雄鷹台(253m)   赤穂市  25000図=「相生」


千種川河口の山の初秋を歩く

千種川河畔から雄鷹台山を望む

 登山口には、大きなアベマキの木が立っていた。そこから、雑木の急坂をつづらに登ると、すぐ尾根に達した。道は広く、風化して白っぽくなった凝灰岩の小石が転がっていた。
 あちこちの木の間からツクツクボウシが鳴き、草の茂みからは虫の声が聞こえた。雑木が途切れると、千種川の向こうに並ぶ宝珠山と八祖山の間から海が見え始めた。
 足元からは、バッタが次々と飛び立っていく。送電線の鉄塔を過ぎて登っていくと、先ほどの山々が低くなり、その向こうに播磨灘が大きく広がってきた。海には、家島諸島の島々がいくつも浮かんでいた。
 ぼんやりと景色を眺めていると、赤穂線をガタゴトと音を立てて電車が走った。その音は、電車が千種川の上の鉄橋にさしかかると低く大きくなって響いた。頭上には、澄んだ秋の空が広がっていた。

 この尾根は、防火帯として広く切り開かれていた。147mの小さなコブを過ぎると、正面に200mピークが大きく見えた。ピークの上から、防火帯が真っ直ぐに下りてきている。この山の凝灰岩は風化でもろくなっていて、防火帯の一部が崩れている。穏やかなこの山の中で、そこだけが荒々しく見えた。防火帯の両側に植えられたヤマモモとスダジイのつくる日陰を選んで、そこを真っ直ぐに登っていった。

190mピークと防火帯 防火帯に露出する岩盤

 200mピークは、ヤマモモとスダジイに囲まれた草地だった。モンキアゲハが頭を越してフワフワと飛んでいった。キアゲハやクロアゲハが、この草地の上をずっと舞っていた。

 ここから、ゆるく上り下りを繰り返しながら、送電線の下の尾根を進んだ。ヤマウルシが、もう赤く色づいていた。ガレ石の転がる坂を上ると、251.1mの三角点に達した。
 標石の横の鉄塔の下に立てば、海が大きく開けた。家島の島々の西には、小豆島の島影が穏やかな海に薄く浮かんでいた。東には釜崎、金ヶ崎、藻振鼻と3つの岬が重なるようにして海に張り出し、美しい沈水海岸をつくっていた。 

東に見える沈水海岸

 251.1mピークを西へ少し下ったところで高山方面へと続く防火帯と分れ、南に折れた。あたりは、うっそうとしたシイの林。ヤマガラが木の枝をつついていた。

 視界が突然暗くなったのでびっくりした。あわててメガネをとると、レンズにウグイス色の虫がついていた。ステレス戦闘機のような形をして、前の羽には白い紋がある。蛾の仲間だと思って、帰ってから調べてみたが分からない。
 HP『みんなで作る日本産蛾類図鑑』の掲示板に写真を載せてみると、フッカーSさんから、『これは蛾ではなく、半翅目ハゴロモ科の「アミガサハゴロモ」(Pochazia albomaculata)です。』と教えていただいた。そういえば、顔は蛾というよりセミに似ていた。

 230mピークの鉄塔の下を曲がると、正面に雄鷹台山が現れた。山頂付近が南北に平らに広がり、肩から南へは海に向かって急角度で下りている。
 シイの落ち葉を踏みながら山頂へ向かった。山頂の手前で、カラ類の混群に出会った。ヒガラ、エナガ、ヤマガラ、メジロなどが、枝から枝へと渡っていった。

尾根より雄鷹台山山頂を見る 山頂に立つ赤穂小学校登山記念碑

 雄鷹台山の山頂は、海に向かって開けた公園となっていた。その裏側から入り込んだようになったが、一番高いところに赤穂小学校の登山記念碑が石組みの台座の上に建っていた。その手前の広場には、あずま屋があって、遊具としてタイヤが埋められていたり、鉄棒があったりした。

 山頂広場の先端あたりから、南の展望が開けた。そこから、赤穂の街並み、千種川の河口、播磨灘、小豆島が一望できた。空は青く澄んでいたが、海の上は白く霞がかかり、その霞が小豆島の島影を白くぼかし、その向こうの四国を隠していた。

 雄鷹台山の山頂から、南へ下った。登山道が整備されていて、道の両側のドウダンツツジはわずかに色づき始めていた。登山道のありこちに露出する岩を観察し、立ち並ぶ石仏の横を下っていくと、ふもとの太師堂に下り着いた。 

下山路より赤穂市と小豆島を望む

山行日:2009年9月17日
上浜市登山口(西山寺の北)〜147mピーク〜251.1mピーク〜雄鷹台山〜大師堂=(自転車)=上浜市登山口
 「ふるさと兵庫100山」に紹介されているコースである。上浜市登山口から雄鷹台山の山頂へ続く尾根の多くの部分が防火帯となっている。山頂から大師堂までは、よく整備された登山道がついている。
山頂の岩石 白亜紀後期 赤穂層 流紋岩質溶結凝灰岩
 雄鷹台山には、白亜紀後期赤穂層の溶結凝灰岩が分布している。白っぽく風化しているところもあるが、山体の西側には岩石の新鮮な露頭が多く観察された。
 強く溶結した硬くて灰色の凝灰岩で、ガラス質である。肉眼での溶結構造は、新鮮な面より風化した面の方が分かりやすいことが多い。結晶片として石英と長石を多く含んでいる。
 山頂南側の4合目あたりでは、縞状構造が認められた。これは、溶結凝灰岩をつくった火砕流堆積物が熱で融け、再流動したことを示している。

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