高畑山(983.8m)〜小畑山(957m)点名白口(814.4m) 生野町・神崎町 25000図=「生野」

白綾の滝から高畑山・小畑山・点名白口を巡る

白口の集落から望む高畑山 町界尾根より小畑山を見る

 最初の露頭で、岩石を割ってみた。それは、石英の結晶片が多くふくまれた凝灰岩だった。熱水変質によって、赤褐色と緑の薄層が縞模様をつくっている。ルーペの視野に、小さな黄鉄鉱が光っていた。ここ生野町白口は、江戸期に生野銀山の中心として栄えたところであった。番所跡など往時の繁栄の跡が残るこの地に、今も数軒の民家が里を静かに守っている。
 今日はここから、生野町と神崎町の境界尾根に立つ高畑山、小畑山、点名白口を周回コースで巡った。

 白口の集落に入るところに、三十三体の観音菩薩石像が並んでいる。ここから、林道を南へ進んだ。林道の左には、川が昨日降った雨を集めて流れ、岩を落ち、あるいは岩盤を滑り下りている。流れの上には、ウツギの白い花があちこちにかかっていた。
 林道は左に折れて橋を渡っていたが、橋を渡らずにまっすぐ進むと、すぐに細い山道となった。しばらく歩くと、白綾の滝に出た。

 滝は三段から成り、落ち口から勢いよく出た流れが二段目で扇状に広がり、三段目でさらに大きく広がって岩盤を滑り落ちている。水は、凝灰岩の層理による割れ目にあたっては細かくよじれ、その名のとおり綾絹のような紋様をつくって白く岩にかかっていた。谷間に光が差し込むと、滝にかかる木の葉が黄緑色に透け、流れの白い光沢は輝きを増した。

白綾の滝 織りなす綾絹

 道は滝の前で途絶えていた。地形図にある破線路は何だったのか。滝の右を巻いて、小さな尾根に出た。その尾根をよじるように上っていくと、杣道が現れた。この杣道を進むと、元の沢の上流に出た。
 しかし、杣道はここで消え、下りた谷は切り立っていた。今度は、沢の左の斜面を上ると、ちょうど568m点へ達したようだった。尾根の伐り開きを進むと、再び杣道にぶつかった。山の斜面に緩く伸びたこの杣道を歩くと、三たび元の沢に下り着いた。
 現れては消える沢沿いの踏み跡を探しながら進んでいった。地面はしっとりと濡れ、ガレ石はコケに厚くおおわれている。光がまだら模様に射し込み、谷が浅くなったかと思ったら、急斜面と倒木に行く手をはばまれた。
 谷底から脱出して、右手の斜面を上ることにした。ヒノキから一つ上のヒノキへと、一本一本伝い上っていく。抱きかかえる木が、ヒノキからコナラやアカマツに変わり、さらにリョウブやアセビに変わったところでようやく尾根に達した。
 尾根には、切り開かれた小道があった。この小道を20分ほど歩くと、反射板の立つ高畑山の山頂に達した。

 山頂には草地が広がり、その中に岩石が庭石風に顔を出していた。その草地をつややかに光る葉でアセビが囲み、さらにその外をヒノキやアカマツが囲んでいた。東の稜線上には、三国岳、またに山、千ケ峰、飯森山と連なり、手前にはこれから向かう小畑山が近かった。西には、反射板のすき間からフトウガ峰、段ケ峰、千町ケ峰が水平に近い稜線を引いている。北風が強く、千ケ峰の上には積雲が数筋の列をつくって並んでいた。

高畑山山頂からの千ケ峰(中央奥)、小畑山(右手前)

 高畑山から尾根の上を反時計回りに回り込むようにして小畑山を目指した。981mピークを下ったコルには、ウツギやエゴノキが白い花をつけていた。コルを越えて吹く風に、カマツカの小さな花が飛ばされていった。
 886mピークを少し下りたところでは、2頭のシカが白い尻を跳ね上げるようにしてヒノキの間を走り抜けた。ヒノキ林が自然林に変わり、その中を上り詰めると、小畑山の山頂であった。
 笠形山が越知川の流れる谷の向こうに大きくそびえ、千ケ峰がさらに近くなった。山頂の草地に座ると、遠くでカッコウが鳴きキアゲハが近くを舞った。
  

小畑山山頂 小畑山山頂より千ケ峰を望む

 小畑山から町界尾根をそのまま北東へ進む。大きな岩が尾根に立つところでは、その岩の脇を回りこんだ。いくつかのピークを越えてミズナラの立つ点名白口に達した。ここまで多くの時間を費やしたので、先を急がねばならない。尾根をさらに北へ進み白口峠の手前で現れた杣道を下って、車道へ下りた。

 道を下り白口の集落に入ったところで、思わず高畑山が正面に現れた。反射板の立つその山頂は、はるかに遠く、そして高かった。

点名白口山頂

山行日:2004年6月13日
白口愛宕山三十三体観音〜白綾の滝〜568m点〜高畑山(983.8m)〜981mピーク〜886mピーク〜小畑山(957m)〜Ca.930m〜点名白口(814.4m)〜732mピーク〜白口峠手前〜白口集落〜白口愛宕山三十三体観音
 国道312号線をJR生野駅の北で東へ折れ、市川に沿って車を走らせる。新町の手前の交差点を右に折れて、白口峠へ向かう道へ入る。白口の集落の手前に、白口愛宕山三十三体観音ある(地形図墓記号付近)。ここに車を止めた。
 林道に沿って南へ歩き、「白綾の滝」(地形図滝記号)へ。地形図には、ここから高畑山山頂まで沢沿いに破線路が描かれているが、道らしきものはない。幾度か、谷を高巻き、現れた杣道を利用しながら、ほぼ谷沿いに進む。Ca.800mあたりで沢を離れ、北の斜面を上って尾根に出た。尾根の伐り開きを上り詰めて、高畑山山頂に達する。
 高畑山からは、生野町と神崎町の境界尾根を反時計回りに進む。途中、981mピークから次の900mピークまでは、町界を離れ、町界の少し右の尾根を歩いた。小畑山、点名白口を経て白口峠へ向かう。峠のわずか手前で現れた杣道を下って、峠から下りている舗装路に下りた。ここからこの舗装路を白口の集落を抜けて、もとの三十三体観音に帰った。
■山頂の岩石■ 高畑山・小畑山→白亜紀後期 笠形山層 結晶質流紋岩質溶結凝灰岩
           点名白口 → 不明(すぐ北で、安山岩に変わる)

 高畑山〜小畑山の稜線には、結晶質流紋岩質溶結凝灰岩が分布している。石英・長石・黒雲母の結晶片を多く含み、柱状の小さな角閃石の結晶片も認められる。基質は暗灰色で、強溶結していて堅固である。部分的に、本質レンズによるユータキシチック組織が見られた。岩片をあまり含んでいないのが特徴である。
 小畑山と点名白口の間では、この岩石は変質が進んでいた。長石の結晶片は、白あるいは帯ピンク白に変質し、基質は淡緑色〜淡褐色を呈する。

 点名白口の山頂付近には、露頭がない。白口の北には、安山岩が分布していた。帯紫暗灰色の石基に、白く濁った斜長石の斑晶が斑状に含まれている。変質が進み、斑晶の有色鉱物の種類は特定できなかった。

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