| 扇 ノ 山 (1309.9m) 鳥取県国府町・八東町・若桜町 25000図=「扇ノ山」 |
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残雪にブナの芽燃え立つ
兵庫県と鳥取県の県境に立つ扇ノ山(山頂は鳥取県)は、遠くはるかな山である。蘇武岳から、氷ノ山から、あるいは後山からこの山を眺めたことがある。すそ野にはいくつもの谷が刻まれた平原が広がり、その平原の森は深々と黒くて安易には人を寄せ付けない雰囲気が漂っていた。
温泉町海上の集落を抜け林道を南に進む。「シワガラの滝」入口からは、残雪が林道を塞いでいた。ここに車を止めて、林道を先へと歩き始めた。
傾斜が緩くなり、青空に「雲無心」の石碑の立つ上山高原に達した。新雪をのせた雪の丘が緩やかに波打っている。ミズナラの若い木が群れ立ち、その枝先の冬芽は樹冠をほんのりとうすオレンジ色に染めている。
小ズッコから大ズッコへ、ブナの林がずっと続いていた。枝先の樹氷は、みぞれのようになって融け落ち、たえずパラパラ、ビチビチと音を立てた。白や薄緑のパッチ状の模様の入ったブナの幹に、枝を透かした春の柔らかい日差しが射し込んでいた。雪は、ブナの木の間を深く埋めているが、幹の周囲は小さくへこんでいる。その穴に足を投げ入れて腰掛け、一本のブナの木と向かい合って弁当を食べた。
山頂への最後の上りは、ザラメの斜面を踏み込んで進んだ。傾斜がようやく緩くなった雪面の先に、山頂避難小屋が建っていた。避難小屋の周囲は雪が掘られていた。上から覗き込んでみて、積雪が4、5mあることが分かった。冬の大陸からの北西季節風は、日本海の海上で湿った空気をたっぷりと吸い込み、それがこのあたりの山にぶつかってから但馬に流れていく。そのとき、ここに大量の雪を降らせるのである。 山行日:2003年4月6日
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温泉町千谷で国道9号線を南に折れ、海上を目ざす。海上の集落を抜けると、道はそのまま林道「海上線」となって上山高原に向かっている。「桂の滝・シワガラの滝入口」(Ca.560m、地形図「布滝」の少し南)から、残雪が林道を塞いでいた。ここに車を止め、林道を先へ歩き出した。 |
■山頂の岩石■ 雪で観察できず
今回は積雪のため岩石の観察はほとんどできなかった。 ショウブ池付近で林道脇の斜面から崩れ落ちている岩石は、粘土鉱物化した斜長石の白い斑点の目立つ風化した安山岩であった。 また、駐車した林道海上線の「桂の滝・シワガラの滝入口」付近で、輝石・長石の斑晶を含む玄武岩からなる柱状節理が見られた。 |