御旅山(140.1m)  姫路市   25000図=「姫路南部」


岩を巡る小さな山旅、御旅山

登路より望む御旅山

 御旅山は、市川の河口、妻鹿にある。登山口は、灘のけんか祭りの練り場。山肌を階段状に削ってつくられた「さじき」を上に見ながら歩き始めた。
 ヒヨドリがにぎやかに鳴いている。空気は凛として冷たいが、柔らかな日差しが道に降りそそいでいた。
 道の横の崖には、地層が表れていた。始めは黄土色に風化した頁岩。それがすぐに、火山岩塊を含む火山礫凝灰岩に変わった。二つの地層の境界面や、凝灰岩の中の火山豆石を見つけたりすることができた。
 崖のところどころに、ノジギクがまだ花を付けていた。

ノジギク

  道は、さじきの横を回り込むように上っていた。トベラの実が割れて、中から赤くて粘った種が出ていた。シャリンバイが黒紫色の実をつけていた。

けんか祭りのさじき

 大きく曲がると北が開け、妻鹿の街並みの向こうに国府山(甲山)と御旅山の山頂が見えた。空の色は、冬の青。そこから少し登ると、さじきの一番上に出た。
 真下に練り場が見える。こちらの斜面にも、国道を挟んだ向こうの斜面にもさじきが刻まれている。このすり鉢状の空間は、屋台や四手や見物客で埋め尽くされる祭りの日の熱気を、一年中じっとこうして待ち続けている。

 そこを曲がると、まっすぐ伸びる道の先に御旅八幡神社の小さな社殿が見えた。何かの催しが終わったのか、大勢の子供たちが下りてきた。
 

国府山(左)と御旅山(右)

 八幡宮の左脇から、山道に入った。尾根の木々が疎らで、左に妻鹿の街がよく見えた。山陽電鉄を走る電車が山の下をくぐり抜け、市川に架かる鉄橋で音を大きくした。
 標高90mの小さなピークには送電線の鉄塔が立っていた。鉄塔の横に立つと、御旅山がぐっと大きく迫って見えた。
 御旅山の南面は、昨年、山火事が起こった(2013.1.26)。まだ火事の跡が生々しく、木々は黒く焦げ、地面は冬に枯れたササでおおわれていた。中腹には大きな岩が露出し、標高140mの小さな山とは思えないほど荒々しい。

 道は、両側の送電線の間をゆるくアップダウンしながら伸びていた。常緑樹の林の中に入ると日差しがなくなり、空気の冷たさを感じた。カクレミノヤやヤツデが大きな葉を広げていた。
 97mピークあたりは、緑色の岩石が道に表れている。緑泥石の含まれる火山礫凝灰岩であった。鳥の声に歩みを止めると、少し向こうの木にメジロが止まった。
 次の小さなピークに立つ鉄塔から送電線を離れ、コルに下った。コルの上には、大きな岩が表れていた。表面がごつごつし、一部に赤い地衣類がついている。これは、流紋岩の自破砕溶岩。流紋岩の溶岩は粘り気が強いため、先に固まった溶岩を壊しながら流れ進んでいくことがある。
 その先では、流紋岩溶岩の流理構造がきれいに表れていた。う〜ん、もう御旅山は地質の宝庫だぁ。

御旅山山頂へ 流紋岩の流理構造

 岩を見たあと、山頂をめざした。黒く焼け焦げた木。その間を埋める冬枯れのササとススキ。荒涼とした風景の中に、コンクリート製の丸太階段が上っていた。
 焼け跡に芽を出したコシダとヒサカキだけが、わずかな緑だった。

山頂へ

 やがて、オレンジ屋根の東屋の建つ御旅山の山頂に達した。

 なだらかな山頂は、ぐるりと展望が開けていた。
 海岸の工場地帯の向こうに播磨灘が広がり、雲の間から差し込んだ光にまばゆく光っている。海面には、家島の島々が浮かび、手前を大きな船がゆっくりと動いていた。
 空は、いつの間にか積み雲の群れにおおわれていた。見下ろす市街地や近くの山は、雲の影に沈んでいたが、高御位山から桶居山の稜線には日が当たっていた。

播磨灘 高御位山
山行日:2014年1月11日


国道250号線けんか祭り練り場〜御旅八幡神社〜97mピーク〜御旅山山頂(140.1m)〜北側登山口
 練り場から上がった最初のヘアピンカーブ地点に車を止めた。そこから松原八幡宮まで広い道が伸びている。
 松原八幡宮からは、地形図の破線路に沿って歩いた。
 

山頂の岩石  白亜紀後期 四郷層 流紋岩質溶結火山礫凝灰岩
頁岩層(ハンマーより下)と
火山礫凝灰岩の境界
 御旅山山頂の岩石は、溶結した火山礫凝灰岩である。石英と長石の結晶片を含んでいる。有色鉱物は黒雲母と思われるが変質している。石英は融食していることがルーペで確認できる。
 同質の流紋岩や異質の岩片を含んでいる。押しつぶされてレンズ型になった軽石を含む溶結構造が明瞭である。全体的に風化が進み、岩石は淡褐色を呈している。

 本文に記したように、御旅山ではいろいろな地質が観察された。
 練り場から少し上った道路には、頁岩が分布している。頁岩は、黄土色に風化している。
 少し上ると、火山礫凝灰岩に変わる。頁岩とその上に乗る火山礫凝灰岩の境界が、道路脇の露頭で明瞭に観察できる(写真上)。
 火山凝灰岩には、最大20cmの火山岩塊が含まれている。また、2〜3mm程度の火山豆石を少量ではあるが見出すことができた。
 97m小ピークを下ったコル付近には、流紋岩が分布している。流紋岩には、自破砕構造を示す部分がある。また、流理構造による縞模様が明らかな部分もあった。

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