鬼ヶ島(580m)水無山(650m)高尾山(739m)湯槽谷山(801m)
灰形山(619m)
落葉山
(533.0m)
  神戸市   25000図=「有馬」


鬼ヶ島から秋の有馬三山を巡る

水無川の河畔より望む鬼ヶ島

 JR、北神急行、神戸電鉄と乗り継いで、有馬口で降りた。住宅街を抜け、阪神高速の下をくぐると、道は林の中に入った。
 林に入ると、木々の葉に結んだ朝露が水滴となって、雨のように落ちてきた。見上げると、葉の隙間から空の青が見えた。快晴の空に、一筋の飛行機雲が白い直線を引いていた。

1 鬼ヶ島へ

 舗装が尽きて、土の道となった。前方に、鬼ヶ島が朝の斜光を浴びて浮かんでいた。北六甲の山中に、鬼ヶ島・・・。今日は、不思議な山名のこの山から有馬三山を巡る。

 道は、水無川の左岸に沿って伸びていた。谷の底には、まだ朝陽が届いていない。道の落葉は、朝露に濡れていた。ミソサザイやカワセミの声が聞こえてきた。
 左岸から右岸へ渡る手前に、山道が分枝していた。黄色のテープが木の幹に巻きつけられている。
 この山道に入ると、道はすぐに消え入りそうな踏み跡になった。川に沿ってしばらく進むと、「鬼ヶ島」と書かれた山友会の標識が木に掛かっていた。
 
鬼ヶ島登山口(分岐を右へ) 山友会の標識

 ここが鬼ヶ島の取り付き地点で、急な道が山へ上っていた。
 道は、落葉に埋まっていた。コナラの茶色の落葉は、表が濃く、裏が白っぽくて、地面を細かいまだらに染めている。一足ごとに、落葉が乾いた音を立てた。
 道の傾斜がいったんゆるんだあと、尾根道となって再び傾斜を増した。コアジサイやクロモジの幼樹が黄色い葉をつけていた。
 秋色に染まった林の中を一歩一歩登っていった。道に岩が表れ始めた。林床にウラジロが広がり、ヒサカキやシキミ、それにアセビの緑が褐色の林に混じってきた。

 目の前のコブを見上げると、そこには巨大なアカガシが立っていた。株から分かれた何本もの幹が上へと広がり、青々とした葉を空に広げている。樹皮はあちこちではがれ落ち、内側の赤っぽい肌を見せている。周囲を圧するたくましさを感じさせるアカガシの木だった。
 
大きなアカガシの木

 アカガシの木のすぐ先に、鬼ヶ島の狭い山頂があった。名から連想されるような秘かな山頂・・・。数枚の登頂プレートがアカマツの木に掛かっていた。
 深戸谷を隔てて立つ逢ヶ山に、白い反射板が見える。南に冬の低い太陽がかかり、その下に水無山が尖っていた。
 
鬼ヶ島山頂より水無山を望む

2 水無山へ

 鬼ヶ島を南へ下った。コバノミツバツツジの黄緑の小さな葉がかわいい。少し下ると、水無山との間のコル。そこは、ウリハダカエデの落葉が地面をオレンジ色に染めていた。
 コルから尾根を登ると、左にヒノキ林が現れた。ミヤマシキミが、赤い実をつけていた。
 急な坂が山頂手前でゆるくなり、見晴らしの良い岩場に出た。そこから見える丘陵地はオレンジ色や茶色に染まり、丘陵地の間に広がる藤原台や有野台の建物は無数の光を白く反射させていた。
 水無山の山頂は、登山道の途中の小さな高みにあった。岩の間に立つアカマツに掛けられた登頂プレートが、そこが山頂であることを教えてくれた。
 

水無山山頂

3 高尾山へ

 水無山の山頂から南のコルに下り、登り返した。今日三度目のきつい登り。ピークの数だけ、登りがある。
 道は一旦ゆるくなった。登山道には、コウチワカエデのオレンジ色やウリカエデの黄色の落葉が敷き詰められていた。
 再び急になった坂を登ると、高尾山の山頂に達した。

 雑木に囲まれた静かな山頂だった。積もった落葉に木漏れ日が揺れる。腰を下ろして休んでいると、男女4人のパーティがやってきた。ここから仏谷に抜け、神鉄六甲に下るという。
 アンパンとせんべいをもらった。弁当を買いそびれていた顔が、物欲しそうに見えたに違いない。うれしかった・・・。ありがとう。
 

高尾山山頂


4 湯槽谷山

 湯槽谷山への道は、東へゆるくアップダウンしていた。林間を吹く風に落葉が舞って、地面でカサッと音を立てた。
 小さなピークを過ぎると南が開けた。谷の上を、ロープウェイのケーブルがまっすぐ渡っていた。しばらくそこに立っていると、一台のゴンドラが左の山影から現れ、ゆっくりと遠ざかっていき、やがて小さくなっていった。
 極楽茶屋跡分岐を過ぎて少し登ると、湯槽谷山の山頂に達した。標高801m、本日の最高地点である。新しい石柱の立つ明るく開けた山頂に、コナラの縮れた枯葉が舞い降りた。
 

湯槽谷山山頂

5 灰形山へ

 湯槽谷山から北へ下った。長い下りだった。急な所には、ずっと丸太階段がついている。ときどき人とすれ違った。アカマツの太い木が立っていた。一本のヤマモミジが、黄色の葉を空いっぱいに広げていた。
 紅葉谷分岐を見送って下ったコルから、登り返した。南中した太陽が、登山道に私の影を落とした。
 灰形山の山頂は、15人ほどの大きなパーティで賑わっていた。山頂の東側に立つと、澄んだ空の下に六甲最高峰が見えた。

ヤマモミジの黄葉 灰形山より六甲最高峰を望む

6 落葉山へ

 また、急な坂を下った。目の前に落葉山が低く立ち、その右に有馬温泉のホテルや旅館が常緑樹と夏緑樹が入り混じった森に埋まっていた。

落葉山(右が三角点峰) 秋の有馬温泉

 傾斜がゆるくなると、尾根に岩場が次々と現れ始めた。岩を縫って、小さく起伏する登山道を進むと広いコルに達した。
 日当たりのよい道をつづらに登った。やがて道が平坦になり、雑木のトンネルを進むと、道端に落葉山の山頂を示す石柱が立っていた。そのわずかに離れた林の中に四等三角点が埋まっていた。
 山頂の先に建つ二重屋根の妙見堂の下で休み、石仏の並ぶ参拝道を有馬温泉へ下った。シコクママコナが道端に咲いていた。

山行日:2012年11月25日

神戸電鉄有馬口駅〜鬼ヶ島(580m)〜水無山(650m)〜高尾山(739m)〜湯槽谷山(801m)〜灰形山(619m)〜落葉山(533.0m)〜神戸電鉄有馬温泉駅
 神戸電鉄「有馬口」から水無川に沿った道をさかのぼる。広い道が水無川堰堤まで続いているが、その途中、道が左岸から右岸へ渡る手前で右へ分枝しているのが鬼ヶ島への道である。
 ここから鬼ヶ島、水無山、高尾山まで、細いがはっきりとした道がついていた。高尾山からは、多くのハイカーに歩きこまれた明瞭な道が続いた。

山頂の岩石 
 鬼ヶ島・水無山・高尾山・湯槽谷山・灰形山 後期白亜紀 玉瀬結晶質凝灰岩層 流紋岩質溶結凝灰岩
 六甲山地の主要部は六甲花崗岩あるいは布引花崗閃緑岩でできているが、北六甲には有馬層群や神戸層群の地層が分布している。
 鬼ヶ島から灰形山で見られたのは、流紋岩質の溶結火山礫凝灰岩である。石英、カリ長石(うすピンク)、斜長石(白)の結晶片を多量に含んでいる。また、少量だが黒雲母や角閃石も認められた。基質はガラス質で、新鮮な部分は暗灰色で硬い。チャートなどの岩片を少量含んでいた。
 この地層は、いわゆる有馬層群の玉瀬結晶質凝灰岩層に対比されている。
 落葉山 後期白亜紀 金剛童子溶岩 流紋岩
 落葉山の山頂付近には、流紋岩が分布していた。流理構造による縞模様が明瞭で、石英(最大1.7mm)と長石(最大2.0mm)の斑晶を含んでいた。

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