くから「三角山」とも呼ばれている。
 地元ソウルの人が気軽にハイキングできる山でもあり、また仁寿峰をはじめとして世界的に有名な岩壁登攀の山としても知られている。山中には李氏朝鮮時代の貴重な寺院や城壁が残っている。
 李重煥は、この山を「択里誌」で、「山形秀麗で水清らかで、河川海に通じる山は力量にあふれている」と表している。 

  牛耳洞(ウイドン)登山口
 北漢山には、多くの登山口がある。今回は、最高峰の白雲台に近い牛耳洞(ウイドン)登山口から登った。ソウル市内のホテルから、牛耳洞までタクシーで約40分、20000ウオン(約2000円)であった。登山口の少し手前の「北漢山国立公園」と書かれた大きな石碑の前でタクシーを降りる。
 「天地同根」、「萬物一体」などの石碑も立っているが、標識はほとんどハングル文字。地図の文字と、記号を合わせるようにして位置を確認しながら進む。やがて、登山口に達する。バンガロー風のチケット売場で、北漢山国立公園の入山券を買って、山に入る。入山券は、大人1人1300ウオン(約130円)であった。

ガイドブックの紹介、および今回のルート
 今回、参考にしたガイドブックは、前日にソウル市内の書店で購入した。このガイドブックには、詳しい登山地図が掲載されている。
登山口のチケット売場
  峠をめざして、ミズナラ林を上る
 登山道は、よく整備されている。必要な所には、石が敷き詰められていたり、石の階段が作られたりしている。高木は、ミズナラが多い。これに、クヌギが混じり、下にはヒサカキやヤマハギなどが生えている。ミズナラの葉を透かした木漏れ日が花崗岩のガレ石に映り、林の中の登山道は明るかった。
 平日であるが、登山者は結構多い。パーティは少なく、家族連れや2、3人の友人で歩いていることが多い。
木漏れ日のあふれる登山道
  姿を見せた仁寿峰(インスボン 810.5m)
 峠を越えて、稜線の北に回り込むと、目の前に仁寿峰(インスボン)がそびえていた。肌色がかった白い花崗岩の岩盤がむき出しの巨大な岩塔である。そのつくりだす曲線からは、雄々しさと優雅さを同時に感じた。割れ目の部分にはマツが張りつくようにして生えている。
 花崗岩のこの岩塔は、急傾斜に発達する節理と皮状に表面が次々とはがれ落ちるような風化の進行によってできたように思える。双眼鏡で、幾本かのアプライトの岩脈が観察できた。
仁寿峰
  万景台(799.5m)の岩峰
 先ほどの峠から谷に降り、再びその谷に沿って登っていく。小さなお寺があって、そこから聞こえるお経の声がセミの声、谷を流れる水の音と一緒になって、山にとけ込んでいった。
 「白雲山荘」という山小屋があった。小屋の前にベンチがあり、そこに腰掛けて休む。ここには井戸があり、その水を飲ませてもらった。冷たくて、おいしかった。山荘の上には、仁寿峰と白雲台が並んでそびえていた。
 山荘を後にして、さらに進むと20mもあろうかという岩塔の下に城壁が復元されていて、「衛門」とあった。何方向からかの道が、ここに合流している。そして、ここから北漢山の最高峰、白雲台をめざすのである。
 南には、もう一つの頂点・万景台がゴツゴツとした頂稜をいからせていた。
萬景台の山頂(右下にかすむのは、普賢峰などの岩稜)
  北漢山の最高峰、白雲台(ペクンデ)へ
 衛門から、白雲台の山頂までは大きな花崗岩の岩体を巻くようにして登っていく。斜面は急であるが、岩盤に鉄パイプが埋め込まれ、それにワイヤーが通っている。このワイヤーを頼りに登っていく。黒くて尾のふさふさとした小さなリスが二匹、岩の上で遊んでいた。
白雲台山頂への道
  白雲台(ペクンデ)山頂
 白雲台の山頂には、韓国の国旗が立っていた。狭い山頂には、いくつかの石碑も立ち、ぐるりと10人程が立つといっぱいになる。聞こえる会話は、すべて韓国語。私は静かに立って、あたりを眺めた。辿り着いた人が叫ぶ「ヤッホー」の大声に、ときどきビックリする。
 北にも南にも、山脈が連なっている。南には、普賢峰などのピークが荒々しく並んでいる。北に見える道峰山もノコギリの歯のように切り立っている。あちこちの山稜や山腹には、岩盤が白くむき出しになっていて、魅力あふれる景観をつくっていた。見下ろすソウルの街は、湿気を大量に含んだ空気によって白くぼやけていた。
白雲台山頂
  稜線に立つ東將台
 白雲台の山頂から再び衛門に降り、山脈を南に歩いた。稜線の西の山腹に道がついている。いくつかのコルやピークを越え、「龍岩門」に着く。さらに稜線を南へ進む。このあたりのコースには、人は少なく、また、いても単独のことが多い。
 稜線には、北漢山城の城壁がところどころに残っていたり復元されたりしている。やがて「東將台」を過ぎ、「大東門」に着いた。時間もかなり経過していたので、ここから東へアカデミー・ハウスをめざして降りることにした。思った以上に険しい下りであった。
東 將 台
  ミズナラの美しい林
 
 谷沿いの道には美しい自然林が広がっていた。ミズナラが多いが、その他、ヤマハンノキ・シロリュウキュウ・ツリバナ・カスミザクラなどの木や、カエデの仲間の木が生えていた。ふもとに近づくと、多くの家族連れが水遊びに興じていた。アカデミー・ハウスを過ぎるとチケット売場(入山口)があり、ここにも駐車場や店、そして人が多くいた。タクシーをここで拾い、ホテルへ帰る。
ミズナラ林
  北漢山は花崗岩でできている
 北漢山をつくっているには、黒雲母花崗岩である。粗粒で、石英など一つ一つの結晶の大きさは3〜4mmである。透明灰色の石英、白い斜長石、ピンク色のカリ長石、黒く劈開が光る黒雲母が観察できる。ピンクのカリ長石が特徴的であり、六甲山の花崗岩ともよく似ている。
 コリア半島では、先カンブリア時代から何回も大規模な火成作用が起こっている。その中で、ジュラ紀の「大宝(Daebo)花崗岩類」は、中部ならびに南西部に長い帯状をなして北東ー南西方向に分布している。北漢山の花崗岩は、この大宝花崗岩類にあたる。
 
 
北漢山をつくる黒雲母花崗岩の表面

2001年8月3日

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