大山薬師山(510.4m)    神河町               25000図=「生野」

「薬師山やすらぎの森」と「狐の踊石」

狐の踊石
娘が描きました
やすらぎの森の雑木林

 神崎町大山七宝寺(しっぽうじ)の裏山は、古くから薬師山と呼ばれている。人々と山との関わりがうすくなった今、再び人々を山へ戻し、人と森や生き物との結びつきを考える場として、最近この山は「薬師山やすらぎの森」として整備され始めている。
 この森には、「狐の踊石」という岩がある。空想的なこの岩の名に惹かれて、「薬師山やすらぎの森」へと出かけた。

 七宝寺の裏手の厳重に閉じられた鹿避けゲートを開き、山に入った(もちろん、またしっかり閉じて)。護摩道場という広場の手前の分岐を右へ折れ、薬師道と名付けられた尾根道を進んだ。急傾斜がひと段落したところに、丸太で作られたベンチがあった。ここから、アカガシ・コナラ・ソヨゴ・アベマキ・リョウブ・アカマツ・ツガなどの自然林となった。これまでのヒノキ林でうるさかった鳥やセミの鳴き声が小さくなった。

 尾根上に重なる三つの大岩が、「狐の踊石」であった。真中の岩が一番大きく、斜めに大きく割れている。岩の表面は、薄緑色の地衣類でおおわれているが、溶結凝灰岩のつくりがはっきりと見て取れた。テイカカズラが岩の裏からつるを伸ばし、岩のてっぺんにおおいかぶさっている。下から見上げると、逆光がウラジロノキの葉を透かして、岩の背後から注いでいた。その名にふさわしい光景を前に、岩の上で踊るキルネの姿を想像してみた。

狐の踊石 大山薬師山(点名宮ノ谷)山頂

 やすらぎの森の道は、ここから支尾根を西へ下っているが、ピークハンター(? エッ!いつから……)としては、一応北東にある三角点をめざした。植林地はしだいに荒れ、尾根の踏み跡はスギやヒノキの枯れ枝に隠されていった。上り詰めて、左へ少し回り込んだ所に、きれいな四等三角点が埋まっていた。
 展望は、全く利かない。シキミのかすかな香の漂うこの山頂で、足元から這い上がるダニを落とし、群がる蚊を払い避けながら持ってきた二つのおにぎりを食べた。

 狐の踊石に戻り、支尾根を西へ。小さなピークの前に、根元から10本ほどに株分れしたアカガシが立っていた。「薬師樫」と呼ばれているアカガシである。幹は緑色を帯び、縦と横の皮目がはっきりしている。若く勢いのある木であった。「人工林と雑木林」などの説明板を見ながら尾根を下ると、遍路道に合流した。石仏が2体ずつ納められた石の祠の並ぶこの道を下っていった。

 森から出ると、青空が巻雲を浮かべて広がっていた。ああ、今日はこんなにきれいな空だったのだ。
  

薬師樫(アカガシ) 遍路道の石仏

山行日:2004年8月16日
七宝寺(神崎町大山)〜ゲート〜狐の踊石〜薬師山山頂(点名宮ノ谷 510.4m)〜狐の踊石〜薬師樫〜遍路道合流点〜護摩道場〜ゲート〜七宝寺
「薬師山やすらぎの森」案内図
 国道312号線を北に進み、神崎町大山で「七宝寺」の標識を見て右に折れると、七宝寺がある。寺の駐車場に車を止める。
 薬師山やすらぎの森は、七宝寺の北に広がっている。森の中には、何本かの道が整備されている。鹿避けゲートを通り、右手の尾根に出て、やすらぎの森最奥部にある狐の踊石(標高430m)をめざす(薬師道)。
 狐の踊石から、尾根を北東へそのまま上って薬師山山頂へ。再び狐の踊石へ戻って、薬師道を西へ下り、薬師樫を過ぎると遍路道に合流した。遍路道を下って、七宝寺へ戻る。

※ 右の案内図をクリックすると、拡大します。
■山頂の岩石■ 後期白亜紀 笠形山層 溶結火山礫凝灰岩

狐の踊石の表面
 薬師山やすらぎの森に分布しているのは、流紋岩質の溶結火山礫凝灰岩である。全体的に風化が進んでいるが、全域にわたって岩片をあまり含まず、結晶片を多く含むという単一の岩相を示す。
 結晶片は、石英・長石が多く、黒雲母や角閃石も少量含んでいる。基質は普通褐色であるが、新鮮なものは褐色を帯びた灰色である。
 狐の踊石では、岩の表面にレンズ状の窪みが観察された。これは、押しつぶされた軽石が抜け落ちた跡で、溶結構造を示している(左写真)。

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