鷹ノ巣山(264.2m)・桶居山(247.6m)  
高砂市・姫路市・加古川市  25000図=「加古川」「姫路南部」


馬の瀬、らくだの背、岩また岩の桶居山

稜線より望む桶居山

 高御位山系の西端に桶居山(おけすけやま)(※1)がある。
 標高250m足らずの低山であるが、その鋭峰は姫路市街地からもよく目立ち、名古山あたりから見ると姫路城天守閣とおもしろい対比をなして城の背後に立っている。

 鹿嶋神社の超大鳥居の下に車を止め、市ノ池の西の登山口より歩き始めた。ここから、鷹ノ巣山(※2)を経て桶居山へ向かう予定である。
 登山口付近には、ヤマモモの赤く熟した実がたくさん落ちていた。実を拾っている人に声をかけると、ヤマモモ酒にするのだという。ヤマモモの実は、甘酸っぱく、グミの実の味に少し似ていた。
 雑木はすぐに途絶えて、目の前に大きな岩盤のスロープが現れた。7000万年前の火山活動でできた岩石であり、この岩石が高御位山系をつくっている。岩石(火山礫凝灰岩)に含まれる火山礫や火山岩塊が飛び出したり抜け落ちたりしているので、表面には凹凸が激しく、急な斜面でも滑らずに上ることができる。
 岩盤を上っていくと、左の谷底に鹿嶋神社が見えてきた。神社の上の尾根にも、百間岩が褐色の岩盤をむき出しにしていた。
 大きなその岩盤を超え、岩がちの尾根を進むと送電線の鉄塔下に出た。鉄塔の先も大きな岩盤が緩く続いている。風化によって、表面がタマネギの皮のように薄くはがれ落ちるので、全体としてはなめらかに横たわっている。
 なだらかに続くその岩盤を超えると、道は再び傾斜を増した。振り返ると先ほどの岩盤が眼下に見える。岩盤は、尾根をゆるくうねりながらおおい、鉄塔の先で竿池に向かってすっぱりと切れ落ちている。「馬の背」の名にふさわしい光景であった。

鷹ノ巣山(左250m、右264.2m 「馬の背」

 やがて、百間岩から高御位山へ続く道に合流した。
 合流点をわずかに西へ進むと、鷹ノ巣山の山頂だった。南面に切り立つ露岩を幾重にも配した鷹ノ巣山は、山頂の西が切れ落ち、三角点の先の岩の上は高度感がある。ここから、北西遠くに桶居山が小さく頭を出していた。
 東へ引き返し、次の小ピークを少し下ったところが、正面に見える高御位山との分岐である。分岐を北へとって、桶居山へ向かう。ネズミサシやアママツなどの雑木は、どれも小さい。ソヨゴが緑の堅い実をつけていた。
 しばらく、アップダウンの少ない道を進む。それはいいのだが、下のクレー射撃場から絶え間なく銃声が聞こえてくる。バシッ、バシッと鳴ると、後ろの山体でズボッ、ズボッと反響する。まさか山の上まで玉が流れてくるとは思えないが、それでも射撃場から見えるところでは、背をかがめ戦場の中のように走った。
 「らくだの背」は、三つのコブが横に並んでいた。一番左のコブの上を越えて先へ進む。鉄塔を超え、送電線の右を行くと、そこで進路を右へ90度変える小さなコルにでた。ここで、鋭くそびえる桶居山の全貌が現れた。ここからは、正面に桶居山を見て進む。

最後のコルから桶居山を望む

 最後のコルをはさんだ斜面から桶居山を見上げた。山肌は荒々しく、岩がゴツゴツと飛び出している。その岩を縫うように一筋の白い道が山頂へ駆け上っていた。
 あえぎながら、一歩一歩その急な道を上った。それでも意外に早く山頂に達して、わずか250m足らずの山であることを思い出した。

 山頂は四方に切れ落ち、周囲をぐるりと見渡せる。
 つかの間だった晴れ間がかげって暗くなった空の下、南に播磨灘が広がっていた。海の真ん中に上島がちょこんと丸い顔を出し、左には淡路島が長い稜線を描き、右の家島諸島の後ろに小豆島の島影がうっすらと見えた。
 北には、播磨の山並みが重なり、笠形山、七種山、雪彦山、明神山が周囲を囲んでいた。
 キアゲハが袖に止まっては、すぐにどこかへ飛んでいった。ヤマハギが季節はずれの花をところどころにつけていた。
 この山頂で宮本武蔵が天狗より兵法を習ったという伝えがある。

 雨の気配が近づいてきた。山頂を西へ下りる。山頂の西は、さらにすさまじい岩の斜面だった。尾根には、風化・侵食による落下をまぬがれた岩が岩塔となって立っている。尾根の南斜面は、岩盤が波打つようにして現れている。
 何度も後ろを振り返った。桶居山は、岩のよろいを身にまとい、鋭く天をさしていた。


桶居山山頂西面 桶居山を西尾根より振り返る

山行日:2005年6月30日

※1桶居山(おけすけやま)  247.6m 「おけいやま」、あるいは「おけすえやま」とも呼ばれている。後者の場合は、「桶据山」と標記されることもある。
※2鷹ノ巣山  264.2m 山名について混乱がある。西隣の250mピークとの双耳峰としての名としてとらえた方がよいかもしれない。

市ノ池登山口〜「馬の背」〜鷹ノ巣山(264.2m)〜桶居山分岐〜182mピーク〜「らくだの背」〜桶居山(247.6m)〜177mピーク〜山系西端下降点(自転車で車へ戻る)
 鹿嶋神社参道入り口の大鳥居の北に無料駐車場がある。ここは市ノ池の西にあたり、駐車場の裏手が「馬の背の森」の標識の立つ登山口である。尾根上の登山道を、「馬の背」を越えて上ると、「百間岩」から高御位山に続く道に合流する。すぐ西の鷹ノ巣山山頂に寄って折り返し、高御位山方向へ進む。次の小ピークを越えてわずかに下ったところが桶居山分岐である。
 桶居山の下のコルまで、姫路市と加古川市の境界尾根上につけられた道を進む。桶居山に上ってからは、そのまま西へ尾根を進み山系西端の下降点に下った。
■山頂の岩石■ 鷹ノ巣山→後期白亜紀 宝殿層 流紋岩質軽石凝灰岩
           桶居山 
→後期白亜紀 宝殿層 流紋岩質火山礫凝灰岩

成層した火山礫凝灰岩
 鷹ノ巣山山頂の岩石は、淡緑色の軽石凝灰岩である。含まれている軽石は、大きいもので長径1cm程度。弱い溶結構造が認められる。白く変質した長石や石英の結晶片を含んでいる。多孔質でガサガサした感じのする岩石である。
 桶居山山頂の岩石は、淡い緑色の火山礫凝灰岩である。
火山岩塊を少量含んでいる。火山岩塊・火山礫以外にも、軽石やチャート、黒色頁岩などの岩片、石英や長石の結晶片を含んでいる。塊状な岩石で、不規則に割れ目が入っている。

 高御位山系は、ほとんどがこの宝殿層からなっているが、岩相は変化が激しい。今回歩いたルートでも、「馬の背」あたりは径30cm程度の火山岩塊を多く含んでいた。また、鷹ノ巣山から桶居山の手前までは、成層した火山礫凝灰岩が分布していた。
 「高砂地域の地質(2003)」では、これらの岩石をハイアロクラスタイトとしている。

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