男明神・女明神(110m) たつの市 25000図=「龍野」
たつの市笹山の男明神・女明神
男明神
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たつの市の小高い山の中腹に、男明神と女明神が谷を隔てて立っている。2つの明神は、いわゆる陰陽石で、女明神の方は多少の人工が加わっているかもしれないが、ほほえましい自然の造形である。
両明神とも、ふもとの里からも見える大きな岩で、名に明神とつくことから、磐座として古くから崇められていたと思われる。
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ふもとから見上げる男明神 |
ふもとから見上げる女明神 |
雲一つない秋晴れ。谷口池の畔に立つと、これから歩く山並みがぐるりと北に見渡せた。最高点でも標高170m、周囲約2kmという、低くて小さな山並みである。
西はりまリハビリテーションセンターの奥、「龍野笹山見晴しの森案内図」の立つところが登山口。ここから、雑木林の中を山道がつづらに上っていた。
草刈り機の音が下から絶えず聞こえてくる。刈られたばかりのコシダを踏んで登った。ツユクサが咲いていた。キチョウが、下草の上を低く飛んでいた。ときどき、クモの巣がベタリと顔にからみついた。
アベマキやコナラの葉が色づき始めていた。そこに、アラカシやシラカシの緑が混じる。落葉の積もる山道に、木漏れ日が射し込んだ。
岩石は、淡い緑色の凝灰岩。風化でもろくなり、小さく砕けて道にくずれ落ちていた。コウヤボウキが、枝先に花を咲かせて、垂れた頭を風に揺らしていた。
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コウヤボウキ |
道に落ちたアベマキの堅果を避けながら登っていくと、尾根に出た。そこに、男明神が立っていた。
男明神は、頭の丸い大きな岩で、逆光に黒く浮かび上がっていた。尾根から見えるのは、男明神のほんの一部分。男明神は大きく2段になっていて、岩の南に回り下ると、下段の岩の上に出た。
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男明神 尾根の頂部 |
男明神 |
私の立っている下の大岩は、頂部がスパッと切れ落ちて途中で引っ掛かっている。
上に見上げる大きな岩は、縦に割れ目が走り、真ん中あたりでずれている。それらの岩は、下ほど広い縦長で、左右からもたれ合うようにして双耳峰を形づくっていた。
男明神の岩石は、ここまで登山道で見てきた凝灰岩とは一目で違うことが分かった。男明神は、球顆をたくさん含んだ流紋岩でできていた。
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男明神を見上げる |
再び、男明神の頂部に登った。眼下に、太子から網干の市街地が見渡せた。
海岸の工場群の向こうには、播磨灘が白くかすみ、クラ掛島や太島が小さく浮かんでいる。その右には、男鹿島が薄く島影を浮かべていた。
南東にS字を描いて伸びているのは国道2号線のバイパス。バイパスの向こうには、雄鷹台山から天下台山に続く稜線が小さな起伏を繰り返していた。
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男明神からの眺望 |
男明神から、尾根を北へ登った。明るい雑木の山道が続いた。先ほど、大勢のパーティがここを下りてきたので、クモの巣の心配はもうない。マルバハギが咲いていた。ソヨゴの実は、赤く熟していた。
162.0mの三角点は、道から7、8mほど東にはずれて埋まっていた。そこから、コシダを分けて下ると、「女明神0.6km、男明神0.3km」の道標。170mピーク、松尾山の下である。
道を外れて、北へヤブをこいで登ると、5分ほどで松尾山の山頂に達した。そこには、花崗岩の標石がひとつ埋まっていた。
元の道に戻って下っていくと、小さな広場に出た。コナラの木に、1本ロープのブランコがぶら下がっている。その下には、丸太を横にしたベンチが道をはさんで2本。
広場を下から見上げると、ブランコを下げたコナラの木が、スポットライトのように陽をあびて林の中にぽっかりと浮かび上がっていた。
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ケヤキの木と一本ロープのブランコ |
広場を下ると、「円勝寺30m」の道標があった。それに従って下ってみると、地形に沿った平坦面が、何段も残っていた。
送電線鉄塔下から、上りに転じた。登り切ったところに、「Peak150 市街地一望!!」の大きな看板。笹山のピークへ向かう案内である。
低いササの中の踏み跡をたどると、すぐに笹山のピークに達した。ネジキの葉が染まっていた。ヒサカキが黒い実をつけていた。
周囲の木が大きくなって、南の市街地はもう見えなくなっていた。北西だけが開け、電波塔をのせた的場山が木々の間から見えた。的場山の右肩には、大蔵山の山頂部が乗り、左には三足富士が小さく尖っていた。
道に戻ってつづらに下っていくと、「鬼の足跡」があった。岩の上が足型にくぼんでいる。メジャーで測ってみると、長さ62cm、幅35cmもあった。大きな鬼の左足である。指のところだけにコケが生えているのがおもしろかった。
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弁慶の足跡 |
鬼の足跡を少し下ると、目の前が急に開けた。そこが女明神の頂部であった。
頂部は広く、岩の表面がゆるく波打っていた。中央が割れてくぼんでいる。その脇に、ススキの穂が、岩を駆け上がる風に揺れていた。
岩の先端に立ってみると、その下が真っ直ぐにに切れ落ちている。ここから岩の下まで、30mぐらいもあるように思えた。岩の上には、ハーケンが何本か残置されていた。
岩を巻くように下ってみた。下から見上げると、ようやく女明神の全貌をとらえることができた。
女明神は、根元が大きく広がった雄大ともいえる三角おむすび型で、前面が紫色の壁となってほとんど垂直に立っていた。岩石は、男明神と同じ特徴をもった流紋岩であった。
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女明神 |
女明神を見上げる |
もう一度、女明神の上に登った。13時40分。陽が西へ大分かたむき始めている。眼下には、市街地が広がり、家々の屋根が逆光に光っている。まだ刈り取りの終わっていない田んぼが、黄金色の輝きを見せていた。
山行日:2015年10月18日
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